キナーゼとは?
リン酸化は、タンパク質及び脂質の翻訳後修飾(PTM;post translational modification)の主要なステップで、細胞内のタンパク質及び脂質の機能を調節する最も効果的な方法の1つです。プロテインキナーゼは、最も大きな酵素クラスの1つ(516ファミリーメンバーが存在し、ヒトの全ての遺伝子の2%を占めています)で、ATPのγリン酸の、タンパク質中のアミノ酸(セリン、スレオニン、チロシンなど)のヒドロキシル基又は脂質中のグリコシル基への転移を触媒します。
プロテインキナーゼは、ヒトだけでなく、バクテリアや植物にも存在しています。ヒトの全てのタンパク質のうち最大で30%が、プロテインキナーゼ活性によるリン酸化を受けている可能性があります。リン酸化は、通常、基質の機能的変化を引き起こし、酵素活性、細胞内局在、他のタンパク質との関係性などを変化させます。
プロテインキナーゼは、細胞内の多様なシグナル経路に関与する、高度に調節されたタンパク質です。成長因子、サイトカイン、ホルモン類などは、様々なプロテインキナーゼターゲットの活性をオン又はオフに切り替え、それによりさらにその下流の基質タンパク質を調節します。
プロテインキナーゼによるシグナルの欠陥は、多くのヒトの疾患の原因となり、これらのターゲットは、治療介入のために積極的に追及されています。小分子の阻害剤や中和抗体を用いたプロテインキナーゼのターゲッティングは、癌などの様々なヒトの疾患の治療に非常に有益です。プロテインキナーゼをターゲットとするいくつかの薬剤が既に承認され、さらに多くの候補薬が臨床試験中です。