生細胞(接着細胞、懸濁細胞)中の低酸素及び酸化ストレスレベルを、蛍光顕微鏡又はフローサイトメトリーを用いて機能的に検出するキットです。

低酸素と酸化ストレスを同時測定 ROS-ID® 低酸素/酸化ストレス検出キット
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背景
酸素圧の減少を検出して応答する細胞の能力は、酸素代謝及び組織の恒常性を維持するのに非常に重要です。低酸素(hypoxia;代謝に必要な量に対して酸素が欠乏)及び再酸素負荷(reoxygenation;低酸素組織への酸素の再導入)は、ヒトの癌、心臓病、虚血、血管病などの多種多様の重要な臨床症状で発生しており、病態生理学に非常に重要です。低酸素細胞は、放射線治療が困難で、化学療法の薬剤に耐性があることから、固形腫瘍中の低酸素細胞のパーセンテージと、癌治療予後との間には相関関係があります。結果として、腫瘍中の低酸素細胞分画を検出・分析することで、癌の状況、予後、特定の治療オプションについて、貴重な情報を得ることができます。低酸素に対する細胞応答の多くは、ミトコンドリア複合体IIIでの反応性酸素種の産出により媒介されていることが知られていますが、低酸素状態で、サイトゾル中の酸化体濃度が増加するメカニズムはまだわかっておらず、細胞内の酸素供給の維持の重要性から、低酸素シグナリング分子としての反応性酸素種(ROS)の役割についての更なる研究が必要とされています。
使用目的
生細胞(接着細胞、懸濁細胞)中の低酸素及び酸化ストレスレベルを、蛍光顕微鏡又はフローサイトメトリーを用いて機能的に検出するキットです。
キットには低酸素用検出用(赤)と、酸化ストレスレベル検出用(緑)の蛍光プローブが含まれます。低酸素検出試薬(赤)は、非蛍光(もしくは弱い蛍光)の、ニトロ(NO2)基を含む芳香族化合物です。低酸素状態の細胞に存在するニトロ還元酵素活性により、ニトロ基が、一連の化学的段階を経て、ヒドロキシルアミン(NHOH)、アミノ基(NH2)へと変換され、これによって元の分子が分解して蛍光プローブを放出します。
酸化ストレス検出試薬(緑)は、広範囲の反応種(過酸化水素、過酸化亜硝酸、ヒドロキシラジカルなど)と直接反応する非蛍光の細胞透過性ROS検出色素で、様々なROS/RNSの細胞産物を示す緑色の蛍光物質を産出します。このプローブは、スーパーオキシド、反応性塩素種、反応性臭素種には比較的感度が低いため、注意してください。
染色後、蛍光産物は、広視野蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡の標準的なフィルター(フルオレセイン(490/525nm)及びテキサスレッド(596/670nm))で観察できます。また、フローサイトメーターの青色(488nm)レーザーで測定することも可能です。
特長
- リアルタイムで酸化ストレスから低酸素状態を特異的に区別
- 生細胞研究で、高い感度・特異性・正確性
- 接着細胞、懸濁細胞に適用
- ROS、低酸素誘導剤コントロールも添付
構成内容
- 低酸素検出試薬
- 酸化ストレス検出試薬
- 低酸素誘導剤(デフェロキサミン、DFO)
- ROS誘導剤(ピオシアニン)
測定データ
図1 低酸素検出試薬(右)及び酸化ストレス検出試薬(左)の吸収/放出スペクトル
それぞれ580nm/595nm、504/524nmにピークが見られた。色素は488nmのアルゴンイオンレーザーで励起し、FL3チャネル(低酸素検出)及びFL1チャネル(酸化ストレス検出)で検出が可能。
図2
HeLa細胞顕微鏡スライドに播種し、翌日DFO(低酸素の誘導剤)及びピオシアニン(酸化ストレス誘導剤)で処理(37℃、4時間)した。処理後、スライドをPBSで洗浄し、Olympus BX-51蛍光顕微鏡で観察した。
図3 培養HeLa細胞・HL-60細胞における低酸素及び酸化ストレスの検出
細胞を各薬剤で処理した後、染色し、フローサイトメトリーで分析した。図中の数値は、各四半部の細胞の割合を示す。
テックノート
よくある質問 Q&A(一部抜粋)
ROS-ID® 低酸素/酸化ストレス検出キット (品番:ENZ-51042) はマイクロプレートアッセイでは保証していません。このキットは蛍光顕微鏡とフローサイトメトリーの実験でのみ検証しています。
細胞を95%窒素で増殖させ、 塩化コバルトもしくはデフェロキサミン(DFO)で低酸素を誘発し、測定前まで95%窒素、5% CO2で維持します。
遮光してサンプルを保存すれば、数時間蛍光を維持することができます。数時間後にはバックグラウンドが高くなり使用できなくなります。
色素の性質上、細胞を固定することはできません。
低酸素検出試薬は比較的安定で-20℃で一年間保存できます。凍結乾燥された酸化ストレス検出試薬は、DMFに溶解して-20℃で比較的安定です。DMFに溶解後は酸素を除去するために、アルゴンもしくは窒素を充填することが重要です。この条件化で酸素が完全に置換されると、検出試薬はDMF中で1カ月安定です。安安定性試験によってこのキットは少なくても1年間は安定であることが示されています。
Enzo社では色素の半減期を同定していませんが、どちらの色素も長期間光に曝されていると褪色します。緑色の酸化ストレス検出試薬はサンプルが長期間経過すると蛍光強度が増加し続け、バックグラウンドが高くなります。
ROS-ID® 低酸素 / 酸化ストレス検出キット (品番:ENZ-51042) は生細胞中で機能的かつリアルタイムでの検出用に作られています。このキットは浮遊細胞、接着細胞、3D細胞モデルでお使いいただけます。組織ホモジネートもしくは細胞ライセートはこのキットにはご使用いただけません。
下記よりそのほかのFAQもご覧いただけます。
ROS-ID® 低酸素/酸化ストレス検出キット
品名 | メーカー | 品番 | 包装 | 希望販売価格 |
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ROS-ID(R) Hypoxia/Oxidative stress detection kit![]() |
ENZ | ENZ-51042-0125 | 125 TEST |
¥32,000 |
ROS-ID(R) Hypoxia/Oxidative stress detection kit![]() |
ENZ | ENZ-51042-K500 | 1 KIT [500 TEST] |
¥105,000 |
商品は「研究用試薬」です。人や動物の医療用・臨床診断用・食品用としては使用しないように、十分ご注意ください。
※ 表示価格について
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