二次元単層細胞培養モデルは薬剤のスクリーニングに幅広く使用されてきましたが、しばしばin vivo応答の適切な疑似的環境にならないことが多いことが知られています。
Sutherlandらは初めて固形腫瘍の3Dモデルとして腫瘍スフェロイドを提案しました。多細胞腫瘍スフェロイド(MTS)は、in vivoの腫瘍環境を模倣するのに有用なツールです。このような3Dモデルシステムは、in vitro とin vivo研究の中間に位置し、非常に重要です。MTSの調整には様々な方法がありますが、それらの多くは非常に複雑かつ複数のステップがあり、時間を要し、特別な装置が必要です。
新規のワンステップで再現性のあるスフェロイド形成の方法は、トリフェニルホスホニウム基を持つ環状RGDペプチドを用いた方法がベースとなっています。このペプチドを単層細胞培養へ加えるとα5β1インテグリンとの相互作用により細胞の凝集を緩め、自己組織化を誘導します。この相互作用は、細胞接着タンパク質のEカドヘリンの発現により誘導されます。環状RGDペプチドを添加後約72時間で、細胞の凝集が緩み、多細胞スフェロイドを形成します。この変換は、細胞表面上に十分な数のカドヘリン分子が存在することによって引き起こされることが示唆されています(図2)。
図.2 環状RGDペプチドによる腫瘍スフェロイドの形成