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記事ID : 34902
研究用

カルシウム検出等を行うための非蛍光試薬 非蛍光カルシウムシグナル伝達分子 & キレート剤

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細胞内および細胞外Ca2+の検出や操作を行うための非蛍光試薬です。

背景

カルシウムイオン(Ca2+)は、Ca2+シグナル伝達をはじめ、Ca2+によるタンパク質立体構造変化から細胞質やオルガネラのCa2+レベルを制御するメカニズム、Ca2+介在性シグナル情報伝達の高度に局在化された特性や興奮性、エキソサイトーシス、運動性、アポトーシス、および転写におけるその特異的役割など、細胞生物のほぼ全ての局面で影響を及ぼします。Ca2+指示薬による細胞内濃度測定は、イオノフォアを用いた細胞内Ca2+レベルの操作や、界面活性剤で可溶化した細胞に、既知Ca2+濃度を加え、測定することで実施することができます。

AAT Bioquest (ABD) 社では、蛍光と発光カルシウム検出試薬の他に細胞内および細胞外Ca2+の測定や操作を行うための非蛍光性化合物を複数提供しています。

製品ラインナップ

NAADP&NAADP-AM

■ NAADP

ニコチン酸アデニンジヌクレオチドリン酸 (NAADP, 品番:20999) はカルシウムシグナル伝達経路において主要な役割を担うセカンドメッセンジャーです。NAADPは、cADPRやIP3と機能的に異なります。これらとは異なり、NAADPはカルシウムをERから動員しません。むしろ、近年発見された細胞質全体に局在する酸性カルシウム貯蔵部からカルシウムを動員します。この酸性カルシウム貯蔵部には、エンドソーム、リソソーム、分泌顆粒、およびゴルジ体といった細胞内区画が含まれます。より詳細にいうと、近年の研究より、NAADPはカルシウム放出を刺激するために二孔径チャネル(TPC) とよばれる膜結合イオンチャネルファミリーを標的にすることが示唆されています。

Leeとその共同研究者達が1987年に NAADP の存在を発見したものの、1995年に至るまでその構造は決定されていませんでした。NAADP は近年、膵臓、心臓、および神経系に影響を及ぼす様々な疾患の薬物学的標的として非常に焦点が当てられています。NAADP を用いた実験より、イノシトール三リン酸(IP3)といった他の細胞経路における調節因子と同様に、極めて強力なカルシウム動員物質であることが示されています。(図1)

イノシトール三リン酸及びNAADPにおけるCa2+流入機序
図.1 イノシトール三リン酸及びNAADPにおけるCa2+流入機序
イノシトール三リン酸 (IP3) とNAADPは、細胞が受け取った化学的刺激を移送するセカンドメッセンジャー分子である。IP3はIP3リガンド開口型Ca2+チャネルに結合し、小胞体から細胞質基質へのCa2+流入を起こす。NAADPは酸性小胞から細胞質基質へのCa2+流入を惹起する。

■ NAADP-AM

NAADPが急速に注目視されているため、研究者はNAADP研究に向けたよりよいツールの探索を始めています。近年では、NED-19とNAADP-AM (品番:20997) という2種類の化合物の開発により研究プロセスが著しく盛んになっています。NED-19はNAADPアンタゴニストであり、当初はNAADPアナログのバーチャル化合物スクリーニングを介して開発されました。本物質は、NAADP介在性Ca2+応答とNAADP結合の両方を特異的に遮断します。

NAADP研究において2番目に重要な開発として細胞透過性NAADPアナログであるNAADP-AMの合成が挙げられます。NAADP-AMが開発される以前は、NAADP研究においてNAADPを細胞に導入するためにはマイクロインジェクション法やエレクトロポレーションといった侵襲性の細胞技術を使用する必要がありました。これらの手法には、いくつかの問題があることが指摘されています。少なくとも、細胞膜の破壊により正常細胞内機能が崩壊します。マイクロインジェクションの場合、単一細胞に限定されることから、そのプロセスに非常に時間を要します。エレクトロポレーションの場合、一般的な問題として導入効率の低さや高頻度での細胞死が挙げられます。

