Q&A集
キットの使用方法について
未変性系では、サンプルの移動度はタンパク質の電荷や分子構造の影響を受けるため分子量の推定はお勧めできません。分子量の推定は、SDS-PAGEで行ってください。
SDS分子はマイナスに荷電し分子量も非常に小さいので通電と同時にどのタンパク質よりも早くゲルの中に入っていきます。従って、SDS入りのゲルで泳動しているのとほとんど同じ状態になります。
タンパク質分子内または分子間にS-S結合が存在するからです。このS-S結合をβメルカプトエタノール等の還元剤で切断すると分子構造が変化したり、サブユニットに分離したりするので移動度が変化します。
使用可能ですが、トリス-グリシンバッファーを使った場合と分離パターンが変わります。マーカーなどで分離パターンや分析レンジを確認してからご使用ください。
製造後の時間が長くなると、ゲルの酸化が進行します。この結果、泳動中にガラス板とゲルの間に気泡が発生したり、ゲルの下端が伸びてガラスからはみ出るというような現象が起こります。これらはいずれも泳動像の乱れの原因となります。プレキャストゲルの使用期限は、上記現象を総合的に判断して設定しております。つきましては、期限の過ぎた製品のご使用はお控えください。
核酸を銀染色する場合は、ゲル中にホルムアルデヒドが入っているものは染色できません。グリセロールだけ入っているゲルは染色できます。
固定液I あるいは固定液II に浸した状態で中断してください。長時間中断する場合は、試薬の蒸発を防ぐため蓋をしてください。
脱色してもう一度染め直すことができます。この時使用する脱色液の処方は下記の通りです。
A液 NaCl 14.8 g
CuSO4 14.8 g
H2O 340 ml
NH4OH 適量※
精製水で全量 400 ml
※沈殿物が溶けるまで加えて下さい。
B液 Na2S2O3 174.4 g
製水で全量 400 ml
A 液とB液を1:1に混合し、更に精製水で10倍希釈したものを脱色液とします。なお、脱色しすぎた場合、染色像も同時に消えますので注意してください。脱色液中で振とうして、染色像が適当になったところで10%酢酸溶液を加えて脱色を停止してください。その後、十分水洗いして保存してください。
1時間程度なら10%トリクロロ酢酸に浸しておくことができます。一昼夜中断する場合は50%メタノールに浸した状態で中断してください。この場合、試薬の蒸発を防ぐため蓋をしてください。また、振とうはしないでください。
可能です。
但し、2D-銀染色試薬・II の構成試薬の中で、前処理剤にはグルタルアルデヒドが入っていますので、試薬調製時に前処理剤を除いてお使いいただくことになります。
構成試薬の中で前処理剤は、タンパク質の種類による染色ムラを防ぎ、ある程度同じ色調に染めるために使用します。前処理剤を使用しなくても検出感度が変わるということはございませんが色調が多少茶〜黄色っぽくなることがあります。また、タンパク量が多い場合、染まりにくいものがあるかもしれませんのでご了承ください。
試薬の調製及び染色時間(マルチゲル®II ミニ 2枚分)
(1) 固定 10分 メタノール100 ml+酢酸20 ml+精製水⇒200 ml
(2) 固定 15分 メタノール 60 ml+酢酸20 ml+・固定化剤10 ml+精製水⇒200 ml
(3) 前処理 10分 メタノール 100 ml+精製水⇒200 ml *前処理剤は使用しません。
(4) 水洗 5分
(5) 銀染色 15分 染色液A10 ml+・染色液B10 ml+精製水⇒200 ml
(6) 水洗 2分×3回
(7) 現像 10分以上 現像原液10 ml+精製水⇒200 ml
(8) 停止 停止液をそのまま使用します。
銀染色試薬中の銀含有量は低濃度であり、有害性は極めて低いものですが、BOD,COD等の排水基準を考慮し、弊社では塩化銀の沈殿物にしていただいた後、専門業者への引き取りを推奨しております。染色液を間違って流した場合は、大量の水で洗い流してください。
濃塩酸を流してしまった場合、排水のpHなど、別の問題が発生する可能性があります。トリクロロ酢酸を使用した場合、弊社ではアルカリと中和して大量の水とともに流しております。
核酸染色の場合、タンパク質とは異なる固定(トリクロロ酢酸固定)を行います。またキット中の固定化剤及び前処理剤を使用すると反応を阻害するため、固定の後はすぐ銀染色にうつります。 逆にタンパク質を染色する場合、固定化剤及び前処理剤を使用しないと、バンドが黒く染まらないという弊害が発生します。従いまして弊社としては、両者の同時染色というのは推奨しておりません。
