がんや感染症、自己免疫疾患などで特定のT細胞クローンが抗原を認識して増殖するクローン性増殖が起こると、特定の種類のクローンの頻度が高くなった集団が形成されます。T細胞が集団として持っているTCR遺伝子のコレクション (クローンの種類と個々のクローンの頻度) をTCRレパトアと呼び、これを次世代DNAシーケンサーなどで解析する手法がTCRレパトア解析です。
TCRレパトアは個体の抗原感作歴を反映する“免疫記憶バーコード”として、また多様な病原体に対する個体の対応可能性を反映する指標として、がん、自己免疫疾患、感染症、そしてワクチン応答などの研究・診断への応用が期待されています。
イムノジェネテクス社のTCRレパトア解析では、mRNAからcDNAを合成し、共通プライマーでTCR遺伝子を増幅することで、従来法と比較して高感度、非バイアスな解析が可能です。また、独自開発した重複クローン解析技術(図1)により、腫瘍反応性CD4+およびCD8+T細胞クローンの治療前後または経時的な変化を容易に解析することが可能になりました。
図1. 独自開発の重複クローン解析技術を使用したTCR解析
腫瘍反応性T細胞の種類や頻度は、患者のがんに対する免疫応答を評価する上で重要なバイオマーカーです。
従来技術では、患者末梢血に存在する膨大なT細胞クローン(レパトア)情報から腫瘍反応性T細胞の情報を抽出することや、微量な腫瘍組織検体からCD4+ またはCD8+ T細胞レパトア情報を取得することは困難でした。
イムノジェネテクス社は、腫瘍反応性T細胞が濃縮される腫瘍組織のTCRレパトア解析と、末梢血CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞のTCRレパトア解析を組み合わせることで、末梢血および腫瘍について簡便に腫瘍反応性CD4+またはCD8+ T細胞クローンを同定する重複クローン解析技術を開発しました。
本技術により、治療前後における末梢血および腫瘍組織中の腫瘍反応性T細胞応答の定量的な評価が可能となり、患者個々の免疫応答に基づいた最適な治療戦略の選択に貢献します。