ヒト又は動物由来の血液、血漿、血清から、トータルRNAを単離するための試薬です。
酸性フェノールとチオシアン酸塩グアニジンを含む単層溶液で、血液、血漿又は血清を溶解し、遠心分離により、DNA、タンパク質、多糖類などの細胞構成物質から、高収率で高純度のRNAを分離します。
特長
- 単一ステップの操作
- 1mL の試薬で 0.5mL のサンプルを90分以内に処理
- トータルRNA、mRNA、smallRNA(10-200base)を別々に単離可能(図1)
- RNA単離に使用した同じ血液サンプルからDNAも抽出可能
- 単離したRNAはRT-PCRなどのアプリケーションにそのまま使用
- 冷却遠心不要
- DNase処理不要
図1
本試薬は、1mLのヒト血液から、8-22μgの高純度のトータルRNAを回収できます。この収率は、従来の方法(平均的な収率:2-5μg/ヒト血液1mL)に比べて、非常に高く、血液サンプル中に含まれる全てのRNAを単離して調査することを可能にします。
操作概要
RNA回収操作
1. 溶解
全血を真空管(予め抗凝血剤としてEDTAを加えておく)に回収し、RNAzol® BD及び酢酸を含むチューブに分注します。1mLの血液サンプルを2mLのRNAzol® BD及び27μLの酢酸に加えます。チューブの蓋をしっかり閉め、30秒間強く振り混ぜます(水層からDNAを除去するため)。
溶解液を凍結保存する場合は、酢酸は加えず、血液サンプルとRNAzol® BDのみを混合します。-70℃で少なくとも2年間、-20℃で少なくとも6ヶ月間保存できます。冷凍庫から取り出した後、酢酸を加えてサンプルを解凍し、振り混ぜます。
もしくは、血液を分注して-70℃で保存します。例えば、血液サンプルを5mLチューブに1mLずつ分注し、-70℃に保存します。使用時に、凍結血液にRNAzol® BD 2mL、酢酸27μLを加えます。チューブを温水(>55℃)中に置き、内容物を解凍して振り混ぜます。
RNAの変性を防ぐため、RNAzol® BDを加える前に血液サンプルを解凍させないでください。
血液は、ピペッティング時にガラス又はプラスチック表面に接着するため、5-10%ほど容量をロスします。分注した血液サンプルの重さで容量を修正してください(ヒト血液の密度:1.06g/mL)。
2. DNA、タンパク質、多糖類の沈降
*5mLチューブ中の3mLの溶解液(血液サンプル1mL+RNAzol® BD 2mL)に対する操作法です。
溶解液を室温または37-40℃で15分間インキュベートします(新しく採取したサンプル:37-40℃、凍結保存したサンプル:室温)。1-ブロモ-3-クロロプロパン(BCP)(MOR社 品番:BP151)150μLを加えます(血液容量に対して15%)。チューブの蓋をしっかり閉め、30秒間強く振り混ぜます。サンプルを室温で15分間インキュベートし、12000g、室温で15分間遠心します。RNAは上清中に溶けたまま、DNA、タンパク質、多糖類は、チューブの底のフェノール層に、反固体-液体として沈殿します。
血液が0.5mL未満の場合は、RNAの回収率とサンプルの取り扱いやすさを改善するため、ポリアクリルキャリア(PC 152)1-2μLを加えます。
15℃以下での遠心は、RNAの収率を低下させます。
上層(水層)をRNA抽出に使用します。DNAを単離する場合は、フェノール層/中間層を4℃又は-20℃で保存します。
3. RNAの沈降
ステップAは、1回の沈降操作でトータルRNAを単離し、ステップB及びCは、2回の連続した沈降操作によりmRNA及びsmallRNAを単離します。
3-A. トータルRNA(largeRNA、リボソーマルRNA、mRNA、smallRNA、microRNAを含む)の沈降
水層1.5mLを新しいチューブに移します(フェノール層/中間層に触れないよう、水層を2-3mmほど残します)。移した水層に、等量のイソプロパノール(1.5mL)を加えて混合し、RNAを沈降させます。室温で15分間静置し、12000g、室温で15分間遠心します。RNAは、チューブの底に白色のゲル状ペレットとして沈殿します。ペレットはチューブ壁に接着するため、上清のほとんどはデカントで除去できます。残った上清をマイクロピペットで除去します。
水層の回収は最大でも85%程度で十分です。
水層の密度は1.06g/mLですので、必要に応じて重さから容量を確認してください。
1mLの水層には、0.54mLの血液が含まれます。
1mLの水層-イソプロパノール溶液には、0.275mLの血液が含まれます。
3-B. mRNA(200bより大きいRNA、リボソーマルRNA、mRNAを含む)の沈降
水層1.5mLを新しいチューブに移します(フェノール層/中間層に触れないよう、水層を2-3mmほど残します)。移した水層に、0.35容量のイソプロパノール(0.525mL)を加えて混合し、mRNAを沈降させます。室温で15分間静置し、12000g、室温で15分間遠心します。mRNAは、チューブの底に無色のゲル状ペレットとして沈殿します(エタノールによる洗浄ステップで白色に変化し、目視可能になります)。ペレットはチューブ壁に接着するため、上清のほとんどはデカントで除去できます。残った上清をマイクロピペットで除去します。除去した上清は、新しいチューブに移し、smallRNAの抽出用に-20℃又は-70℃で保存します。
1mLの水層には、0.55mLの血液が含まれます。
1mLの水層-イソプロパノール溶液には、0.407mLの血液が含まれます。
3-C. smallRNA(200b未満のリボソーマルRNA、tRNA、ミクロRNA、最小10bまで)の沈降
