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高橋 暁子 先生 公益財団法人がん研究会 がん研究所 細胞老化プロジェクト 主任研究員 |
抗CD81抗体を用いたWestern blotting法によるエクソソーム蛋白の検出
ユーザーレポート
Products
メーカー:コスモ・バイオ株式会社


■ エクソソームモノクローナル抗体 Anti CD9, CD63, CD81
本製品はエクソソームマーカーとして知られているCD9, CD63, CD81を特異的に認識する抗体で、血清、培養上清から免疫沈降法を用いて、エクソソームを単離することが出来る抗体です。
- エクソソーム膜タンパク質CD9, CD63, CD81を高い特異性で認識
- エクソソーム表面抗原タンパク、内在性RNA(miRNA)、タンパク質解析に有用
実験内容
エクソソームは、後期エンドソームにESCRT複合体やセラミド合成酵素によって腔内小胞が形成された多胞性エンドソーム(Multivesicular body)を経て、細胞外へと分泌される直径50-150nm程の細胞外膜小胞である。蛋白質、脂質、核酸のような様々な細胞内構成分子がエクソソームによって他の細胞に伝達されることから、近年エクソソームが細胞間コミュニケーションツールとして働いていることが報告され大変に注目を集めている。
私たちは老化細胞が炎症性サイトカインやケモカインなどの炎症性蛋白質を高発現し細胞外へと分泌するSASP(Senescence-associated secretory phenotype)の解析を行う過程で、老化細胞は炎症性蛋白質だけではなく細胞外分泌膜小胞の一種であるエクソソームの分泌も亢進していることを見出した1。ヒト正常線維芽細胞を用いて分裂寿命による細胞老化(Replicative senescence)と活性化型がん遺伝子(RasV12)による細胞老化(Oncogene-induced senescence)を誘導し、あらかじめ血清中のエクソソーム画分を除去した培地で48時間培養後に、培養上清中のエクソソームを超遠心法で回収した。そして細胞が分泌するエクソソームの量をNTA法(Nanoparticle Tracking Analysis法)で計測したところ、老化細胞ではエクソソームの分泌量が若い細胞の約30〜50倍亢進していることが明らかとなった(図1、上段)。さらに細胞が分泌したエクソソームマーカー蛋白の量を比較解析するために、回収したエクソソーム画分を用いてWestern blottingを行った。この時、コスモ・バイオ社から発売されている抗ヒトCD81モノクローナル抗体(SHI-EXO-M03)を1:1000希釈で使用したところ、老化細胞では若い細胞に比べて明らかにエクソソーム蛋白質の分泌量が増加していることが確認された(図1、下段)。私たちは老化細胞で分泌量が亢進しているエクソソームは、乳がん細胞(MCF-7)の増殖促進作用を示すことも観察している2。

図.1 ヒト正常線維芽細胞(TIG-3)が分泌するエクソソームの解析。*1
NTA法によるエクソソームの測定結果とWestern blotting法によるエクソソームマーカー蛋白の検出。
*1
©Akiko Takahashi (Japanese Foundation For Cancer Research)
Nature Communications volume 8, Article number: 15287 (2017) (Licensed under CC BY 4.0)
エクソソームはこれまで、その細胞間コミュニケーションツールとしての機能や診断ツールとしての有用性が特に注目され研究が進んできたが、細胞が何故エクソソームを分泌するのか、その生物学的な意義についてはまだまだ未知の部分が多い。私たちは正常な細胞がエクソソームを分泌する詳細な分子メカニズムを解析することで、エクソソーム分泌の生物学的意義を明らかにしたいと考えている。さらに、老化細胞が分泌するSASP因子としてのエクソソームの機能を解析することで、エクソソームが生体内で果たす役割やがんをはじめとする加齢性疾患とエクソソームの関りを解明したい。
参考文献
- Takahashi, A. et al. Exosomes maintain cellular homeostasis by excreting harmful DNA from cells. Nat Commun 8, 15287 (2017).
- Takasugi, M. et al. Small extracellular vesicles secreted from senescent cells promote cancer cell proliferation through EphA2. Nat Commun 8, 15729 (2017).