生命科学分野において、シグナル伝達のセカンドメッセンジャー「cyclic AMP(cAMP)」が関与する細胞応答の再現や病態モデルの作製手段として、時間・空間的な自在性と再現性に優れ、薬剤投与では難しい精密なコントロールが実現できる光操作(Optogenetics)に期待が高まっています。光刺激によりcAMPを生成する光活性化アデニル酸シクラーゼ(Photoactivated adenylyl cyclase; PAC)は、Gタンパク質を介さずに光で直接活性化されるため、各種生理活性因子の働きを光に置き換えることができる有望なツールです。光感受性イオンチャネルによるOptogeneticsでは困難な非興奮性細胞へも本製品を応用いただけます。cAMPシグナル伝達の光操作によって細胞単位で起こるさまざまな生命現象の誘導にお役立てください。
本製品は、ラン藻(Oscillatoria acuminata)由来の光活性化アデニル酸シクラーゼ(OaPAC)改変型ベクターです。
OaPACは、2つのサブユニットから成るホモ二量体であり、それぞれのサブユニットは、BLUF(The sensor of blue-light using FAD)ドメインとAC(Adenylyl cyclase)ドメインから成っています。青色光照射により細胞内cAMP生成を光強度依存的に誘導することができます。
天然のOaPACと硫黄細菌Beggiatoa由来bPACの極端な光感受性の差は、PAC実用のボトルネックとなっていました。すなわち、光感受性の低い天然OaPACは強光刺激による光毒性が懸念され、光感受性がとても高く暗所活性も有するbPACは完全暗室で扱う必要がありました。OaPAC348およびOaPAC360は、これらのボトルネックを解消した製品です。さらに、野生型OaPACの15〜50倍高い光感度を有しています。クローニングベクターは、大腸菌での選択マーカーとしてアンピシリン耐性遺伝子を含んでいます。また、AAVベクターは、汎用性の高い血清型2で、PAC遺伝子の発現マーカーとして赤色蛍光タンパク質(RFP; Ex555nm/Em584nm)を有しています。
商品は「研究用試薬」です。人や動物の医療用・臨床診断用・食品用としては使用することはできません。