SERVA HPE™ Lightning Red は、二次元電気泳動の前にタンパク質を迅速に標識できる蛍光色素で、電気泳動後の染色・洗浄を行う必要がありません。さらに、質量分析やウエスタンブロッティングなどの以降の実験を問題なく行うことが可能です。
技術情報
SERVA(SER)社 二次元電気泳動用蛍光プレラベル試薬 SERVA HPE™ Lightning Red
添加剤やpH値の影響
SERVA HPE™ Lightning Red は、両性担体(キャリアアンフォライト/IPG buffer)、ジチオスレイトール(DTT)/ジチオエリスリトール(DTE)のような還元剤などの、サンプル可溶化やタンパク質抽出に一般的に使用される添加剤の影響を受けません。
弱アルカリ性となっており、pHを合わせるために滴定を行う必要がありません。リジンの標識に使用される他の蛍光色素が、上述の添加剤やタンパク質サンプルのpH条件に影響を受けることとは対照的です。
SERVA HPE™ Lightning Red の特長
- 直接検出
- 電気泳動後の染色・洗浄が不必要
- 非常に高感度 <100pg タンパク質/スポット
- 高い直線性・広い検出範囲 >104
- 過剰染色の影響なし
- 二次元電気泳動後のMS解析にも影響なし
- ゲルを画像化した後にウェスタンブロッティングが可能
図1 プレラベルした B. subtilis ライセート 50μg を、SERVA IPG BlueStrip (18 cm, pH 4-7 品番: 43013) で分離し、続いて SERVA 2D HPE Large Gel 12.5 % ゲル(品番: 43310)で SDS-PAGE により分離した。
写真のご提供: Knut Büttner, Institute for Microbiology, University of Greifswald, Germany
簡単な手順
標識の手順は簡単・迅速で、精製や遠心分離などの操作は必要ありません。また、電気泳動終了後、検出のために特別な処理を行う必要もありません。
電気泳動移動度への影響
各色素分子は一つの正電荷を持ち、標識タンパク質の等電点は非標識タンパク質と変わりません。二次元目の SDS-PAGE において移動度はほとんどシフトせず、標識タンパク質と非標識タンパク質の移動度に差は見られません。その理由は、質量付加が分子当たりわずか 288 Da と小さく、色素の疎水性が低いからです。したがって、標識タンパク質と非標識タンパク質を混合して二次元電気泳動を行っても、分離パターンに差は検出されません。
SERVA HPE™ Lightning Red と銀染色の比較
従来、高感度な検出が必要な際には、二次元電気泳動ゲルに銀染色を行っていました。しかし、銀染色のスポットは非常に早く飽和することから、スポットの定量化は不可能です。同じゲルを直接比較すると(図2参照)、銀染色では非常に強度の高いスポットが多数検出されますが、蛍光標識では定量化が可能なスポットがより多く検出されます。
図2 プレラベルした E. coli ライセート 20μg を、SERVA IPG BlueStrip (7cm, pH 5-8 品番: 43006) で分離し、続いて SERVAGel™ TG PRiME™ 14 % 垂直型ミニゲル(品番: 43271)で SDS-PAGE により分離した。
A: Typhoon イメージアナライザーを用いた蛍光スキャン画像
B: SERVA HPE™ 銀染色キット(品番: 43395)を使用して後から染色(染色過剰、多くのスポットが飽和している)
原理
蛍光色素は、一級アミノ基(例: タンパク質やペプチドのリジン残基のε-アミノ基)に結合します。標準的には、タンパク質 1μg を 80 pmol SERVA HPE™ Lightning Red で標識します。 検出感度の向上のために、タンパク質に対する色素の量を増やしても、ネガティブな影響はありません。標識タンパク質の検出には蛍光イメージャー(カメラ/スキャナー)を使用します(励起波長: 約 530 nm、蛍光波長: 610 nm[バンド幅: 30 nm])。 結合した色素は、最大 0.60 の量子収率(QY *)を示し、スポットあたりタンパク質 100 pg まで検出が可能です。
質量分析用に、スポットをゲルからピッキングしたい場合は、ゲルを酢酸(またはクエン酸)とアルコールで固定することが可能で、少なくとも 10日間はシグナル強度が保たれます。必要であれば、様々な方法で(CBB、銀染色など)、ゲルを後から染色することができます。
* 蛍光量子収率は、蛍光分子に吸収された光子数と、蛍光によって放出された光子数の比として定義されます。
標識の手順
- SERVA HPE™ Lightning Red 250μg を、水を含まないジメチルホルムアミド(DMF) 25μL に溶解します。調製した蛍光色素溶液は、-20℃で少なくとも6ヶ月間安定です。
- タンパク質を変性溶解バッファーで懸濁します。
- 通常は、タンパク質 1μg を、80pmol SERVA HPE™ Lightning Red で標識します。
(例: タンパク質溶液 30μL (10μg タンパク質/μL 溶解バッファー)に、蛍光色素溶液 1μL を加えます。) - 優しく混合し、バイアルを 0℃で 15分間インキュベートします。
- 膨潤バッファーにサンプルを混ぜる、もしくは、サンプルカップを使用して、標識タンパク質溶液を IPG ストリップ にアプライします。
商品は「研究用試薬」です。人や動物の医療用・臨床診断用・食品用としては
使用しないように、十分ご注意ください。