アセトキシメチルエステル (AMエステル) の利用により、従来の導入技術で直面した数々な問題点を解決することができます。NAADPの場合、細胞内によく保持されるものの、負に帯電していることから細胞膜を透過させることは特に困難です。しかし、AMエステルを化学的に付与し、NAADP-AMを合成することで、負電荷が無くなるだけでなく疎水性になります。この化学特性の変化によりNAADP-AMは細胞のリン脂質膜を容易に通過できるようになります。一旦細胞内に入ると、AMエステルは細胞内エステラーゼにより切断され、化合物は元のNAADP形態に戻ります。このようにして、侵襲性細胞技術を用いることなく、AMエステルを利用することでNAADPを容易に細胞集団へと導入することができます。

NAADP-AM の作用機序
図.2 NAADP-AM の作用機序
NAADP-AM (品番:20997) は細胞透過性NAADPアナログである。NAADP-AMは細胞の細胞質基質へと取り込まれ、エステラーゼ酵素により加水分解を受ける。セカンドメッセンジャーであるNAADPの流入により、NAADP介在性カルシウムシグナル伝達が誘導される。

品名 メーカー 品番 包装 希望販売価格
NAADP [Nicotinic acid adenine dinucleotide phosphate sodium salt]詳細データ ABD 20999 1 MG
¥24,000
NAADP-AM詳細データ ABD 20997 2*50 UG
¥72,000

Fluorimetric cADP リボースアッセイ

cADP-リボース (cADPR) は、NAD+由来のCa2+メッセンジャーです。ADP-リボシルシクラーゼ(ADPRC) は、NAD+からの cADPR合成を触媒するものの、高濃度のニコチンアミド存在下では可逆的であり、化学量論的にcADPRからNAD+ を産生します。産生されたNAD+ は、AAT Bioquest社の新開発NADセンサーであるQuest Fluor™ NAD試薬により検出することが可能です。このアッセイでは、組織や細胞培養液中の cADPR を低nM範囲でモニタリングすることができます。Quest Fluor™ NAD試薬によるNAD+検出はNAD+に特異的であり、NADHには反応しません。蛍光シグナルはEx/Em = 420/480 nm で容易に検出できます。このアッセイは、96ウェルまたは384ウェルマイクロタイタープレートフォーマットで簡便に行うことができます。

Amplite(TM) Fluorimetric cADP-Ribose Assay Kit (品番20305) によるcADPR濃度の検出
図.3 Amplite™ Fluorimetric cADP-Ribose Assay Kit (品番20305) によるcADPR濃度の検出
種々の濃度のcADPRをADPRC反応混合溶液と1時間、室温で培養し、NAD検出試薬を添加した。検出できたcADPRの最低濃度は100 nMであった。

品名 メーカー 品番 包装 希望販売価格
Amplite(R) Fluorimetric cADP-Ribose Assay Kit詳細データ ABD 20305 1 KIT
[100 tests]
¥120,000

キレート剤

■ BAPTA AM

BAPTAは、カルシウム特異的アミノポリカルボキシル酸で、4つのカルボン酸官能基が存在することから、2つのカルシウムイオンに結合できます。カルシウムと他の金属イオンの配位にはカルボン酸リガンドの自由度が高いことが必須です。

BAPTA AM (品番:21002) は、BAPTA (1,2-bis(oaminophenoxy) ethane-N,N,N',N'-tetraacetic acid) の細胞透過性バージョンであり、細胞透過性カルシウムキレート剤です。BAPTA誘導体は細胞や組織におけるカルシウム濃度の調整に使われます。

■ EGTA AM

EGTA は、キレート剤であるアミノポリカルボキシル酸です。EDTAと比べ、EGTAはマグネシウムに対する親和性が低く、カルシウムイオンへの選択性がより高くなります。通常、生細胞の生存環境はカルシウムイオンがマグネシウムに比べて数千倍低濃度であり、これに類似した緩衝液への使用に有用です。四塩基性EGTAのカルシウムイオン結合における pKa は11.00ですが、プロトン化した形態では顕著な結合は行われず、pH 7において、見かけ上のpKaは6.91になります。
EGTA AM (品番:21005) は、EGTA(エチレングリコール四酢酸)の細胞透過性バージョンであり、細胞透過性カルシウムキレート剤です。このEGTA誘導体は細胞や組織におけるカルシウム濃度の調整に使われます。

