PUREfrex® は、タンパク質合成に必要な因子のみを個別に精製し、アミノ酸や NTP 等と混合して再構築したタンパク質合成キットです。キットに含まれる大腸菌由来のリポ多糖が低減されているため、合成したタンパク質を精製せずに、細胞を用いた実験やアッセイに直接使用することができます。加えて、測定機器の検出感度が向上したことで必要とされるタンパク質量が少なくなり、研究全体の効率化が進んでいます。こうした背景から、従来は大腸菌系が主流だった初期評価にも PUREfrex® が採用されるケースが増えています。
はじめて無細胞系をお試しになる方に最適な、少量サイズの商品「PUREfrex® 2.0 mini」もご用意しています。
ちらしは こちら から。
【目次】
PUREfrex® は、PURE system を基に開発された再構成型無細胞タンパク質合成キットです。PURE system は、東京大学大学院の上田卓也教授のグループにより開発された再構成型無細胞タンパク質合成系で、転写・翻訳・エネルギー再生に必要なタンパク質、リボソームを個別に精製した後、アミノ酸、NTP などと混合した合成系です。反応液に、目的のタンパク質をコードする DNA もしくは mRNA を添加して反応することにより、タンパク質を合成します。精製した因子を混合した反応液を使用するため、組成を自由に調節できる、翻訳などに無関係なタンパク質をほとんど含まないなどの特長があります。
PUREfrex® は、反応液に含まれるタンパク質、リボソーム、tRNA の調製方法を改良し、従来品に比べて純度を高めた合成反応液です。特に、混入していた大腸菌由来のリポ多糖は、反応液 1 µL あたり 10-1 EU 以下にまで低減されています。また、RNase、βガラクトシダーゼなどの混入タンパク質も減少しています。さらに、PUREfrex® に含まれる翻訳因子などのすべてのタンパク質には、精製、検出用のタグ配列が付加されていません。そのため、あらゆるタグ配列を付加したタンパク質を合成し、タグにより精製・検出を行うことが可能です。
- 抽出液ではなく精製因子を使用
- PUREfrex® は細胞抽出液を用いず、精製した因子を再構成した反応液であるため、構成要素が明確で、不要な酵素活性や不純物の影響を受けません。
- 少量・多品種のタンパク質合成に最適
- スクリーニング用途などで必要とされる少量・多品種のタンパク質合成に非常に適しており、初期段階でのタンパク質評価に柔軟に対応可能です。
- 複数鋳型を用いた多量体合成が可能
- 複数の鋳型を混在させることで、Fab抗体などの多量体タンパク質の合成も可能です。 (複数鋳型混在下におけるFabの合成例)
- 毒性タンパク質も合成可能
- 生細胞では困難な、毒性の強いタンパク質の合成にも対応しています。 (タンパク毒素の合成例)
- 人工合成DNAがそのまま使用可能
- PUREfrexはヌクレアーゼ混入が少ないため、人工合成DNAをそのまま鋳型として利用できます。また、PCR反応液を直接添加することも可能です。
- スケールに合わせて選べるラインアップ
- 検討段階に便利な少量から、大規模実験に対応するバルクまで。研究の規模に応じたサイズ展開可能です。また、反応液量あたりの合成量はほとんど変わりません(数 µL〜数 10 mL、あるいはLスケールも)。
- カスタムキットの提供も可能
- お客様のニーズに合わせた「PUREfrex® Custom」を作製・ご提供が可能です。(カスタマイズの例)
- シンプルな操作系
- ワンチューブで、37℃、数時間で合成されます。
- タグ付加による検出・精製が可能
- 合成したタンパク質にタグを付与することで、精製や検出が容易になります。
- 高い再現性とLot間の安定性
- Lot間差が小さく再現性が高いため、データの信頼性が重要視されるAI・機械学習(ML)向けのウェット実験にも適しています。
動画のご提供:ジーンフロンティア株式会社
プロトコル例
PUREfrex® 1.0 を用いたタンパク質合成は、任意の反応液量で行うことができます。
例えば、20 µL で行う場合は以下のように反応液を調製してください。
- Solution Iを、室温〜37℃ で1分間ほど温めて完全に融解し、氷上に置きます。
- Solution IIとSolution IIIを氷上で融解します。
- 融解したSolution I、II および III を軽くボルテックスした後、遠心して内容物をチューブ下部に集めます。
- 以下のように反応液を調製します。(DNAは、1kbpあたり 0.5-3 ng/µL になるように添加してください。)
Water 8-X µL Solution I 10 µL Solution II 1 µL Solution III 1 µL 鋳型DNA 注1 X µL Total 20 µL - 37℃ のヒートブロック又はウォーターバスで2〜4時間反応させて、タンパク質を合成します。注2
- 合成されたタンパク質を、それぞれの目的に使用します。注3
注意点
注1) | 鋳型DNAは、目的のタンパク質に合わせてお客様の方でご用意ください。 |
注2) | 気相の恒温槽(培養用恒温器など)で反応すると、反応液の温度の上昇に時間がかかり、合成量が低くなります。 |
注3) | SDS-PAGEによる合成の確認は反応液を水で希釈してから泳動してください。 詳細は、こちらのサポート情報よりダウンロードください。 |
注4) | 凍結融解を繰り返すと活性が落ちる場合があるため、実験系が少量で行われる場合は、少量ずつ分注することをおすすめいたします。少量に分注した後、Solution IIとSolution IIIは、液体窒素かドライアイス/エタノールで急速凍結をした後に、-20℃や-80℃で保存してください。急速凍結をせずに、-80℃に入れ、緩やかに凍結すると、リボソーム(Solution III)など、活性が落ちてくる因子があります。また、ヌクレアーゼの混入を防ぐために手袋やマスクの着用を推奨しております。 |