30年以上前に、マウス乳癌ウイルス(MMTV)の病理に関係している Lint1 癌原遺伝子として Wnt 遺伝子が発見されてから、Wnt の発現とシグナル伝達は、胚発生、細胞増殖、骨・グルコース・脂質の代謝などを調節する重要な構成因子であることが同定されてきました。Wnt の発現、表面レセプター、シグナルパートナー(β-カテニン、GSK-3βなど)および Wnt が調節する一連の遺伝子に混乱が生じると、臨床的に関連する様々な病状が現れることが知られています(癌、骨粗鬆症、心血管疾患、糖尿病、神経変性など)。

シグナルの異常を補償するために、サーモスタットのダイアルのように、Wnt シグナルを上下に調節させるという概念は、治療法を開発するための魅力的なアプローチです。そのような治療法の計画及び実行は、薬剤及び投与計画を注意深く合理化し、Wnt シグナルが正常の生理点を超えて望ましくない副作用を引き起こさないよう、適正な範囲で活性化又は阻害させる必要があります。