品名 メーカー 品番 包装 希望販売価格
BAPTA, AM詳細データ ABD 21001 25 MG
¥18,000
BAPTA, AM *UltraPure Grade*詳細データ ABD 21002 25 MG
¥24,000
BAPTA, tetrapotassium salt詳細データ ABD 21003 100 MG
¥18,000
BAPTA, tetrasodium salt詳細データ ABD 21004 100 MG
¥18,000
EGTA AM詳細データ ABD 21005 10 MG
¥36,000
EGTA AM *10 mM DMSO solution*詳細データ ABD 21006 1 ML
¥36,000
EGTA tetrasodium salt *10 mM aqueous solution*詳細データ ABD 21008 10 ML
¥18,000
EGTA tetrasodium salt詳細データ ABD 21007 1 G
¥18,000

Pluronic® F-127

Pluronic® F-127 (品番20050) は、低濃度では細胞に対して比較的無毒な非イオン性界面活性物質であり、しばしば Indo-1 AM、Fura-2 AM、Calcein AM、Fluo-3 AM、Fluo-4 AM、Fluo-8. AM、Cal-520、Calbryte™ 520、およびRhod-4™ AMといったAMエステル色素とともにこれらの水溶性改善目的で使用されます。Pluronic® F-127 は、他の親油性プローブの分散に有用です。Pluronic® F-127 が細胞の膜特性を変えていないことを確認するため適切なコントロールを使用する必要があります。

品名 メーカー 品番 包装 希望販売価格
Pluronic(R) F-127 *10% solution in water*詳細データ ABD 20053 10 ML
¥18,000
Pluronic(R) F-127 *20% solution in DMSO*詳細データ ABD 20052 10 ML
¥18,000
Pluronic(R) F-127 *Cell culture tested *詳細データ ABD 20050 10 G
¥18,000

プロベネシド(Probenecid)

プロベネシド (品番:20060) は、細胞膜に局在する有機アニオン輸送体の阻害剤です。これらの輸送体は、しばしば蛍光指示薬を細胞から押し出すため、細胞内の色素保持が悪くなります。この現象によりアッセイでのバックグラウンドが高くなるため、細胞内の色素指示薬をよく保持する必要があります。プロベネシドで輸送体活性を阻害し、細胞内色素指示薬の漏出を低減する方法は、カルシウムアッセイにおける蛍光バックグラウンドを低減させる手法として一般的です。一般的に使用されるプロベネシドの遊離酸形態は中性の水に対する水溶性が低いため、1M NaOHを用いて溶解する必要があります。AAT Bioquest社では、便利な水溶性ReadiUse™プロベネシドを提供しています。

Calbryte™ 520 AM (品番20651) または Fluo-4 AM (品番20551) で測定したCHO-M1細胞における外来性M1受容体のカルバコール刺激性カルシウム応答結果
図.4 Calbryte™ 520 AM (品番20651) または Fluo-4 AM (品番20551) で測定したCHO-M1細胞における外来性M1受容体のカルバコール刺激性カルシウム応答結果
CHO-M1細胞を96ウェル黒壁/透明底コースタープレートの各ウェルに40,000細胞/100 µL/ウェルずつ播種して一晩培養した。プロベネシドを添加しない100 µL Fluo-4 AM またはCalbryte™ 520 AM を細胞に添加し、37℃で45分間培養した。表記した最終濃度となるようカルバコール(50 µL/ウェル)をFlexStation 3 を使って添加した。

品名 メーカー 品番 包装 希望販売価格
Probenecid *Cell culture tested*詳細データ ABD 20060 10*72 MG
¥18,000
ReadiUseTM probenecid *25 mM stabilized aqueous solution*詳細データ ABD 20062 10*10 ML
¥36,000
ReadiUseTM probenecid, sodium salt *Water-soluble*詳細データ ABD 20061 10*77 MG
¥36,000

【関連情報】

商品は「研究用試薬」です。人や動物の医療用・臨床診断用・食品用としては使用しないように、十分ご注意ください。

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