レシオ測定でのカルシウム検出に！ 蛍光カルシウム指示薬 (レシオメトリック型)

レシオメトリック型カルシウム指示薬のうち、Fura-2 と Indo-1 が最も一般的に使用されています。BTC もまた、レシオメトリック型カルシウム指示薬ですが、カルシウムへの親和性が低いことから高カルシウムレベル検出においてのみ使用できます。近年では、カリウムチャネルのモニターに BTC が使われることが多くなりました。これは、BTC がカリウムチャネルを選択的に通過するタリウムイオンに結合した際の蛍光促進応答が優れているためです。

Fura-2 は遊離細胞内カルシウムに結合するレシオメトリック型蛍光色素です。この色素はカルシウム応答イメージングにはじめて広範に使用されて以来、未だに非常に人気のある色素です。Fura-2 は 340 nm と 380 nm で励起し、それらの波長における蛍光比率は細胞内カルシウム量と直接比例します。カルシウムの存在如何を問わず、Fura-2 は 510 nm で蛍光します。比率が利用できるため、可変的な色素濃度や細胞数といった交絡変数が自動的に帳消しになるため、Fura-2はカルシウムレベルの定量を行う上で最も評価されているツールの一つといえます。Fura-2は、蛍光波長より励起波長を変える方が実用的なレシオイメージング顕微鏡でよく使われます。

図.1 0 - 39 µM 遊離Ca²⁺存在下における Fura-2 の蛍光励起スペクトル

Fura-2 は励起の比率計測が可能なカルシウム指示薬として好まれよく使用されてきましたが、Fluo-8® やCal-520 といった単一波長カルシウム試薬に比べて感度が低いことから、制限もあります。AAT Bioquest社では、近年 Fura-2 のカルシウム応答性を改善した Fura-8™ を開発しました。図2と図3に示した通り、Fura-8™ AM は Fura-2 AM に比べてカルシウムへの感受性が高いことがわかります。さらに、Fura-8™ の蛍光波長は長波長側 (Em = 525 nm) に移行しています。Fura-8™ は、405 nm における励起に優れ、バイオレットレーザーラインと完全に一致することから細胞内カルシウムのフローサイトメトリー分析にも使用できると想定されます。

Fura-8™の特色

• Fura-2 と同一のカルシウム応答性
• 赤色にシフトした二重励起波長 (354 nm/415 nm)
• フローサイトメトリーアプリケーションに適した 405 nm での良好な励起
• 一般的なフィルターセットに対応
• シグナル/バックグラウンド比率が Fura-2 より高い

図.2 0 - 39 µM 遊離Ca²⁺ 存在下における Fura-8™ の蛍光励起スペクトル

図.3 Fura-2 AM もしくは Fura-8™ AM による、ATP刺激した CHO-K1細胞の細胞内カルシウム応答 (蛍光プレートリーダー解析)
CHO-K1細胞の ATP投与量に応じた細胞内カルシウム応答を Fura-2 AM (青色、品番21021) もしくは Fura-8™ AM (赤色、品番21056) を使って測定した。CHO-K1細胞を 96 well 黒壁/透明底コースタープレートに播種 (40,000 cells/100 µL) し、一晩培養した。細胞に Fura-2 AM または Fura-8™ AM色素導入溶液を添加し、室温で1時間培養した。表記した最終濃度となるようATP (50 µL/well) をFlexStation® (Molecular Devices ) を使って添加した。

Fura-2、Fura-8™ およびBTCとは対照的に、Indo-1はフローサイトメトリー用の蛍光比例可能な色素として選ばれており、励起に単一レーザー (通常、アルゴン-イオンレーザーの351-364 nmスペクトルライン) を使うことがより実用的です。Indo-1 の最大蛍光波長はCa²⁺を含まない培地では〜475 nmですが、色素がCa²⁺で飽和されている場合は〜400 nmへと移行します (図4参照) 。Indo-1 は細胞透過性ではないものの、そのペンタアセトキシメチルエステルであるIndo-1 AM は細胞透過性であり、細胞内エステラーゼに切断されて Indo-1 となります。

図.4 0 - 39 µM 遊離Ca2+存在下におけるIndo-1の蛍光発光スペクトル

最も一般的なレシオメトリック型カルシウム指示薬 (例えば Fura-2 や Indo-1 など)には、低感度、UV励起性、HTSスクリーニングフィルターセットに対応していない、といったある一定の制限があります。Cal Red™ R525/650 は 488 nm 励起性のレシオメトリック型蛍光カルシウム指示薬として新たに開発されたものです。本品はキレート剤であり、カルシウムに結合すると488 nmでの励起に伴い蛍光シグナルが525 nmで増大し650 nmで低下します。Cal Red™ R525/650 の励起波長と蛍光波長は、細胞への損傷が最低限に抑えられている一般的なフィルターセットに対応しており、GPCRアゴニストやアンタゴニストおよびカルシウムチャネルターゲットの評価やスクリーニングにおいて頑強なツールとなります。

図.5 Cal Red™ R525/650 (カルシウム結合済み) の蛍光発光スペクトル

• カルシウム指示薬