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記事ID : 46304
研究用

RNAワクチンの免疫応答研究に InvivoGen社 RNAワクチン開発関連細胞株

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mRNAワクチンは、病原体の一部をコードするmRNAを脂質ナノ粒子(LNP)で包み、体内に送達することで免疫応答を誘導するワクチンです。
RNAを感知するパターン認識受容体(PRR)は「RNAセンサー」と呼ばれ、Toll様受容体(TLR)RIG-I 様受容体(RLR)は、RNAセンサーとして機能する2つの古典的な受容体ファミリーです1
一方、インフラマソーム構成分子の1つであるNLRP1は、主に病原体由来の分子や細胞ストレスに応答するNOD様受容体として知られていますが、近年の研究により、長い二本鎖DNA(dsDNA)を感知することが報告されています2

TLR(Toll 様受容体)

TLRファミリーのメンバーは細胞表面膜とエンドソーム上に局在し、そのうちTLR3はウイルスゲノムの二本鎖RNA(dsRNA)を認識し、TLR7TLR8はウイルスRNA中のグアノシンとウリジンを含む一本鎖RNA(ssRNA)を認識します。RNAと結合すると、TLRのRNAセンサーは構造変化によって切り替わり、TLR3の場合はアダプタータンパク質TRIF、TLR7/TLR8の場合はMyD88をリクルートし、IRF3/7のリン酸化とIFN-β分泌を引き起こします。

RLR(RIG-I 様受容体)

RIG-IMDA-5は、RIG-I様受容体(RLR)ファミリーに属する細胞質RNAヘリカーゼであり、宿主の抗ウイルス応答に重要です3。両者は、RNAウイルスの複製中間体である二本鎖RNA(dsRNA)を感知し、ミトコンドリア抗ウイルスシグナル伝達タンパク質MAVS(IPS-1、VISA、またはCardifとも呼ばれる)を介してシグナルを送り、NF-κBとI型インターフェロン(IFN-αとIFN-β)の産生を引き起こします4
また、RIG-Iのリガンドである5'ppp-dsRNAは、In Vitro Transcription(IVT)を用いたRNA合成の過程で生じる副産物です。そのため、RIG-I応答は、IVT後に残存する不純物を評価する上で重要な指標となります5

RLR(RIG-I 様受容体)のシグナル伝達経路の概要図
図1:IVT mRNAおよびdsRNA副産物による免疫応答のシグナル伝達経路

RNAワクチンの安全性は、製剤に含まれる脂質成分(LNP)とmRNA成分に対する免疫寛容性に由来します。
mRNAワクチンは一本鎖RNAを使用するため、免疫応答はTLR7/8を介して誘導されると予想されていました。しかし、最近の報告では、mRNAワクチンはTLR7やIL-1β、IL-6などの炎症性サイトカインではなく、MDA5を介してI型インターフェロン(IFN-I)の産生につながることが示されています6

このようにRNAワクチンに対する免疫応答は非常に複雑です。そのため、関連する様々なシグナル伝達経路を分析するために、レポーター細胞アッセイが有用です。
InvivoGen社は、RNAセンサー誘導性のNF-κB および/または IRF シグナル伝達をモニタリングするための一連の細胞株を提供しています。
細胞株のほとんどは、SEAP(分泌型アルカリホスファターゼ) 及び/またはLucia(分泌型ルシフェラーゼ)を発現しています。両方のレポータータンパク質は培養上清へ分泌されるため、検出試薬を用いて容易に検出可能です。

HEK-Dual™ TLR cells (NF-κB/IRF)のシグナル伝達経路の概要図
図2 :HEK-Dual™ TLR cells (NF-κB/IRF)のシグナル伝達経路

商品紹介

THP1-Dual™ 細胞 (品番:THPD-NFIS)

