医薬品の開発研究にも Betulins

ベツリンとベツリンの誘導体は、ルパン型の五員環トリテルペノイドで、200以上の植物で二次代謝産物として発生する天然物です。ベツリン酸（BA）は、C-28で酸化されるベツリンの誘導体です。

図1. ルパン型五員環のコア構造とベツリン
A) ルパン型五員環のコア構造、B) ベツリン、C) ベツリン酸

ベツリン酸は、さまざまなタイプの抗がん効果に関連しています。その細胞傷害活性の正確なメカニズムはまだ解明されていませんが、癌細胞におけるプログラム細胞死につながる可能性のあるいくつかの経路が特定されてきています。ベツリン酸（BA）は、ミトコンドリア膜透過化、またはNF-ΚB活性の調節などにより、アポトーシス（タイプIプログラム細胞死）を誘発することが示されています。さらに、ベツリン酸は、PI3K-AKT-mTOR経路を阻害することなどで、特定のタイプのがん細胞のオートファジー（タイプIIプログラム細胞死）を促進することができます。どの経路が最終的にプログラム細胞死に至るかは、がんと細胞の種類に依存すると考えられています。ベツリン酸は、血管新生と転移に不可欠な特定のマトリックスメタロプロテイナーゼを下方調整および阻害し、それによって癌の進行を遅らせることも報告されています。最後に、ベツリン酸は化学増感効果があると考えられており、これは化学療法に対する癌細胞の耐性を克服するために重要かもしれません。驚くべきことに、ベツリンとベツリン酸は正常細胞に影響を与えないようです。これはさまざまな細胞株で実証されています。

さらに、ベツリンは抗菌性、抗ウイルス性、抗マラリア性、抗炎症性、駆虫性、抗線維性、抗侵害受容性、免疫調節性および抗不安薬の特性を示すことが示されています。これらの特性により、ベツリン、ベツリン酸またはそれらの誘導体を含むさまざまな製剤が臨床試験に入っています。一例は、ベツリン酸の誘導体で抗HIV薬であるベビリマットです。したがって、ベツリンは医薬品の研究開発にとって興味深い化合物です。親油性のため、天然ベツリンの水溶性と生物学的利用能はかなり低くなります。その結果、水溶性と薬物動態を向上させる多くの誘導体が開発されました。他の修飾により、標的リガンドもしくは他の部分の選択的な付着が可能になります。

Iris Biotech社は現在、天然のベツリンとベツリン酸のほか、水溶性を高めたり、または位置選択的な機能化を可能にするさまざまな誘導体を提供しています。これまで文献に記載されていない完全に新規な化合物もあります。

図2. ベツリン酸は複数の経路でプログラム細胞死を促進する可能性がある

図3. 標的薬物デリバイーのための担体の一般的な組成

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