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技術情報:タンパク質電気泳動について(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)


1.タンパク質の電荷状態とpH

タンパク質分子を構成するアミノ酸は両性分子でpH環境によりその電荷が変化します。その変化の度合いは各アミノ酸毎に異なり、酸性側ではプラスに、アルカリ性側ではマイナスに荷電します。

タンパク質分子はその構成アミノ酸により荷電状態の変化に固有の特徴を持ちますが、ほとんどのタンパク質では酸性、中性付近ではプラス、アルカリ性側ではマイナスに荷電します。

またタンパク質自身は立体的な3次元構造を取るため、折りたたまれ方により分子量がそのまま分子のサイズを反映しません。

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図.1 pHによるタンパク質の電荷状態の変化

 

2.ポリアクリルアミドゲルの種類

電気泳動の種類
  ポリアクリルアミドゲル電気泳動
Native PAGE / Davis法
SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動
SDS-PAGE / Laemmli法
用途 立体構造・サブユニット構造を保ったままの分離を行えます。
移動度は分子量だけでなく電荷にも影響されます。
SDSにより試料を変性させ、タンパク質固有の電荷を打消し均一にするので、分子量の推定に用いることができます。
泳動用バッファー トリス-グリシン泳動バッファー(10X)を精製水で10倍希釈して使用します。 SDS-トリス-グリシン泳動バッファー(10X)を精製水で10倍希釈して使用します。
注!泳動バッファーは絶対に再使用しないでください。
泳動用サンプル 試料(タンパク質)とサンプル処理液を1:1に混合したものを泳動用サンプルとします。 試料(タンパク質)とサンプル処理液を1:1に混合後、一般的な沸騰水中で5分間煮沸したものを泳動用サンプルとします。
また、S-S結合を還元して分析する場合は、β-MEやDTTの入ったサンプル処理液を使用してください。
ワンポイントアドバイス ●泳動用サンプルは絶対に加熱しないでください。
●塩濃度が高い場合はバンドが乱れることがありますので透析等によって必ず脱塩操作を行ってください。
●泳動用サンプルは10分以上煮沸しないでください。サンプルが分解されることがあります。
●塩濃度が高い場合はバンドが乱れることがありますので透析等によって必ず脱塩操作を行ってください。
●還元剤(β-メルカプトエタノールやDTT)処理したサンプルと未処理のサンプルを同時に泳動する場合は、1〜2レーン空けて泳動してください。隣同士の場合、還元剤が入っていないサンプルが還元剤の影響を受け、泳動パターンが乱れることがあります。

 

3.ポリアクリルアミドゲル電気泳動

● SDS-PAGE (SDS-Polyacrylamide gel electrophorsis)

β-メルカプトエタノールのような還元剤でS-S結合を切断したタンパク質サンプルに、マイナスの電荷を持つ界面活性剤であるSDS(sodium dodecyl sulfate)を結合させることにより、タンパク質の高次構造がほぼ完全に壊れ、一本の鎖状となります。 タンパク質1に対して約1.4のSDSが結合する(この比率は一定である)ことから、アミノ酸組成に関係なく、電荷密度が一定となります。つまり、タンパク質分子の形状に違いがなくなり、かつ、分子毎の電荷量がタンパク質の分子量に比例することになり、タンパク質の移動度はその分子量のみに依存することになります。 分子量が既知のタンパク質をマーカーとして同時に電気泳動することで、未知のタンパク質分子の分子量を推定することが可能です。

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図.2 SDS-PAGEでのサンプル処理
β-メルカプトエタノール等の還元剤により、タンパク質中のS-S結合を切断する。タンパク質重量1 gに対して約1.4 gの割合でSDSが結合する。これはアミノ酸2個につき1分子のSDSが結合する程度の量である。

