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技術情報

記事ID : 36543

Biotium(BTI)社 アミンへのスクシンイミジルエステル標識(タンパク質へのラベリング)プロトコル


スクシンイミジルエステル(NHSエステルもしくはSE)基を官能基荷物色素は、タンパク質の第一級アミン(一般的にはリジン残基)と共有結合し、安定的なアミド結合を形成します。これは蛍光標識抗体のコンジュゲートを作製する一般的な方法として用いられています。以下のプロトコルは、重炭酸ソーダバッファー中でIgG抗体を標識する一般的な方法です。本プロトコルは、その他の色素やビオチンSEにも対応しています。

※本プロトコルは IgM抗体への標識方法としては推奨しておりません(IgM抗体が重炭酸ソーダバッファー中で不安定のため)。アミン基への結合はタンパク質の機能や抗体の結合親和力に影響する可能性があります。

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必要な試薬

  • IgG
  • CF® Dye Succinimidyl Ester
  • 無水DMSO
  • 1 M 炭酸水素ナトリウム(NaHCO3), pH 8.3
  • 1 M リジン(オプション)
  • Sephadex®(表1参照)または Ultrafiltration Vials(例 Biotium社 品番:22004)
  • PBSバッファー
  • アジ化ナトリウム(NaN3)
  • BSA

ワークフロー

プロトコール

1.抗体溶液の調製

0.1 M 炭酸水素ナトリウムバッファー(pH~8.3)に 2.5 mg/mLとなるよう抗体を溶かします。すでにPBSのようなバッファーに溶解されている場合には、最終濃度が 0.1 Mとなるように、1/10量の 1 M 炭酸水素ナトリウムバッファー(pH~8.3)を加えて調整してください。

  • アミノ酸やTris、BSA、ゼラチンなどのアミン含有の安定化剤が含まれていないIgGを使用してください。含有している場合、CF® と反応します。Trisやアミノ酸のような小分子は、1xPBS を用いて透析やバッファー置換用のUltrafiltration vialを用いることで抗体から除去できます。ただし、BSAやゼラチンのようなタンパク質は、透析やultrafiltrationでは取り除けないため、これらのタンパク質が含有している場合には、標識前に抗体を精製して除去する必要があります。
  • 標識反応後は、アジ化ナトリウムの含有は影響しません。
  • 2.5 mg/mL のタンパク質濃度の場合、標識効率(抗体と反応した色素の割合)は一般的に35%程度です。2.5 mg/mL 以下の濃度も標識に適していますが、標識効率は低くなり、1 mg/mL では20~30%程度になります。5 mg/mL 以上の高い濃度では、より高い標識効率が得られます。しかしながら、使用するバッファーやタンパク質純度のばらつきにより、実際の実験条件によって標識効率は変動します。IgG溶液の濃度が薄すぎる場合、10 kDaカットオフの ultrafiltration(例:10 K MWCO)を用いて濃縮できます。

2.CF® 色素のストック溶液の調製

CF® SEのバイアルを室温に戻し、10 mM のCF®色素溶液を調製します。
その際に、
・1 µmoL 色素の場合には、100 µL 無水DMSO
・0.25 µmoL の場合には、 25 µL 無水DMSO
も添加します。
色素が完全に溶解するまで短時間ボルテックスし、その後遠心を行い色素を沈殿させます。

  • 1 µmoL の色素に対して、十分なIgG量は8~15 mg、0.25 µmoL の色素に対しては2~3 mg です。
  • 反応物質の希釈率が高いと標識効率が下がるため、低濃度タンパク質溶液を使用する場合には、色素/タンパク質比を高くする必要があります。各CF®の最適な標識度合やDOL値( 一つのタンパク質を標識する色素の数DOL)は、以下の表1をご覧ください。 DOL値は最適範囲の前後でも、良好な結果が得られます。
  • 少量のタンパク質溶液を用いて標識する場合、正確なピペッティングを行うために色素のストック溶液を更に希釈する必要があります。
  • 未使用のストック溶液は、多湿を避けて-20℃で遮光保存してください。無水DMSOを使用して溶液を調製した場合、色素は少なくとも一カ月程度安定です。
  • 色素のストック溶液は、dH2O または水性バッファーを使用して調製することも可能です。ただし、時間経過によって色素が加水分解してしまうため、水性ストック溶液は、標識反応の直前に都度調製してください。余った溶液を保存することはできません。

3.標識反応(ラベリング)

15~25 µL の 10 mM 色素ストック溶液を各抗体溶液 (1 mL) に添加します。
タンパク質溶液を攪拌またはボルテックスしながら、色素ストック溶液を滴下して加えていきます。室温、遮光状態で1時間、反応液を攪拌または揺り動かし続けます。

  • 反応液量は、色素/タンパク質のモル比 9:1~15:1に対応します。
  • 標識反応中に、Sephadex® カラム(10mm x 300 mm) を 1xPBSバッファーで平衡化します。各CF® 色素に最適なSephadex® mediumは、表1からご覧ください。

4.標識抗体の精製(標識タンパクからフリー色素分離)

