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記事ID : 34186

小胞体(ER)膜の構造形成に必須のダイナミン様GTPアーゼSey1p(酵母Atlastinホモログ)のGTP加水分解活性の測定

ユーザーレポート

三間 穣治 先生

三間 穣治 先生
Joji Mima

大阪大学 蛋白質研究所 膜蛋白質化学研究室

Products

メーカー:Enzo Life Sciences,Inc. メーカー略号:ENZ

Enzo Life Sciences,Inc. こちらをつかってみました!

BIOMOL® Green Reagent

遊離リン酸をワンステップで定量できる便利な高感度比色検出試薬です。

  • 便利なワンステップ試薬(混合不要)
  • 長期保存可能(4℃で6ヶ月間)
  • 優れた感度(〜50 pmol in 100 µL)
  • ハイスループットアッセイに最適:
    マイクロプレートアッセイ(100 μL容量)又はキュベットアッセイ(1 mL容量)に適用

実験内容

ヒトを含む高等動物から出芽酵母などの微生物にいたる全ての真核細胞は、多種多様な細胞小器官(オルガネラ)から成る複雑で精緻な細胞内膜系を持つ。これらオルガネラ群の脂質二重膜構造は、細胞内で時空間的に厳密に制御され、個々のオルガネラや細胞の生命機能と深く結びついている。筆者と当研究室の大学院生・杉浦信太郎(当時)は、様々なオルガネラ膜の中でも、分泌タンパク質の生合成と細胞内膜交通・小胞輸送に重要な役割を果たし、また非常に特徴的な網目状の膜構造をもつ小胞体(ER)膜に着目した。そして、ER膜の構造形成の分子基盤を探ることを試み、人工脂質二重膜であるリポソームと、ER膜融合の必須因子であるダイナミン様GTPアーゼSey1p(酵母Atlastinホモログ)の精製リコンビナントタンパク質、これら2つの化学的に純粋な実験材料を用いて再構成Sey1pプロテオリポソームを調製し、その再構成系膜融合解析によりSey1p依存性ER膜融合反応における脂質組成の重要性を初めて見出した(図1)(Sugiura & Mima, Sci Rep, 2016)。

上記を含め、精製タンパク質因子と合成リポソーム膜から構成される再構成プロテオリポソーム解析系は、化学的に純粋で構成要素の種類と量が規定された実験系であり、ゆえに個々のタンパク質因子が生体膜・オルガネラ膜上で実際に(直接的に)駆動する機能・活性を明確に検証できる実験アプローチである。一方、そのためには、再構成系で用いる精製タンパク質群が、それらの天然状態(細胞内で存在する状態など)のタンパク質と同等の機能と構造を保持しているかが重要なカギとなる。本実験においては、目的タンパク質であるER膜融合因子のダイナミン様GTPアーゼSey1pの内在性GTP加水分解活性をその指標とし、反応後に産生される遊離リン酸を本製品(Enzo Life Sciences社のBIOMOL® Green試薬)を用いて定量してSey1pのGTPアーゼ活性を測定した(図2)(Sugiura & Mima, Sci Rep, 2016)。具体的には、(1)精製Sey1pタンパク質(終濃度16 µM)を、GTP(終濃度1 mM)を含むバッファー(100 µL; 20 mM Hepes-NaOH, pH 7.4, 500 mM NaCl, 10% glycerol, 2 mM MgCl2, 0.4% Triton X-100)中でインキュベーション(30°C, 30 min)、(2)同様のバッファー(200 µL)で3倍希釈、(3)すぐにBIOMOL® Green試薬(600 µL)を添加して呈色反応の開始、(4)インキュベーション後(30°C, 15 min)、そして、(5)緑色に呈色した反応サンプルの波長620 nmの吸光度を測定した。ネガティブコントロールとしては、GTPの代わりにGTPγSおよびGDPを添加した試料、あるいは熱失活させたSey1pタンパク質を加えた試料を用いた。さらに、得られた反応サンプルの吸光度値とリン酸検量線から、最終的にSey1pのGTP加水分解の比活性(µM phosphate/min/µM protein)を求めて定量的に評価した(図2)。これらの実験から、本製品(Enzo Life Sciences社のBIOMOL® Green試薬)が、ダイナミン様GTPアーゼを含めた様々なGTP加水分解酵素(低分子量GTPアーゼなど)の活性測定において、再現性の高い定量的なデータを得るのに非常に有用であるといえる(しかも簡便に測定できることも大きな利点である)。

ダイナミン様GTPアーゼSey1p依存性膜融合反応の再構成
図.1 ダイナミン様GTPアーゼSey1p依存性膜融合反応の再構成
(A)再構成Sey1pプロテオリポソームの膜融合活性を評価する脂質混合アッセイ(Lipid mixing assay)の模式図.(B)Sey1p依存性プロテオリポソーム膜融合にはGTP結合およびGTP加水分解が必要である.再構成Sey1pプロテオリポソームの脂質混合アッセイをGTP、GDP、GTPgS、あるいはATP(それぞれ1 mM)の存在下で測定.(C)再構成Sey1pプロテオリポソーム膜融合反応試料のネガティブ染色電子顕微鏡解析.GTP(1 mM)存在下の反応試料の画像で、リポソーム膜の形状が、Sey1p依存性膜融合反応により網目状様の膜構造へと変化.(D)Sey1p依存性プロテオリポソーム膜融合には複雑であるが生理的な脂質組成が重要である.(A)と同様に再構成Sey1pプロテオリポソームの脂質混合アッセイをGTP(1 mM)の存在下で行っているが、多様な膜の脂質組成を使用して測定(PCのみ〜生理的な複雑な脂質組成)
ダイナミン様GTPアーゼSey1pの内在性GTP加水分解活性の測定
図.2 ダイナミン様GTPアーゼSey1pの内在性GTP加水分解活性の測定
(A)精製Sey1pリコンビナントタンパク質の内在性GTPアーゼ活性を、界面活性剤存在下(0.4% Triton X-100)で可溶化している状態で測定.(B)精製Sey1pリコンビナントタンパク質の内在性GTPアーゼ活性を、プロテオリポソーム膜に挿入し再構成された状態で測定.

製品使用文献

  1. Sugiura S, Mima J (2016) Physiological lipid composition is vital for homotypic ER membrane fusion mediated by the dynamin-related GTPase Sey1p. Sci Rep 6: 20407.

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