● 非還元SDS-PAGE

S-S結合を還元切断せずに行うSDS-PAGEです。SDSはタンパク質分子全体に均一に結合するのではなく、極性のある部分に結合しやすく、疎水性部分にはあまり結合しないという性質があります。また、S-S結合による高次構造があると結合が阻害されます。 非還元SDS-PAGEでは、SDSの結合が高次構造の影響を受けて分子量が正確に反映されませんが、ブロッティング後にタンパク質の機能が回復する可能性があります。酵素など、泳動後に活性を測定したいサンプルを用いる場合に行います。

● Native-PAGE

サンプルを還元剤やSDSで処理せずに電気泳動を行います。タンパク質の表面電荷と高次構造の影響が大きく、分子量は測定できないものの、酵素活性が保たれる場合が多く、泳動後のゲルを酵素活性染色することで目的のバンドを検出することも可能です。

● 等電点電気泳動(Isoelectric Focusing, IEF)

タンパク質の等電点(Isoelectric point, pI)の違いをもとに分離する電気泳動の方法です。タンパク質は両性分子であり、pI以下のpHではプラスに、pI以上のpHではマイナスに荷電します。pH勾配のあるゲル中で電気泳動を行うと、タンパク質は電荷が0となる等電点まで移動して止まり、pIの位置からタンパク質が拡散することがあっても、タンパク質は直ちに荷電し元のpIの位置に戻ります。これがIEFにおける濃縮効果で、微少な荷電差を基にしたタンパク質の分離を可能にしています。IEFは特に二次元泳動の一次元目の泳動で用いられます。

● 二次元電気泳動

タンパク質の分子量と等電点の2種類の指標を用い、それをゲルの垂直方向と水平方向の二方向へ泳動することで、二次元平面上に点(スポット)としてタンパク質を分離することが可能です。 一次元目に等電点電気泳動(IEF-PAGE)、二次元目にSDS-PAGEを行う方法が一般的で、非常に多種(3000種類程度)のタンパク質を一度に分離できるため、プロテオーム解析に利用されます。

 

4.Laemmli(レムリ)法でのSDS-PAGE

現在広く行われているSDS-PAGEは、1970年にLaemmliにより報告された手法(Nature. 1970 Aug 15;227(5259):680-5)に準拠しています。使用するポリアクリルアミドゲルは濃縮ゲル(pH6.8)と分離ゲル(pH8.8)の2つの不連続バッファー系のゲルで構成され、泳動バッファーとしてTris-Glycine-SDS(pH8.3)を使用します。

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図.3 Laemmli法の不連続バッファー系

この不連続バッファー系での電気泳動では、まず濃縮ゲル中でタンパク質が濃縮され、次いで分離ゲルでタンパク質が分子量に応じて分離されます。

電気泳動開始後、pH6.8の濃縮ゲル中ではタンパク質とバッファー中のTris(25℃で約pKa 8.1)はプラスの電荷を帯びるため陰極側に移動します。泳動バッファー中のグリシンはpH6.8条件下では両性イオン化するため移動度は小さく、濃縮ゲル中ではタンパク質サンプルは移動度の大きい塩素イオンとグリシンとに挟まれた状態で泳動されます。 泳動により各ゾーンの境界部分では一時的にイオンが不足することで抵抗が大きくなり、結果タンパク質サンプルが濃縮されることとなります。

pH8.8条件下の分離ゲルに到達すると、グリシンはマイナスに荷電したイオンとなるためタンパク質よりも移動度が大きくなります。グリシンがタンパク質を追い越すことで、分子ふるい効果によりタンパク質は分子量の違いにより分離されることになります。

また電気泳動の進行状況を示すマーカーとして、ブロモフェノールブルー(bromophenol blue, BPB)が用いられます。このBPBイオンは塩素イオンに次ぐ移動度を持つため、塩素イオンに続いて泳動されます。

これらのバッファー中のイオンの挙動を利用したLaemmli法に準拠したSDS-PAGEは、現在でもなお、最も分離性能が良いとされています。

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図.4 濃縮ゲルおよび分離ゲル中のイオンの挙動

資料提供:札幌医科大学 フロンティア医学研究所病態情報学

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