本細胞はTHP-1 ヒト単球細胞株由来で、NF-κB 経路とIRF 経路を同時に評価できるように設計されています。

THP1-Dual™ 細胞のシグナル伝達経路の概要図
図3:THP1-Dual™ 細胞のシグナル伝達経路
THP1-Dual™ 細胞は、 SEAP の活性をモニタリングすることで NF-κB 経路を、分泌ルシフェラーゼである Lucia ルシフェラーゼの活性を評価することで IRF 経路を同時に研究することが可能です。QUANTI-Blue™ Solution(SEAP検出試薬)とQUANTI-Luc™ 4 Lucia/Gaussia(LuciaおよびGaussiaルシフェラーゼ検出試薬) を使用すると、両方のレポータータンパク質を細胞培養上清中で容易に測定可能です。

THP1-Dual™ KO-Myd 細胞 (品番:THPD-KOMYD)

本細胞はTHP1-Dual™ 細胞の派生株で、MyD88遺伝子を安定的にノックアウトした細胞です。
MyD88は、Toll様受容体(TLR)とインターロイキン-1受容体(IL-1R)ファミリーのメンバーの下流にある炎症シグナル伝達経路の中心因子です7。TLR/IL-1R 経路は MyD88 依存性と MyD88 非依存性 (TRIF 依存性) の応答に分類できます。TLR3 と TLR4 を除き、すべての TLR は MyD88 を介して下流のシグナル伝達経路を媒介します8-9。本細胞を親細胞株THP1-Dual™ と組み合わせて使用することで、MyD88 依存性 NF-kB 応答をモニタリングすることが可能です。

THP1-Dual™ KO-MAVS細胞 (品番:THPD-KOMAVS)

本細胞はTHP1-Dual™ 細胞の派生株で、MAVS遺伝子を安定的にノックアウトした細胞です。
2 つの RNA ヘリカーゼ、レチノイン酸誘導遺伝子 I (RIG-I) とメラノーマ分化関連遺伝子 5 (MDA5)は、RNA ウイルスの複製中間体である細胞内二本鎖 RNA (dsRNA)を認識します3。dsRNA を認識すると、RIG-I と MDA5 は MAVS によってミトコンドリアの外膜にリクルートされ、インターフェロン調節因子(IRF)やNF-κBを含むいくつかの転写因子の活性化につながります10。よって本細胞を用いることで、これら細胞質 RNA 感知経路における RIG-I、MDA5、およびMAVSの役割を評価することが可能です。

THP1-Dual™ KO-RIG-I 細胞 (品番:THPD-KORIGI)

本細胞はTHP1-Dual™ 細胞の派生株で、RIG-I 遺伝子を安定的にノックアウトした細胞です。
RIG-Iは、平滑末端と5'-三リン酸(5'-ppp)を持つ短い二本鎖RNA(dsRNA)を特異的に認識します。この構造は主にウイルス由来のRNAに特徴的であり、宿主由来のRNAとウイルス由来のRNAを識別する役割を果たします。
RIG-Iのリガンドである5'-ppp-dsRNAは、In Vitro Transcription(IVT)を用いたRNA合成の過程で副産物として生じることが知られています。よって本細胞を用いることで、IVT後に残存する不純物を評価することが可能です5

HEK-Dual™ RNA-Null細胞 (品番:HKD-RNA-NULL)

本細胞はHEK-Dual™ 細胞の派生株で、NF-κB誘導性SEAPレポーターと IRF誘導性 Lucia® ルシフェラーゼ レポーターの両方を発現しています。加えて、重要なdsRNA センサーであるTLR3、RIG-I、および MDA5は内因的に発現していません。よって、RNA センサーのシグナル伝達、ワクチン開発、抗ウイルス応答メカニズムの研究に有用です。
また、HEK-Dual™ RNA-Null細胞の派生株として、TLR3、RIG-I、MDA5のそれぞれを再導入した細胞株もご用意しており、より特異的なシグナル応答の研究も可能です。