反応液をカラムにロードし、1x PBSで溶出します。カラムから最初に溶出されて検出されるバンドが抗体コンジュゲートです。

  • 小スケールでのラベリングの場合、過剰な希釈を防ぐためにUltrafiltration vialを用いることでフリー色素の除去することができます。IgGでは、10K MWCOを使用しますが、その他の分子量のタンパク質では、別のMWCOが必要となる場合があります。
  • ラベリング後すぐにフリー色素の除去を行わない場合には、50 uL の1 M リジンを加えて反応を停止することができます。

5. 標識率の算出 (DOL)

標識度 (DOL) は、各抗体分子に結合した色素分子の平均数です。溶出した標識抗体溶液の280 nmでの吸光度と、ラベリングに使用した色素の最大吸収波長での値を測定します。各色素のDOLの最適範囲は表1に記載の通りですが、最適範囲の前後でも、良好な結果が得られます。

  • カラムから溶出したタンパク質溶液は、吸光度を測定するには濃度が高すぎる可能性があるため、〜0.1 mg/mL程度に希釈する必要があります。必要とされる希釈倍率(「希釈係数」)は、標識反応に用いた抗体量(例:5mg )と、カラムから回収されたタンパク質溶液のトータル量から推定します。

5a. タンパク質濃度の決定

標識抗体の濃度は以下の計算式から算出します。
[コンジュゲート] = {[A280 − (Amax x Cf)]/1.4} x 希釈係数

コンジュゲート: カラムから溶出された標識抗体のmg/mL単位の濃度。
希釈係数: スペクトル測定に使用する希釈倍率。
A280 および Amax: 標識抗体の280 nmでの吸光度および最大吸収波長での値。
Cf: 吸光度補正係
1.4: mL/mg 単位のIgGの吸光係数
各CF® 色素のAmax および補正係数:表1を参照。

  • IgG以外のタンパク質を標識する場合、使用するタンパク質の吸光係数を用いて計算してください。
  • CF® 色素以外の色素の場合、使用する色素のAmaxおよび補正係数を用いて計算してください。

5b. 標識度 (DOL) の算出

DOLは以下の計算式から算出します。
DOL = (Amax x Mwt x 希釈係数)/(ε x [コンジュゲート])

希釈係数 および コンジュゲート: 上記5aを参照。
Mwt: IgGの分子量(〜150,00)
ε: 色素のモル吸光係数(表1参照)

  • IgG以外のタンパク質を標識する場合は、使用するタンパク質の分子量を使用し、CF® 以外の色素を標識に用いる場合、その色素の吸光係数を使用します。

6.標識抗体の保管と取り扱い

長期保存の場合、変性や微生物の増殖を防ぐために 5〜10 mg/mL BSA と0.01〜0.03% アジ化ナトリウムをコンジュゲート溶液に添加すること推奨しています。コンジュゲートは4℃にて遮光保存する必要があります。グリセロールを最終濃度50%まで添加した場合は、-20℃保存が可能です。上記方法で保存した場合、抗体コンジュゲートは1年以上安定です。

表1. CF® 色素のテクニカルデータ
色素 Abs/Em (nm) Sephadex®
media
Amax
(nm)
Cf
(protein)
ε 最適 DOL
(IgG)
CF®350 347/448 G-25 347 0.14 18,000 4-6
CF®405S 404/431 G-25 404 0.7 33,000 5-10
CF®405M 408/452 G-25 408 0.13 41,000 4-6
CF®405L 395/545 G-25 395 0.5 24,000 8-12
CF®430 426/498 G-25 426 0.044 40,000 5-8
CF®440 440/515 G-25 440 0.044 40,000 5-8
CF®450 405/460 G-25 450 0.2 40,000 5-8
CF®488A 490/515 G-25 490 0.1 70,000 7-9
CF®514 516/548 G-25 516 0.073 105,000 5-8
CF®532 527/558 G-25 527 0.06 96,000 4-7
CF®543 541/560 G-25 541 0.095 100,000 4-7
CF®555 555/565 G-25 555 0.08 150,000 4-5, 3-6 ok
CF®568 562/583 G-25 562 0.08 100,000 5-6
CF®570 568/591 G-25 568 0.1 150,000 5-6
CF®583 583/606 G-25 583 0.223 150,000 5-6
CF®594 593/614 G-25 593 0.08 115,000 4-7
CF®620R 617/639 G-25 617 0.45 115,000 5-6
CF®633 630/650 G-25 630 0.48 100,000 4-7
CF®640R 642/662 G-50 642 0.37 105,000 4-7
CF®647 650/665 G-25 650 0.03 240,000 4-5, 3-6 ok
CF®660C 667/685 G-75 667 0.08 200,000 3-6, 2-3 ok
CF®660R 663/682 G-25 663 0.51 100,000 4-7
CF®680 681/698 G-75 681 0.09 210,000 3-5, 2-3 ok
CF®680R 680/701 G-25 680 0.32 140,000 5-6
CF®750 755/777 G-75 755 0.03 250,000 3-5, 2-3 ok
CF®770 770/797 G-75 770 0.06 220,000 3-5, 2-3 ok
CF®790 784/806 G-75 784 0.07 210,000 3-5
CF®800 797/816 G-75 797 0.08 210,000 3-5

※Sephadexは GEヘルスケア社の登録商標です

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