ステップ3-Bで回収した上清に0.975mLのイソプロパノールを加えます。トータルボリュームは3mLで、イソプロパノール濃度は50%になります。よく混ぜ、4℃で30分間静置します。12000g、室温で15分間遠心し、RNAを沈降させます。RNAは、チューブの底に白色のペレットを形成します。
上清が1mL未満の場合は、RNAの回収率とサンプルの取り扱いやすさを改善するため、ポリアクリルキャリア(PC 152)1-2μLを加えます。
4. RNA洗浄
大きい容量のチューブを用いている場合は、この工程でRNAペレットをマイクロ遠心チューブに移してください。洗浄溶液0.4-0.8mLを加え、RNAペレットを穏やかに再懸濁し、1mLピペットチップを用いてマイクロ遠心チューブに移します。RNAペレットをチップの中に回収できるように、ピペットチップの先端をカットして、穴を大きくしておくとよいでしょう。
4-A、B. トータルRNA又はmRNAの洗浄
洗浄に75%エタノール(v/v)を0.4mL用います。より大きいチューブを使用している場合は、沈降に使用した上清1mLに対し、0.2-0.5mLのエタノールを使用してください。ペレットと洗浄溶液を混合し、12000gで1-3分間遠心します。洗浄の都度、マイクロピペットチップを用いて残った洗浄溶液を除去し、洗浄工程を2回行います。
4-C. smallRNAの洗浄
洗浄に70%イソプロパノールを0.4mL用います。より大きいチューブを使用している場合は、沈降に使用した上清1mLに対し、0.2-0.5mLのイソプロパノールを使用してください。ペレットと洗浄溶液を混合し、12000gで2-3分間遠心します。洗浄の都度、マイクロピペットチップを用いて残った洗浄溶液を除去し、洗浄工程を2回行います。
5. RNA可溶化
RNAペレットは乾燥させずに水又はFormazol® (MRC社 品番:FO121)に溶解させます。水での可溶化では、RNAペレットを室温で5-10分間ボルテックスします。RNAの可溶化には、RNaseフリーのチューブ及び水を使用してください。Formazol®での可溶化では、ペレットを10分間ボルテックスします。
RNAペレットの乾燥は、可溶性を損なうため推奨していません。
頻繁なボルテックス操作は、手の関節を痛める可能性があります。チューブを固定できるアタッチメントつきのボルテックスをご利用ください。
トータルRNAの沈降では、全てのクラスのRNAを回収します。予想収率は、1mLの正常白血球数のヒト血液当たり、トータルRNA:8-22μg、mRNA:5-16μgです。白血球数値が上昇しているヒト血液では、トータルRNAの収率は20μgを超えることがあります。動物の血液での収率は20-30μgRNA/mLです。
トータルRNA及びmRNA画分の260/280比は、1.7-2.0で、260-230比は約2です。採取直後に試薬を混合したヒト血液のRIN値は、トータルRNAで約7.0-7.5、mRNAで約7.0-8.5です。
smallRNA画分の260/280比は約1.7で、260/230比は約1.5です。ヒト血液の場合、smallRNAはトータルRNAのうちの20-30%を構成しています。従って、1mLの血液に対し、smallRNAの収率は2-5μgになります。
キュベットでOD値を正確に測定する際には、弱アルカリ性の希釈液を使用してください(3M NaOH又はpH8以上のバッファーなど)。一般的に蒸留水は酸性のpHになります。
広範囲のRNAを回収できるため、血液1mLあたりの遺伝子活性を算出することで、血液循環中の遺伝子産物の蓄積をより正確に反映することができます。他のRNA単離法では、血液RNAの収率が低いため、正確に算出することができません。
NOTE
- RNAを完全に高収率で回収するためには、採取直後に血液とRNAzol® BDを混合することが非常に重要です。
- RNAの単離操作は中断することが可能で、その場合はサンプルを以下の方法で保存してください。
- RNAzol® BDで溶解したサンプル(ステップ1)は、室温では3時間、4℃では24時間、-20℃では6ヶ月間、-70℃では2年間保存できます。サンプルの解凍は、37-50℃で5-10分間インキュベートします。
- RNA沈降(ステップ4)における75%エタノール処理は、室温ではオーバーナイト、4℃では1週間、-20℃では一年間保存できます。
- 少量のRNA(<1μg)を抽出する際、チューブ壁に残った上清がA260/280比を下げます。上清を除去した後、洗浄ステップに入る前に、短時間遠心して、マイクロピペットで残りの上清を更に回収してください。同様に最終の洗浄ステップの後も遠心して残りのアルコールを全て除去してください。
RNAzol® BD for Blood
品名 | メーカー | 品番 | 包装 | 希望販売価格 |
---|---|---|---|---|
RNAzol(R) BD for Blood![]() |
MOR | RB 192 | 50 ML |
¥17,000 |
RNAzol(R) BD for Blood![]() |
MOR | RB 192 | 100 ML |
¥33,000 |
RNAzol(R) BD for Blood![]() |
MOR | RB 192 | 200 ML |
¥57,000 |
RNAzol(R) BD for Blood![]() |
MOR | RB 192 | 500 ML |
¥147,000 |
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¥17,000 |
商品は「研究用試薬」です。人や動物の医療用・臨床診断用・食品用としては使用しないように、十分ご注意ください。
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