アジュバントとは、ワクチン接種時の抗原特異的免疫応答の大きさと持続性を高める物質です[1]。
アジュバントには賦形剤(vehicle)と免疫賦活剤(immunostimulant)があり、両方の性質を併せ持つものもあります。
図.抗原とアジュバント
- 賦形剤 (vehicle):
通常は粒子状で (水酸化アルミニウム、乳剤/エマルジョン 等) 、ワクチン投与前に抗原と混合されます。これにより「Depot(貯蔵) 効果 」が生じ(例えば筋肉内)、抗原がゆっくりと放出され、免疫細胞との相互作用が長くなります。水酸化アルミニウムのように免疫賦活特性を持つものもあり、これはインフラマソーム反応を誘発します[1]。 - 免疫賦活剤 (immunostimulant):
Toll様受容体(TLR)などのパターン認識受容体(PRR)を活性化することが知られている合成分子です[2]。PRRアゴニストは抗原提示細胞(APC)を刺激し、抗原の提示を高めると同時に、炎症性ケモカインやサイトカインの分泌を促進します。抗原とPRRアゴニストの混合は、最大限のT細胞応答を得るために、両分子を同じAPCに共送達することを目的としています。 - 抗原-アジュバント結合体 (antigen-adjuvant conjugate)
抗原-PRRアゴニスト融合ワクチンであり、抗原とアジュバントの単純な混合物よりも強い免疫応答を引き起こします。これは、混合物投与後の2分子の解離を防ぐことに起因すると考えられています。さらに、抗原-アジュバント結合体は樹状細胞により効率的に取り込まれ、細胞内に抗原と免疫賦活剤のDepot(貯蔵) を形成し、T細胞刺激を延長することができます[2]。