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佐藤 好隆 先生 名古屋大学大学院医学系研究科 総合医学専攻 ウイルス学分野 |
ExoTrap Exosome Isolation Spin Column Kit for protein research
ユーザーレポート
Products
メーカー:コスモ・バイオ株式会社


■ ExoTrap™ Exosome Isolation Spin Column Kit for Protein Research
血清、血漿、尿、唾液、培養上清(ヒトサンプルのみで試験済)から高純度なエクソソームを30分以内で単離するキット
- 使い慣れたスピンカラムタイプ
実験内容
エクソソーム(Exosome)は様々な細胞から分泌される脂質二重膜に囲まれた直径30〜100nmの膜小胞体で、タンパク質や核酸などを内包しています。体液中を循環することで、離れた場所にある細胞に様々なシグナルを伝えることが可能です。このエクソソームを介した細胞間のコミュニケーションは、抗原提示、アポトーシス、炎症、腫瘍の進展・悪性化などとの関連が指摘され、がん細胞から分泌されるエクソソームによるがんの早期診断やエクソソーム自体を Cargo としたドラッグデリバリーシステムの開発など分野を超えた応用に期待されています。
私たちはウイルス感染細胞とその周りに存在する非感染細胞の相互作用に興味を持って研究をしています。あるウイルスタンパク質を発現させた細胞とそのタンパク質を発現させていない細胞を混合培養し、蛍光免疫染色でウイルスタンパク質を検出すると、ウイルスタンパク質発現細胞の周囲の細胞(ウイルスタンパク質非発現細胞)にもウイルスタンパク質がドット状に検出されました。このことから、細胞間コミュニケーションを介在する分子としてエクソソームに興味を持ちました。
さて、実際に研究を進めていく上で、「どのようにエクソソームを精製するか?」が問題となりました。エクソソームの存在は知っていましたが、実際に扱ったことはありません。一般的には超遠心でエクソソームを精製するのですが、様々な条件や多くのサンプルからエクソソームを比較するには、時間と操作性で問題があります。そこで、操作の簡便さ(だれでも精製出来る)・精製に掛かる時間(短時間で精製出来る)・アプリケーションの豊富さ(エクソソーム自体も、内包されるタンパク質や核酸も解析できる)という視点で、各社から発売されているキットを検討し、”ExoTrap Exosome Isolation Spin Column Kit for protein research”を見つけました。
本製品の最大の利点は、少量のサンプルをカラムにアプライし、遠心するだけという”簡便さ”と、わずか30分という”短時間”でエクソソームが精製出来るということです。エクソソーム初心者だった私たちは本製品を使うことで、培養上清(精製前)では検出感度以下のため検出出来なかったエクソソームに内包されるウイルスタンパク質が、カラム精製後のサンプルでは WB でしっかりと検出されることを示すことが出来ました。さらに、エクソソーム阻害剤(GW4869)処理した細胞の培養上清からカラム精製したものでは、このウイルスタンパク質は検出されず、エクソソームに内包されていることが確認できました(1)。多量のエクソソームを安価にという目的には不向きかもしれませんが、本製品はエクソソームを短時間に簡便に精製するという場合には強くお勧めです。

図.1 エクソソーム精製前後およびエクソソーム分泌阻害剤投与前後のウェスタンブロッティング
(A) ExoTrap™ Exosome Isolation Spin Column Kitを用いてエクソソームを精製後、エクソソームに内包される LMP1およびHsp70の発現量をWBにより比較した。精製後のWBでは LMP1およびHsp70が濃縮されている ことがわかる。
(B) エクソソーム阻害剤(GW4869)処理した細胞培養上清からExoTrap™ Exosome Isolation Spin Column Kitを用いてエクソソーム を精製し、LMP1およびHsp70の発現量をWBにより比較した。 GW4869処理により LMP1およびHsp70が減少し、これらのタンパク質 がエクソソームに内包されていることがわかる。
製品使用文献
- Sato et al., Oncotarget, 8; 39345-39355, 2017