血液脳関門(BBB)とは?
血液脳関門(BBB)は、中枢神経系(CNS)において循環血液を、脳および細胞外液と隔てる、高度に選択的な半透性の境界のことです。BBBは、タイトジャンクションを持つ内皮細胞・アストロサイトの末端部・周皮細胞から構成されており、脳の微小環境の維持に重要な役割を果たしています。BBBは病原体や毒素、大きな分子、親水性分子の通過を制限する一方で、必要不可欠な栄養素やガスは通過させます。
BBB透過性研究の重要性
血液脳関門(BBB)透過性の研究は、次のようなさまざまな科学的および医学的応用にとって重要です。
- 薬剤送達(Drug Delivery):
BBBは、治療薬を脳に送達するうえで大きな課題となります。BBBの透過性に関する研究は効果的にバリアを通過できる薬剤の設計に役立ちます。 - 神経疾患:
アルツハイマー病、多発性硬化症、脳卒中などの多くの神経疾患は、BBBの機能障害と関連しています。BBB透過性を理解することはこれらの疾患の診断や治療法の開発に役立ちます。 - 毒物学:
様々な物質がBBBの完全性にどのような影響を与えるかを評価することは、新薬や化学物質の安全性を評価する上で極めて重要です。
BBB透過性の研究方法
BBBの透過性を調べるにはいくつかの方法があり、Blue DextranやEvans Blue(EB)などの色素が最も一般的に用いられています。
Blue Dextran
Blue Dextranは高分子量の多糖類で、通常はBBBを通過しません。脳組織におけるその存在を追跡することにより、バリアの完全性を評価するために使用されます。
特長
- 低毒性:一般的にin vivo研究では安全であると考えられています。
- 高い特異性:Blue Dextranは通常BBBを通過しないため、バリア完全性を評価するための信頼性の高いマーカーとなります。
制限
- 可視化:さまざまなイメージング技術を使用して視覚化できますが、他の染料ほど簡単ではない場合があります。
- 感度:Blue Dextranは、BBBの軽微な障害を検出する他のマーカーほど感度が高くない場合があります。
Evans Blue (EB)
Evans Blueは血清アルブミンと強固に結合するため、BBB透過性を評価するための信頼性の高いマーカーとなります。正常な状態ではBBBを通過できませんが、バリアが損なわれると色素-アルブミン複合体が脳組織に漏出します。
特長
- 高感度:EBは血清アルブミンと強固に結合するため、わずかなBBB障害でも高感度で検出できます。
- イメージングが容易: 色素の強い色と蛍光により、可視化と定量化が容易です。
制限
- 非特異的結合:EBは他のタンパク質や組織と非特異的に結合することがあり、偽陽性を引き起こす可能性があります。
- 毒性:EBには潜在的な毒性問題があり、特定のin vivo試験での使用が制限される可能性があります。