- 試験材料:HCT 116 細胞培養上清(無血清)
- 使用抗体:Anti CD9, Human (Mouse) Label Tide FluorTM 2WS, 12A12(コスモ・バイオ:CAC:SHI-EXO-M01-TF2)
- 膜染色試薬:CellMask™ Plasma Membrane Stains(Deep Red)(Thermo:C10046)
実験方法
- 培養上清を限外濾過( 100 kDa )で10倍濃縮し 20 µL 取り分ける。
- 抗体を 100 倍希釈して 2µL 加える
- 膜染色試薬を 100 倍希釈して 2 µL 加える
- 30 〜 60 分後、SMART FCCSにて測定。
※測定条件:レーザーパワー 99 %、2 色同時測定モード使用、30 秒 × 5 回測定
事前準備(初回のみ必要な操作)
- 抗体を終濃度と同じ 1,000 倍希釈液に調製し、FCS 測定で拡散時間( DT=Diffusion Time )を測定する。(例:0.279 ms )
- 膜染色試薬を終濃度と同じ 1,000 倍希釈液に調製し、FCS 測定で拡散時間を測定する。(例:0.080 ms )
- それぞれ、得た DT を第 1 成分に入力しFix(固定)、第 2 成分を未知成分として測定する。
結果

Ch |
C1 [1/mL] |
C2 [1/mL] |
Dia1 [nm] |
Dia2 [nm] |
CR-BG [kHz] |
NP |
CPM [kHz] |
F1 |
DT1 [ms] |
DT2 [ms] |
G |
1.96E+10 |
1.59E+12 |
13.2 |
144.7 |
58.3 |
0.4 |
153.139 |
0.012 |
0.279 |
3.058 |
R |
1.21E+13 |
3.02E+14 |
2.2 |
183.4 |
3450.8 |
164.4 |
20.994 |
0.038 |
0.080 |
6.573 |
C |
0 |
1.61E+12 |
0.5 |
423.2 |
- 1 |
0.5 |
- 1 |
0 |
0.01 |
8.942 |





- Green
-
第1成分(抗体):13.2 nm、1.96 × 1010 個/mL
第2成分(CD9陽性エクソソーム):144.7 nm、1.59 × 1012 個/mL
- Red
-
第1成分(染色用色素):2.2 nm、1.21 × 1013 個/mL
第2成分(膜陽性エクソソーム):183.4 nm、3.02 × 1014 個/mL
- CCF
-
同時検出粒子:1.61 × 1012 個/mL
膜陽性粒子は多数検出されましたが CD9陽性粒子は少数であり、その多くは膜構造を有することが確認されました。
この結果は、CD9を持たない細胞外小胞や膜粒子が多数含まれる可能性を示しており、SMART FCCSによるサブポピュレーション解析の有用性が示されました。
従来困難だったマーカー陽性率の定量や、標的マーカーに基づくエクソソーム評価が可能です。
実験例 ②(ウシミルクエクソソームの測定と他の測定装置との比較)
②-1 FCS を用いたウシミルクエクソソーム膜陽性粒子数の測定
- 試験材料:ウシミルクエクソソーム(コスモ・バイオ:EXBM 100L )
- 膜染色試薬:CellMask™ Plasma Membrane Stains(Green)( Thermo:C37608 )
実験方法
- ウシミルクエクソソーム(原液)20 µL に対し、100 倍希釈した膜染色試薬 2 µL 添加する。
- 室温で 30 〜 60 分静置後、SMART FCCS にて測定。
※測定条件:レーザーパワー 99 %、Green 単色測定モード使用、30 秒 × 5 回 測定

Ch |
C1 [1/mL] |
C2 [1/mL] |
Dia1 [nm] |
Dia2 [nm] |
CR-BG [kHz] |
NP |
CPM [kHz] |
F1 |
DT1 [ms] |
DT2 [ms] |
G |
1.91E+12 |
0 |
215.70 |
263761.5 |
16.1 |
0.4 |
42.586 |
1 |
4.089 |
5000 |





- 粒子濃度:1.91 × 1012 個/mL
- 粒子径:215 nm
②-2 ナノサイト LM-10 を用いたウシミルクエクソソームの粒子数、粒子径測定結果
- 試験材料:ウシミルクエクソソーム(コスモ・バイオ:EXBM 100 L )
実験方法
- ウシミルクエクソソーム(原液)10 µLに対し、4990 µL の PBS(-)を添加する。( 500 倍希釈)
- ナノサイト LM10 にて測定
結果
- Nanoparticle Tracking Analysis
- Instrument: NanoSight LM10
- Dilution factor: 500
- Particle size (mean): 196 nm
- Concentration: 1.84 × 1012 Particles
Stats: Merged Data
Mean | 196.0 nm |
Mode | 173.7 nm |
SD | 57.3 nm |
D10 | 133.3 nm |
D50 | 185.3 nm |
D90 | 273.3 nm |
Stats: Mean +/- Standard Error
Mean | 196.0 +/- 1.5 nm |
Mode | 169.2 +/- 4.6 nm |
SD | 57.2 +/- 1.1 nm |
D10 | 133.6 +/- 1.2 nm |
D50 | 185.3 +/- 0.9 nm |
D90 | 273.3 +/- 3.2 nm |
Concentration | 1.84e+12 +/- 2.45e+10 particles/mL |
187.1 +/- 2.5 particles/frame |
185.9 +/- 1.8 centres/frame |
比較表
|
粒子濃度(個/mL) |
粒子径(平均値、nm) |
SMART FCCS |
1.91 × 1012 |
215.7 |
LM10 |
1.84 × 1012 |
196.0 |
このように生物種を問わず使用できる膜染色試薬を使用することで、容易に膜陽性粒子≒エクソソームを検出、測定することができます。
また散乱光測定を原理とした他の方法と比較して同等の測定結果が得られます。ただし脂肪滴、大きなタンパク分子、ナノバブル(気泡)などがあった場合、それらが散乱光を返した場合は異なった結果となることが予想されます。
膜染色試薬とFCSを組み合わせた方法では、膜染色試薬が標識しない粒子の誤検出を減らすことが期待でき、また膜染色試薬は生物種を問わないことから植物や菌体由来のEV検出にも使用が可能です。