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蛍光偏光(FP)法、TR-FRET法、蛍光強度(FI)法を用いたGDP検出キット Transcreener® GDP Assay
BellBrook社;蛍光偏光(FP)法、TR-FRET法、蛍光強度(FI)法を用いたGDP検出キット
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背景
Small GTPasesのような単量体の低分子量Gタンパク質ファミリーは、シグナル伝達、遺伝子発現、微小管構築及び細胞骨格の再形成などの細胞内プロセスにおいて、非常に重要な役割を果たしています。また、その変異や過剰発現による機能異常が、神経変性疾患の他、多くの癌に対しても関連があることが認められて います。
Transcreener® GDPアッセイキットは、ワンステップで、ホモジニアスな蛍光アッセイです。酵素反応により生成したGDPが、抗体に結合しているトレーサーと置換され、遊離したトレーサーの蛍光変化を測定します。蛍光偏光法(FP)、TR-FRET法および蛍光強度法(FI)の3種類の検出法があり、放射定量法に比べ安全で、HTSにも互換性があり、比色リン酸検出法と比較して高感度で化合物干渉が低減されています。BellBrook社独自のヌクレオチド免疫検出技術に基づき、Gai1のようなヘテロ3量体Gタンパク質のGaサブユニットや、CDC42の様な単量体small Gタンパク質を含むGDPを産生する酵素に対応しています。
特長
● ユニバーサルHTSアッセイ:GDP産生酵素をユニバーサルにアッセイ。GTPase、Fucosyltransferase、Mannosyltransferaseをスクリーニング可能。広範囲なGTP濃度をカバーします。
● 3種類の検出方法:蛍光偏光法(FP)、蛍光強度法(FI)とTR-FRET。全てのプレートリーダーで検証済み。最適なフィルター設定をご案内します。
● 高感度:GTP過剰存在下において高感度抗体がナノモーラーレベルのGDPを検出
● 簡便なプロトコール:酵素反応にTranscreener® 検出試薬を添加し、プレートを読み込むだけです。
使用可能な機器については、こちらをご参照ください。

(Fig. 2)GDP/GTP Standard Curves
A. 初期[GTP]がそれぞれ、1 uM, 10 uM及び100 uMの場合のGDP/GTPスタンダードカーブ。実際の酵素反応を模倣して、ヌクレオチド濃度([GDP]+[GTP])を、それぞれ1 uM, 10uM及び100 uMとした後、GDP Detection Mixtureを添加した。
最終的な反応液量は20 ulで、組成は下記のとおり。
50 mM HEPES (pH 7.5), 2mM MgCl2, 1 mM EGTA, 0.5% DMSO, 0.01% Brij-35, 20 mM EDTA, 2nM ADP Alexa® 633 Tracer, GDP/GTP standards, and GDP Antibody (EC 85 concentration) (n=24)
B. 初期[GTP]が10 uMのスタンダードカーブに対して、<10 % GTPの変換率において優れたZ’値を示す。

(Fig. 3) 10 uM GTP/GDP Standard Curve
Complex bufferで調整したGTP/GDPスタンダードに、平衡化済みのGDP Detection Mixture*を等量添加
% GTP Conversion = (uM GDP/uM GDP + uM GTP) x 100
*の組成:4 nM ADP-Alexa® 633 tracer and 30 ug/ml Antibody (2x EC85) in GDP Detection Buffer

(Fig. 4) GDP/GDP-fucose
GTP/GDPスタンダード**に、平衡化済みのGDP Detection Mixture***を等量添加。1時間後、Tecan Safire2で測定
**: 50 mM HEPES (pH 7.5), 4 mM MgCl2, 2 mM EGTA, and 1% DMSO
***: 4 nM GDP-Alexa® 633 tracera nd 4-75 μg/mL GDP Antibody in 50 mM HEPES (pH 7.5), 40 mM EDTA, and 0.02% BRIJ-35®
哺 乳類のフコシルトランスフェラーゼ(FucTs)は、GDP-フコースから、タンパク質や脂質に結合したオリゴ糖鎖にフコースを転移させます。これらの シークエンスとリンカータイプに基づいて、脊椎動物のフコシルトランスフェラーゼは次の3つの主なグループに分類されます;α2-, α3,4- 及びα6-フコシルトランスフェラーゼ。
これまで少なくとも9つのヒトフコシルトランスフェラーゼがクローニングされています。細胞におけるフコシル化は、細胞接着、炎症応答、白血球輸送及び受精等に関与しており、フコシル化パターンの変化は、悪性かつ慢性の疾患に関連があるとされています。
構成内容
kitの種類 | 構成内容 |
---|---|
Transcreener® GDP FP Assay (蛍光偏光法) |
・ GDP Antibody ・ GDP Alexa® 633 Tracer, 400 nM ・ Stop & Detect Buffer B, 10X ・ 5 mM GTP ・ 5 mM GDP |
Transcreener® GDP FI Assay (蛍光強度法) |
・ GDP2 Antibody-IRDye® QC-1 ・ GDP Alexa® 594 Tracer, 800 nM ・ Stop & Detect Buffer B, 10X ・ 5 mM GTP ・ 5 mM GDP |
Transcreener® TR-FRET GDP Assay |
・ GDP HiLyte647 Tracer ・ GDP Antibody-Terbium Conjugate, 800 nM ・ Stop & Detect Buffer B, 10X ・ 5 mM GTP ・ 5 mM GDP |
原理