HEK-Dual™ RNA-Null細胞のシグナル伝達経路の概要図
図4:HEK-Dual™ RNA-Null細胞のシグナル伝達経路の概要図

HEK-Blue™ hTLR3細胞 (品番:HKD-RNA-TLR3)

Toll様受容体3(TLR3)は、ウイルス感染に関連する分子パターンである二本鎖 RNA (dsRNA)を認識します。 本細胞はヒト胎児腎臓HEK293細胞株に由来し、TLR3依存性 NF-κB経路を研究するために設計されています。

HEK-Blue™ hTLR3細胞のシグナル伝達経路の概要図
図5: HEK-Blue™ hTLR3細胞のシグナル伝達経路

HEK-Blue™ hTLR7細胞 (品番:HKB-HTLR7V2) およびHEK-Blue™ hTLR8細胞 (品番:HKB-HTLR8)

Toll様受容体7および8(TLR7, TLR8)は、ウイルスの一本鎖RNA(ssRNA)構造を認識します。 本細胞はHEK-Blue™ Null1-v細胞株に由来し、TLR7またはTLR8依存性の NF-κB経路を研究するために設計されています。

HEK-Blue™ hTLR7細胞のシグナル伝達経路の概要図
図6: HEK-Blue™ hTLR7細胞のシグナル伝達経路

HEK-Blue™ hTLR4細胞 (品番:HKB-HTLR4)

Toll様受容体4(TLR4)は、グラム陰性細菌の外膜の主要成分であるリポ多糖(LPS)を認識します。本細胞はヒト胎児腎臓HEK293細胞株に由来し、TLR4依存性 NF-κB経路を研究するために設計されています。
mRNAワクチンの構成要素である脂質ナノ粒子(LNP)は、その構造的類似性や成分により、TLR4を介して免疫応答を引き起こすことが知られている6ことから、LNPの免疫原性の評価に有用です。

図7:HEK-Blue™ hTLR4細胞のシグナル伝達経路の概要図
図7:HEK-Blue™ hTLR4細胞のシグナル伝達経路

Jurkat-Lucia™ NFAT細胞 (品番:JKTL-NFAT)

本細胞は、ヒトTリンパ球Jurkat細胞株に由来し、活性化T細胞核因子(NFAT)経路の研究のために設計されています。NFATの活性化は、T細胞受容体(TCR)刺激によるカルシウム流入によって制御されるため、T細胞の活性化評価に有用です。

図8:Jurkat-Lucia™ NFAT細胞のシグナル伝達経路の概要図
図8:Jurkat-Lucia™ NFAT細胞のシグナル伝達経路

商品ラインアップ

mRNAデザインの検討に

mRNA合成時の不純物となる、dsRNAによる免疫応答の評価等に用いられております。

品名 メーカー 品番 包装 希望販売価格
THP1-DualTM Cells詳細データ ING THPD-NFIS 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
¥376,000
THP1-Dual KO-MyD Cells詳細データ ING THPD-KOMYD 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
お問い合わせ
THP1-DualTM KO-MAVS Cells詳細データ ING THPD-KOMAVS 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
お問い合わせ
THP1-DualTM KO-RIG-I Cells詳細データ ING THPD-KORIGI 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
お問い合わせ
THP1-DualTM KO-MDA5 Cells詳細データ ING THPD-KOMDA5 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
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HEK-DualTM詳細データ ING HKD-NFIS 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
¥376,000
HEK-DualTM RNA-Null new詳細データ ING HKD-RNA-NULL 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
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HEK-DualTM RNA-hTLR3 new詳細データ ING HKD-RNA-TLR3 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
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HEK-DualTM RNA-hRIG-I new詳細データ ING HKD-RNA-RIGI 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
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HEK-DualTM RNA-hMDA5 new詳細データ ING HKD-RNA-MDA5 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
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A549-DualTM Cells詳細データ ING A549D-NFIS 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
¥376,000
A549-DualTM KO-MAVS cells詳細データ ING A549D-KOMAVS 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
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A549-DualTM KO-RIG-I Cells詳細データ ING A549D-KORIGI 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
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A549-DualTM KO-MDA5 cells詳細データ ING A549D-KOMDA5 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
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RNA Immunogenicity(免疫原性)の検出に

