細胞収縮とは?
創傷治癒は上皮化、結合組織の堆積、収縮の3つの過程で構成されています。
収縮過程は、筋線維芽細胞と呼ばれる固有の線維芽細胞によって仲介されていると考えられています。3次元コラーゲンゲルは線維芽細胞の収縮、インテグリンのシグナル伝達、細胞アポトーシスや細胞骨格の再構築に関する研究においても使用されています。3次元マトリックス接着は構造や局在、機能の面で2次元での接着とは異なるため、3次元の細胞―マトリックス間での相互作用は生物学的により関連が高いと考えられます。
線維芽細胞によるコラーゲンマトリックスの収縮を制御するシグナル伝達のメカニズムは、収縮が始まる際に細胞に機械的負荷があるかどうか、または収縮を開始する際の成長因子に依存します。例として、血小板由来成長因子(PDGF)ではなくリゾホスファチジン酸(LPA)によって線維芽細胞を刺激すると、ストレスマトリックス内で非常に強い力が発生します。一方で浮遊性マトリックスにおける収縮は、LPAとPDGFで同程度です。
生体内における線維芽細胞のコラーゲンマトリックスの再生能を研究するための培養モデルには、いくつか種類があります。接着モデルでは収縮が起こる間、細胞を含む重合コラーゲンマトリックスはディッシュに接着した状態です。機械的負荷が収縮の間に大きくなり、細胞ストレスファイバーが形成されます。二段階(Two-step)モデルでは、接着マトリックスの収縮による機械的負荷を与えた後、マトリックスを遊離して機械的負荷をなくすことでより収縮を発達させます。浮遊性マトリックス収縮モデルでは、細胞を含むフレッシュな重合済コラーゲンマトリックスがディッシュ表面から遊離し培養用培地中を漂っている状態になります。それにより外部からの機械的負荷がない環境で収縮が起こるため、細胞内にストレスファイバーが形成されることはありません。