尚、弊社ではゲルの材質はアクリルアミドで、泳動バッファーは、トリス-グリシン系を使用しております。泳動条件が上記以外の場合、タンパク質と核酸をそれぞれのプロトコールで染色しても2D-銀染色試薬・II が適用できない場合がありますのでご注意ください。
MSDS には、「酢酸、メタノールを含む色素製品であるため、排水溝には絶対流さぬこと。産業廃棄物処理認定業者に委託して処理すること。該当法規に従い廃棄物を処理すること」と明記してあり、実際弊社でも染色液及び脱色液廃液は専用タンクに保管して、定期的に業者に引き取ってもらっています。
製品添付のプロトコールはゲル割れを極力避けるために、処理時間を長めに設定しています。濃度の薄いゲルならば「多少」短縮しても問題ないでしょう。しかし、短くすればするほどゲル割れの可能性が高くなる事は理解していただいた上で検討してください。具体的な短縮可能時間については、ゲル濃度、温度、湿度など多くのファクターの影響を受けるために一概には言えません。 逆にゲルの白濁がひどい場合は短めに処理したほうがよいでしょう。
使用できます。最初のステップの3回の水洗によって尿素やバッファー成分は洗い流されるので影響を受けません。
メンブランを風乾後、転写面に触れないように注意しながらラップに包み、4℃で保存してください。保存したメンブランを使用する場合は、100%メタノールに再度浸した後、水洗してメタノールを除き、ブロッティング液に浸してください。
PVDFメンブレンは、疎水性が極めて強いので直接バッファーに浸しても濡らすことができません。予めメタノール処理するとバッファーで濡らすことが可能になります。このメタノール処理を確実に行わないとタンパク質が膜に結合しません。
●SDS-PAGE電気泳動で泳動時間が2時間近くかかった・・・ | |
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原因 | 対処法 |
ゲルプレート1枚当たり30mA定電流を勘違いして2枚を30mAで泳動した。 | パワーサプライを定電流にセットし、ゲルプレート1枚当たり30mAで泳動してください。 |
●泳動パターンが乱れた・・・ | |
原因 | 対処法 |
サンプルの濃度が濃すぎたりアプライ量が多かったため、バンドの部分が膨らみ隣接するレーンのバンドが乱れた。 | アプライ量は、タンパク量及び容量共に、許容量を守ってください。 |
β-ME処理したサンプルと未処理のサンプルを隣合わせて泳動したため、未処理のサンプルを流したレーンの泳動パターンが乱れた。 | β-ME処理と未処理のサンプルを同時に泳動する場合は1〜2レーン空けてアプライしてください。 |
ゲルの下端に気泡がついたまま電気泳動したため電流の流れにムラができた。 | ゲルプレートをセットする時、下端に気泡が入らないように注意してください。 |
陰極槽のバッファーが漏れたため異常な電流が流れた。 | セットした時、必ず陰極バッファーが漏れていないことを確認してから泳動を始めてください。 |
電流を指定値以上流したためゲルプレートの発熱量が大きくなりバンドが乱れた。 | 指定の電流量で泳動を行ってください。 |
●擬似バンド(artifact)が発生した | |
原因 | 対処法 |
操作を素手で行った。 | 手袋を使用してください。特に、銀染色する場合は必ず実施してください。 |
サンプルをアプライする時バッファー中にこぼした。 | ピペットの先がウェルに入っていることを確認して、サンプルが舞い上がらないように静かにアプライしてください。 |
使用した試薬や水のグレードが低い。 | 試薬は特級や電気泳動用を使用してください。また、精製水(イオン交換水)を使用してください。 |
ピペット等からの汚染。 | ピペットチップはサンプル毎に取り替えてください。 |
●分子量70 KDa付近に偽バンド(artifact)が見られた・・・ | |
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原因 | 対処法 |
表皮のタンパク質であるケラチンのバンドである可能性が高い。 | 手袋をつけずにコームを抜いたりウエルを触ったり、泳動バッファーの中に指を入れたりすると起こります。必ず手袋をはめて操作してください。 |
●40-70 KDa付近にタンパク質によらない黒い筋が発生した・・・ | |
原因 | 対処法 |
