北海道産食品素材の抗肥満効果をスクリーニングするために、ラット初代内蔵脂肪細胞のUCP1のmRNA発現量を比較しました。
食品素材エキスの凍結乾燥粉末をPBSに10(w/v)%で溶解し一晩静置後、溶け残りを遠心分離で除去した上清を0.45µMフィルターで濾過したものをサンプルとしました。
ラット内臓脂肪細胞を4日間培養したのち、4日目(脂肪分化初期)から8日目(成熟脂肪細胞)までの4日間、被験物質を添加して培養を行いました。その後にノルアドレナリン(1µM・6時間)を添加し細胞を回収して遺伝子発現解析を行いました。

結果:「北もみじ」「長いも」の群では、ノルアドレナリン刺激時の「UCP1」の発現がコントロールと比較して上昇しており、運動時に脂肪燃焼を促進する働きが期待されます。逆にマタタビは脂肪燃焼を抑制する可能性があります。
食品の摂取による脂肪燃焼効果について
食品の摂取が脂肪燃焼に与える作用については、機能性成分の摂取自体が脂肪燃焼を促すのではなく、継続的に機能性成分を摂取することによって、その後の運動時での脂肪燃焼促進を期待するのが一般的です。
本受託試験では、機能性食品素材をあらかじめ暴露した脂肪細胞を用いて、β3アドレナリン受容体刺激時のUCP1活性化の評価を行います。
脂肪組織とUCP1について
脂肪組織は白色脂肪と褐色脂肪の2種類に分類されます。それぞれは異なる代謝経路を持ち(下図参照)、白色脂肪はエネルギーの貯蔵庫として脂肪を蓄える働きがあります。一方で、褐色脂肪は、ミトコンドリア内で蓄えられた脂肪を原料として熱を発生させる働きがあり、エネルギー消費に必須の分子としてUCP1タンパクが古くから知られています。
近年の研究では、交感神経が活性化することによって、褐色脂肪組織だけではなく、ヒト脂肪組織の大部分を占める白色脂肪組織においてUCP1の発現が誘導されること(白色脂肪細胞の褐色化)が報告されています。(参考文献)

褐色脂肪細胞の脂質代謝経路

白色脂肪細胞の脂質代謝経路
使用細胞について

内臓脂肪分化メディウム
本試験系で使用するラット内臓脂肪細胞(コスモ・バイオ:VAC01C)は、白色脂肪組織である腸間膜脂肪組織から採取した初代培養細胞で、通常培養ではUCP1の発現はほとんどありません。
成熟脂肪細胞まで培養した後に、ノルアドレナリン(β3作動薬)を添加すると6時間ほどでUCP1の発現が急激に上昇することが確認されており、白色脂肪の褐色化モデルとして試験が可能です。

参考文献
- M.Saito, Human brown adipose tissue: regulation and anti-obesity potential. Endocr J. 2014;61(5):409-16. doi: 10.1507/endocrj.ej13-0527. Epub 2014 Jan 9.
- J.Nedergaard, T.Bengtsson, B.Cannon, Unexpected evidence for active brown adipose tissue in adult humans. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2007 Aug;293(2):E444-52.
- Jun Wu et al. Beige adipocytes are a distinct type of thermogenic fat cell in mouse and human. Cell. 2012 Jul 20;150(2):366-76. doi: 10.1016/j.cell.2012.05.016. Epub 2012 Jul 12.