-ファロイジンとは
ファロイジンは、有毒なタマゴテングダケ(Amanita phalloides)から単離された二環式ヘプタペプチドです。モノマー状G-アクチンよりもフィラメント状アクチン(F-アクチン)間の溝に対して高い結合親和性を持つので、組織切片、細胞培養、または無細胞標本におけるF-アクチンの可視化および定量に広く使用されています。アクチン特異的抗体と比較して、ファロイジンの非特異的結合はごくわずかであるため、細胞イメージングの際には、最小限のバックグラウンドと高いコントラストが得られます。ファロイジンはF-アクチンに結合すると、モノマーとフィラメントの平衡をフィラメント側にシフトさせ、ATP加水分解を阻害します。この相互作用により、サブユニットの解離を防ぐことでアクチンフィラメントを安定化させ、臨界濃度を低下させることでアクチンの重合を促進します。
-ファロイジン結合体とは
ファロイジン結合体は、あらゆる種類およびサイズのアクチンフィラメントに対して同様の親和性を示し、筋細胞および非筋細胞の両方において、1:1(ファロトキシン:アクチン)の化学量論比で結合します。抗体と比較して、ファロイジン誘導体は小型(< 2 kDa)であり、ファロイジン結合フィラメントはフィラメントの機能特性を阻害しません。また、小型であるため、F-アクチンをより高密度に標識することが可能です。そのため、高解像度で画像化する際に、より詳細な染色が得られます。さらに、アクチンは進化的に保存されているため、ファロイジン誘導体の結合特性は、幅広い動物細胞および植物細胞の染色に利用できます。
ファロイジン iFluor ®コンジュゲート
図. ファロイジン-iFluor®コンジュゲートを
用いて可視化したアクチンフィラメント
F-アクチン:ファロイジン iFluor® 488
核: Nuclear Blue™ DCS
リソソーム: LysoBrite ™ Red
でそれぞれ染色した。
AAT Bioquest社で開発された、ファロイジン iFluor ®コンジュゲートは、ナノモル濃度で使用されることで、ホルムアルデヒド固定・透過処理された組織切片、細胞培養物、または無細胞実験におけるF-アクチンの標識、同定、および定量化など、多くのアクチン関連アッセイにご活用いただけます。
また、従来のフルオレセインイソチオシアネート(FITC)およびローダミンコンジュゲートと比較して、より優れた明るさと光安定性を持つF-アクチン染色が可能です。