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技術情報

記事ID : 5191

エル・エス・エル(LSL)社 免疫組織染色における切片の処理法

メーカー名:

LSL社製抗血清は凍結切片及びパラフィン包理切片などに使用できますが、実験を開始する前に次の内容を検討ください。また、特異性の検討は免疫組織染色、ELISA及びWestern blottingなどで行っています。

I. 凍結切片の場合

1.組織の凍結

試料はできるだけ新鮮なうちに適当な大きさに切り出し、液体窒素などで組織を急速に冷凍します。試料が小さい場合は凍結包理剤に埋め込みアルミホイルで包んで凍結します。(注1)また、ホルマリンなどで固定し、ショ糖で置換した後に急速凍結した試料も凍結切片の作成が可能です。

2.薄切切片の作成

クリオスタットで切片を作成し(-20℃程度)、スライドグラスにのせます。次にスライドグラスの裏側を指先で暖め切片全体をスライドグラスに良く張り付けます。その時に組織が崩れないように注意して下さい。

3.試料の固定

3%ホルマリン(室温)、4℃以下のアセトン、エチルアルコールで数分間固定します。水溶性物質を目的とする場合は、ホルマリンの使用はできるだけ避けて 下さい。次に1〜2分間室温に放置しアセトンなどを蒸発除去し、PBSで洗浄します。3%ホルマリンで固定した時は数回PBSで洗浄してホルマリンを除き ます。固定後に作成した凍結切片では固定は不要です。

4.試料の前処理

コラーゲンなどの細胞外マトリックスは固体の加齢と共に抗体との反応性が低下します。必要に応じてタンパク質・多糖類などの分解酵素を用いると反応性が向上することがあります。詳細はII.2.を参照してください。通常の免疫染色の行程に進む前に必ず非特異的な反応を数%濃度のBSA、正常ヤギ血清and/orカゼインなどでブロッキングして下さい。(注2

注1)組織塊を-80℃以下で保存すれば抗原性は保持されますが凍結融解、-40℃以上での保存、固定前の乾燥により抗体との反応性が低下します。また、薄切切 片の状態で保存すると条件に関係なく抗原性は低下します。切片作成後は速やかに処理して下さい。

II. パラフィン包理切片の場合

試料を4%パラホルムアルデヒドまたは3%ホルマリンなどで固定し、パラフィン包理した場合は通常の方法では良好な染色像を得られない事があります。その場合は以下のような酵素により結果が改善される事があります。特にコラーゲンを染色する時や合成ペプチド(MAP(multiple antigen peptide))などを抗原とした抗血清を用いる時は有効です。また、切片の電子レンジ処理による抗原の賦活化も有効との報告があります(文献参照)。

1.試料の洗浄

脱パラフィンした切片をPBSで洗浄します。

2.酵素処理

0.1%ペプシン(0.5M酢酸)、0.4%ペプシン(0.01N HCl)、1%トリプシン(PBS)又はHyaluronidase 25mg/ml PBSなどを数滴滴下し、室温にて20〜60分間反応させます。(注3

3.ブロッキング

PBSで洗浄後非特異的な反応を防ぐ為に数%濃度のカゼイン、BSAでブロッキングをしてから通常の免疫染色行程に進みます。(注2

注2)ブロッキング剤として1〜2%カゼイン、正常ヤギ血清、BSA and/or ゼラチンを用いますがコラーゲンを染色する時にはゼラチンは用いないで下さい。

注3)酸素の濃度、反応温度や時間はあくまでも目安です。反応が進みすぎると組織が崩壊します。充分注意して下さい。また、骨組織及び軟骨組織を染色する場合はヒアルロニターゼ処理で染色性が向上します。

III. 免疫染色に関する一般的注意

免疫染色では使用する第一・第二抗体の力価、特異性の再確認後反応時間、反応温度の検討が必要です。特に、抗体による染色性を向上させるにはあらかじめ抗体の最適希釈率、反応温度・時間を決める予備染色を行うことをお勧めします。

LSL シリーズの抗血清の場合はすでに特異性については検討済ですが、力価は反応条件によって異なりますので性状表に記載された希釈率を中心に上下3段階の希釈 率を設定し、染色性を確認のうえ第二抗体を含めた最適希釈率を決めると確実です。又、一般に高い希釈率で低温にて長時間反応を行うと良い染色像が得られま す。なお、HE染色などの一般的な染色をしたコントロール切片を作成し、免疫染色像と比較検討する事も重要です。

[参考書]
渡辺・中根 酵素抗体法(改訂四版、名倉宏・長村義之・堤寛編集)学際企画

[酵素等による切片の前処理法]
Y.Sasano et al(2000) Expression of major bone extracellular matrix proteins during enbryonic osteogenesis in rat mandibles. Anat Embryol,202,31-37

Y.Kubo, F.Nakamura et al(2000) Organization of extracellular matrix components during diffrentiation of adipocytes in long-term culture. In Vitro Cell.Dev.Biol.-Animal,36,38-44

I.Mizoguchi et al(1990) An immunohistochemical study of localization of type I and type II collagens in mandibular cartilage compared with tibial growth plate. Histochemistry,93,593-599

[電子レンジによる切片の前処理法]
SR.Sompuram et al(2004) A molecular mechanism of formalin fixation and antigen retrival. Am.J.Clin. Pathol,121,190-199

T.Coldmann et al(2003) What’s cooking? detection of important biomarkers in HOPE-fixed, paraffin-embedded tissues eliminates the need for antigen retrieval. Am J Pathol,163,2638-40

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