Multiple PRRs

品名 メーカー 品番 包装 希望販売価格
THP1-DualTM Cells詳細データ ING THPD-NFIS 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
¥376,000
HEK-DualTM詳細データ ING HKD-NFIS 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
¥376,000
A549-DualTM Cells詳細データ ING A549D-NFIS 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
¥376,000

Specific PRR

品名 メーカー 品番 包装 希望販売価格
HEK-LuciaTM RIG-I Cells詳細データ ING HKL-HRIGI 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
¥376,000
HEK-BlueTM hTLR3 cells詳細データ ING HKB-HTLR3 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
¥376,000
HEK-BlueTM hTLR7 cells詳細データ ING HKB-HTLR7V2 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
¥376,000
HEK-BlueTM hTLR8 cells詳細データ ING HKB-HTLR8 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
¥376,000
A549-ASC-NLRP1 Cells, Human詳細データ ING A549-ASCG-NLRP1 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
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A549-ASC Cells, Human詳細データ ING A549-ASCG 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
¥376,000

脂質デザインの検討に

脂質ナノ粒子(LNP)由来の免疫原性を評価するために用いられております。
LNPは脂質や異物分子を認識するTLR2およびTLR4を刺激することが知られています6が、加えてT細胞の活性化にも関与することが示唆されています11。そのため、T細胞の活性化を評価するための細胞も有用です。

品名 メーカー 品番 包装 希望販売価格
HEK-BlueTM hTLR2 cells詳細データ ING HKB-HTLR2 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
¥376,000
HEK-BlueTM hTLR4 cells詳細データ ING HKB-HTLR4 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
¥376,000
Jurkat-LuciaTM NFAT Cells詳細データ ING JKTL-NFAT 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
¥340,000

関連商品

参考文献
  1. Yang R. et al., 2022. Emerging role of RNA sensors in tumor microenvironment and immunotherapy. Journal of Hematology & Oncology. 15: 43.
  2. Bauernfried et al., 2021. Human NLRP1 is a sensor for double-stranded RNA. Science. 371(6528):eabd0811.
  3. Gebhardt A. et al., 2017. Discrimination of self and non-self ribonucleic acids. Journal of Interferons & Cytokine Research. 37: 184-97.
  4. Yoneyama M. et al., 2015. Viral RNA detection by RIG-I-like receptors. Curr Opin Immunol. 32: 48-53.
  5. Kim DH et al., 2004. Interferon induction by siRNAs and ssRNAs synthesized by phage polymerase. Nat Biotechnol. 22(3):321-5.
  6. Lee J. et al., 2023. Knife's edge: Balancing immunogenicity and reactogenicity in mRNA vaccines. Experimental & Molecular Medicine. 55(7): 1305-1313.
  7. Deguine J, Barton GM. 2014. MyD88: a central player in innate immune signaling. F1000Prime Rep.;6:97.
  8. Chao Zheng et al., 2020. Inflammatory Role of TLR-MyD88 Signaling in Multiple Sclerosis. Front. Mol. Neurosci. 12:314.
  9. Chen L, et al., 2020. Myeloid Differentiation Primary Response Protein 88 (MyD88): The Central Hub of TLR/IL-1R Signaling. J Med Chem. ;63(22):13316-13329.
  10. Pichlmair A. et al., 2006. RIG-I mediated antiviral responses to single-stranded RNA bearing 5’-phosphates. Science 314:997-1001.
  11. Li T. et al., 2022. Arginine-based cationic liposomes accelerate T cell activation and differentiation in vitro. Int J Pharm. 623:121917.

商品は「研究用試薬」です。人や動物の医療用・臨床診断用・食品用としては使用しないように、十分ご注意ください。

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