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小松 紘司 先生 愛知医科大学 医学部生理学講座 |
微量サンプルおよび低濃度サンプル中のホルモン濃度測定
ユーザーレポート
Products
メーカー:Enzo Life Sciences,Inc.


■ プロゲステロンELISA キット
- 使用が簡単:エラー低減のため、色がついた液体、プレコートされたプレートを使用
- 短時間ハイスループット:3時間以内に38サンプルをduplicate測定可能
- 高感度:8.57 pg/mL プロゲステロンを検出
- 高い特異性:他のステロイドとの交差反応性が無視できるほどの高い特異性
■ 17-βエストラジオ―ル高感度ELISAキット
- 使用が簡単:エラー低減のため、色がついた液体、プレコートされたプレートを使用
- 短時間ハイスループット:3時間で37サンプルをduplicate測定可能
- 高感度:14 pg/mL 17-βエストラジオ―ルを検出(15.6 - 1,000 pg/mL)
- 高い特異性:他のステロイドとの交差反応性が無視できるほどの高い特異性
実験内容
我々のグループでは月経周期におけるマウス卵巣内の卵胞発育過程を可視化するためにライブイメージング観察が可能な卵巣組織培養法を開発し、卵巣組織における卵胞発育制御機構の解析を行っている。この培養法では培養下で周期的な卵胞発育、排卵、卵胞閉鎖という生理現象を再現、観察する事が可能である(図1)[1][2]。更に我々は培養下において生体内と同様のホルモン産生、分泌パターンが再現されているかを確認するために24時間間隔で培養液を回収し、17β-estradiol high-sensitivity ELISA kit (Enzo Life Science社)を用いて17β-estradiol濃度を測定した。その結果、卵巣組織培養下でも生体内と同様に卵胞発育、排卵と培養液中の17β-estradiol濃度変化に高い相関性が確認された(図2)。通常、排卵後、妊娠維持のために黄体が形成され、progesteroneが産生、分泌されるが、卵巣組織培養下では黄体形成は再現することができない。そのため、17β-estradiolと同様に培養液中のprogesterone濃度をprogesterone ELISA kit (Enzo Life Science社) を用いて測定したが、培養液中ではprogesteroneは検出されなかった。そこで、我々は卵巣組織培養下でprogesteroneが産生、分泌されていない特性を利用し、培養液にprogesteroneを添加する事によって卵胞発育制御におけるprogesteroneの役割を調べた。その結果、添加濃度が100 ng/mLの時は原始卵胞〜一次卵胞の発育が促進され、排卵数も増加する事が分かった。一方、添加濃度が1 µg/mLの時は二次卵胞の発育、排卵数が抑制された[3]。この結果はprogesterone濃度依存的に卵胞発育が制御されると同時に妊娠期に排卵を抑制する制御機構が卵巣組織に存在する事を示唆している。実際に膣垢検査によって雌マウスの月経周期を識別し、同一個体における血中progesterone濃度変化を調べたところ、発情前期〜発情期において濃度が上昇し、それ以外は検出限界以下の濃度である事が分かった(図3)。これらの結果は生体内においても月経周期に伴うprogesterone濃度変化が卵胞発育制御機構の一端を担っている可能性がある事を示している。
上記の研究において17β-estradiolは3.5cm culture dishにて卵巣1個を24時間培養後回収した培養液1 mL中の濃度を測定し、progesteroneはマウス尾静脈から50 µLの血液を採取した後、そこから分離した約20 µlの血清を用いて測定を行った。Enzo Life Science社のELISA kitはこのように微量サンプルおよび低濃度サンプル中のホルモン測定が行えるため、同一個体、同一培養卵巣組織におけるホルモン濃度変化を低侵襲的な方法で長期的にトレースする事が可能である。
参考文献
- Komatsu K, et al. Biol Reprod., 93(1): 1-8 (2015)
- Komatsu K, et al. Biol Reprod., in press (2018)
製品使用文献
- Komatsu K, et al. J Reprod Dev., 63(3): 271-277 (2017)