(Fig. 1) アッセイ原理
GTPからGTPase等により生じたGDPを、競合蛍光偏光イムノアッセイを用いて測定
Tracer: GDP-Alexa® 633
Filter: 635 nm excitation (LED)
670 nm emission(10 nm bandwidth)
【実験例】 Transcreener® GDPアッセイキットを用いたRGSタンパク質アッセイ
GPCRはこれまで創薬ターゲットの中で最も広く研究されている領域で、新規レセプターのターゲッティングやその下流のエフェクターに対してなど、創薬 ターゲットとして未だ多くの可能性を秘めています。ヒトゲノム中には900以上のGPCRがコードされており、現存する薬の半数以上がGPCRリガンドで すが、ターゲットとなっているGPCRはまだ30種類にも及びません。製薬企業各社では、GPCRシグナリングでターゲットとなる可能性のあるコンポーネ ントの発見に、一層力を注いでいます。その中でもRGSタンパク質は、GPCRシグナル伝達制御において重要な要素の1つです。
Transcreener® GDPアッセイは、RGSモジュレーターのスクリーニングに使用可能です。しかしこの方法には、GαGTPaseのGDP解離速度が内因性のGTP加水分 解速度よりも著しく低いという問題があります。そこで、GDP解離速度を高くし、加水分解速度を低くした変異型モデル;Gαi1を用いて、 koff(GDP)/kcat(GTPase)≧5を可能にしました。いくつものGαi1変異体が構築された中で、GTPaseとGAP活性をモニタリン グするためにデザインされたGDP検出方法を用いるHTSアッセイに適した変異体がいくつかありました。
下記に、GαGTPase速度の変化の検出を用いたHTS RGSアッセイの開発について、結果と共にご紹介します。

(Fig. 5) RGS Proteins as GTPase-accelerating Proteins
アゴニストによるGPCRの活性化により構造変化が起き、Gαβγヘテロトリマーに伝達されると、GαとGβγで次の現象が起きます。(1) GαからGDPが解 離した後、GTPに変換される(Guanine nucleotide Exchange Factors; GEFs)。(2) Gβγが解離する。(3) シグナル伝達が開始される。
活性型のGα-GTPと解離したGβγは、細胞外リガ ンドに対する細胞応答を引き起こす下流のエフェクター活性を調整します。Gαサブユニットの初期のGTPase活性は、結合型のGTPをGDPに加水分解 することで、Gタンパク質ヘテロトリマーを再結合させます。しかし、この初期活性は通常、Gタンパク質不活性化の生理的速度に一致するには不十分です。 RGSはここで、Gα-GTPの初期GTP加水分解速度を高めることによってシグナル伝達の終了を手助けすることから、GTPase- accelerating proteins (GAPs)としての役割を持ちます。

(Fig. 6) Use of Transcreener® GDP Assay to monitor RGS GAP activity by immuno-detection of GDP generation in HTS assay format
Transcreener® GDP Detection Mixtureには、GDP抗体に結合するGDP Alexa® 633トレーサーが含まれています。トレーサーは、GαのGTPase活性により生じたGDPとの結合に置換されます。その結果遊離したトレーサーは、見かけ上の分子量が小さくなることにより、蛍光偏光度が減少します。つまり、GDPの増加に伴って偏光値の減少が起こります。しかし通常、単離したGαからの GTPの解離は非常に遅いため、RGS GAPの効果は定常状態のGTPaseの測定では検出できません。これを克服するために、GDPの解離を検出可能な速度で行うことのできるGαの変異体を構築、使用しました。

(Fig. 7) Proof of concept for HTS RGS GAP Assay
100nM Gαi1 wild type (●), Gαi1 A326S Dissociation mutant (▲), Gαi1 R178C GTPase mutant (●), Gαi1 A326S/R178C Double mutant (★)タンパク質を、2nM RGS4あり(実線)なし(点線)のreaction mix* に添加し、30℃で384 ウェルプレートを用いてインキュベーション。
FPは、Tecan Ultra-Ex/Em 612/670で測定。
mPデータは、スタンダードカーブを用いてGDP量に変換。
*: 20mM Tris 7.5 pH, 1mM EDTA, 10mM MgCl2, 10μM GTP,
40μg/mL GDP Ab, 2nM GDP Tracer
Mutation | Gα protein mutated | Decrese in kcat(GTPase) | Increse in koff(GDP) | Equivalent Site in Gαi1 |
---|---|---|---|---|
A326S | Gαi1 | none | 25x | A326 |
D55G/G56S | Gαt | none | 10x | A50/G60 |
R144A | Gαi1 | ND | 5x | R144 |
C325A | Gαo | ND | 10x (kd) | C325 |
R178C | Gαi1 | >100x | Reported(not quantified) | R178 |
T182A | Gαi2 | >100x | 2x | T181 |
Gα変異体、およびRGSリコンビナントについては、RGScreen RGS Protein GAP Assays でご紹介しております。
参考データ
- An RGS Protein HTS Assay Strategy using the Transcreener™ GDP Assay
427kb
- GDP Detection Using the Transcreener™ HTS Assay Technology
295kb
- Engineering G alpha Proteins for Detection of RGS Protein GAP Activity with the Transcreener® GDP Assay
609kb
- Selective Detection of LRRK2 GTPase Activity with the Transcreener® GDP Assay.pdf
336kb
- Investigation of Different GTPase Classes with the Transcreener® GDP Assay.pdf
534kb
【関連ページ】
- RGScreen RGS Protein GAP Assays
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