β-メルカプトエタノール(β-ME)やジチオスライトール(DTT) | タンパク質を還元した後、ヨードアセトアミドを加えてください。 |
●バンドが出ない | |
原因 | 対処法 |
ゲルの容積に対して使用した試薬の量が少ない。 | 説明書に従って適正な試薬量で染色を実施してください。 |
特にゲル濃度が低いゲルや、ゲル厚が1mm以下のゲルの場合、銀染色後の水洗時間が長すぎる。 | 水洗時間を短縮してください。 |
実施した電気泳動の系で、銀と反応する物質が入っていた。 | 電気泳動の系を変更してください。 |
アプライしたタンパク量が多すぎた。 | 水洗後、銀染色液のステップからもう一度行ってください。 |
●ゲルが銀鏡する・・・ | |
原因 | 対処法 |
水洗が不足している。 | 銀染色後の水洗を延長してください。(ただし、長すぎるとバンドが出ない場合がありますのでご注意ください。) |
使用した容器が汚れていた。 | 現像操作で使用する容器を新しい清浄なものにしてください。 |
振とうが不充分だった。 | 現像操作中、ゲルが容器表面に密着しないように良く振とうして下さい。 |
使用した試薬の量、特に銀染色、現像時での試薬量が規定通りでない。 | 説明書に従って、決められた通りの量で操作してください。 ホルムアミド入りPAGEあるいは酸性系のPAGEに適用した。使用できませんので別の系を使用してください。 |
ホルムアミド入りPAGEあるいは酸性系のPAGEに適用した。 | 使用できませんので別の系を使用してください。 |
●バックグラウンドの着色が激しい・・・ | |
原因 | 対処法 |
使用した試薬の純度が不充分。 | 使用する試薬は、特級を使用してください。 |
使用した脱イオン水の純度不足。 | 10−6 mho 以下の脱イオン水を使用してください。 |
●リージェント液に1時間程度浸しておいたら、染色したバンドが消えてしまった・・・(CBB−G250染色液使用) | |
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原因 | 対処法 |
染色液及び染色方法によって脱色されてしまう場合があります。 | リージェント液中で多少脱色されてしまう事を考慮して、脱色時間を短めにしてください。 |
ゲル濃度が低い場合に限り(15%以上のゲルでは出来ません)、リージェント液に浸しておく時間を、通常1時間のところ30分に短縮しても大丈夫です。ただ し、短くしすぎるとヒビ割れの原因となることがありますので十分に注意してください。また、染色が抜けてしまったゲルは、もう一度CBB染色してくださ い。 | |
●ゲルがひび割れる・・・ | |
原因 | 対処法 |
水洗が不十分。 | 水洗は十分に行ってください。 |
ゲルドライリージェント処理が不十分。 | 処理中は十分振とうしてください。 |
処理時間を延長してください。 | |
ゲルに裂け目がある。 | ゲルに裂け目を作らない様注意してください。 |
ゲルに裂け目がある場合にはナイフなどでその部分を切り落としてから乾燥操作を行ってください。 | |
乾燥に時間がかかりすぎている。 | フレームにセットした後、余分なゲルドライリージェントは出来るだけ除いてください。 |
夏期など湿度が高い場合は、なるべく風通しのよいところで乾燥させてください。 | |
●ゲルが白濁する・・・ | |
原因 | 対処法 |
処理前の水洗が不十分。 | 水洗いは十分に行ってください。 |
乾燥の時間が早すぎる。 | 乾燥する場合加熱は避けてください。 |
ゲルドライリージェントによる振とう時間が長すぎる。 | 振とうは1時間を厳守してください。(マルチゲル®II ミニの場合) |
●保存中にゲルの変形やひび割れが起きる・・・ | |
原因 | 対処法 |
乾燥が不十分。 | 十分に乾燥させてください。 |
ゲルが吸湿した。 | 乾燥後のゲルは湿気を避けて保存してください。 |
●転写ムラができた・・・ | |
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原因 | 対処法 |
ろ紙のバッファー量が少なかったため、ブロッティング中にろ紙が乾燥して気泡が発生した。 | 気泡の発生を防止するため、厚さ0.5mm以上のろ紙を使用してください。 |
電極板とろ紙の間に気泡が発生した。 | |
転写膜が部分的に乾燥した。 | 精製水で平衡化中は転写膜を完全に水没させるようにしてください。 |