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記事ID : 44131
研究用

蛍光相関分光法、蛍光相互相関分光法を簡便に実現 蛍光微粒子測定装置 SMART FCCS

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「SMART FCCS」は溶液中の粒子径や濃度を短時間で簡単に測定できる機器です。

レーザーを 2 色搭載し、同時測定できるため同一粒子で 2 種の相互作用を検出可能です。
1〜200 nm をターゲットサイズとし、エクソソーム、脂質ナノ粒子、タンパク質、核酸、リポソーム、ペプチド、抗体など様々な微粒子に適応し、研究用途、品質管理など多用途にご使用いただけます。

蛍光検出器 SMART FCCSの写真

 

FCS、FCCSについて

SMART FCCS」は、蛍光相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy:FCS)または蛍光相互相関分光法(Fluorescence Cross Correlation Spectroscopy:FCCS)という手法による解析を従来機や従来法に比べ簡便に実施できる機器です。

従来、FCS解析やFCCS解析を行うためには、共焦点蛍光顕微鏡やフォトンカウンティングのための検出器、相関器とソフトウェアを組み合わせた、大型で非常に煩雑な操作を伴う機器が必要でした。

本商品は、卓上のコンパクトなサイズとなっており、特許技術である蛍光相関分光機器※1を光学系に搭載することで、従来の機器と比較して小型化および煩雑な作業をなくすことができ、機器は誰でも簡単に操作できるよう最適化されたソフトウェア※2が付属します。

※1 国立大学法人北海道大学が保有する特許技術(特許第6667868号)
※2 国立研究開発法人産業技術総合研究所で開発

参考文献

  1. 光ファイバーを用いたFCS構築
    (現在のSMART FCCSとはレンズが異なる形態なので、原理部分についての論文としてご参考ください。)
    Johtaro Yamamoto, Masataka Kinjo. Full fiber-optic fluorescence correlation spectroscopy. Opt Express. 2019 May 13;27(10):14835-14841. PMID: 31163925 DOI: 10.1364/OE.27.014835
  2. ファイバー型FCSで蛍光色素溶液と蛍光標識タンパク質の測定を行った論文
    (現在の商品に近い構成でFCS(一色)測定のみです。FCCS(2色)の記述はありません。)
    Jhotaro Yamamoto, A. Sasaki. Fluorescence Correlation Spectroscopy Measurement Based on Fiber Optics for Biological Materials. Appl. Sci. 2021, 11(15), 6744; DOI: 10.3390/app11156744

PMC_FCCS01_fig123.jpg

[デモ機あります]
● 貸出用のデモ機をご用意しております。
製造技術部(bio-products@cosmobio.co.jp) までお問い合わせください。

測定対象粒子

SMART FCCSは蛍光修飾されたエクソソーム、脂質ナノ粒子、タンパク質、核酸、リポソーム、ペプチド、抗体など様々な微粒子を測定対象とします。小さな分子では、蛍光色素 1 分子( 1 〜 2 nm )を定量することがじゅうぶんに可能な精度を持ち、200 nm 程度まで高精度に粒子径測定ができます。

また、2 色の蛍光を使い分けることができるため、2 つのマーカーに対する相互作用を同時に検出可能です。例えば、2 種の抗体に蛍光標識を付して対象粒子に結合させ、同一粒子の表面抗原陽性率を求めるといった目的に使用できます。

エクソソーム研究への活用

FCS解析やFCCS解析は、通常は分子間相互作用の解析などに使われる機会が多いですが、本機器はその原理をエクソソームの検出やタンパク質の検出などに応用が可能です。

例えば、エクソソームの表面には CD9 をはじめとするタンパク質が多く存在しており、エクソソームを検出するためのマーカーとして利用されていますが、エクソソームの存在する場所や時期、内包する内容物の違いなどによりこれらのマーカーの発現が異なることが報告されています。

どのような状況下でどのようなマーカーが発現しているかを調べることは、治療用エクソソームの品質管理、新規がんマーカーや疾患マーカーの発見、およびそれを利用した迅速診断技術など、エクソソームの特徴を明らかにすることについて非常に有意義な知見を得ることになります。

「SMART FCCS」では、2 色の蛍光を使い分けることができるため、これらのマーカーに対する抗体に蛍光標識を付しておきエクソソームに結合させ、それらを「SMART FCCS」で検出することができます。

実験例 ① 細胞培養上清中のエクソソームを抗 CD9 抗体と膜染色試薬で 2 重染色した実験例

  • 試験材料:HCT 116 細胞培養上清(無血清)
  • 使用抗体:Anti CD9, Human (Mouse) Label Tide FluorTM 2WS, 12A12(コスモ・バイオ:CAC:SHI-EXO-M01-TF2)
  • 膜染色試薬:CellMask™ Plasma Membrane Stains(Deep Red)(Thermo:C10046)

実験方法

  1. 培養上清を限外濾過( 100 kDa )で10倍濃縮し 20 µL 取り分ける。
  2. 抗体を 100 倍希釈して 2µL 加える
  3. 膜染色試薬を 100 倍希釈して 2 µL 加える
  4. 30 〜 60 分後、SMART FCCSにて測定。

※測定条件:レーザーパワー 99 %、2 色同時測定モード使用、30 秒 × 5 回測定

事前準備(初回のみ必要な操作)

  1. 抗体を終濃度と同じ 1,000 倍希釈液に調製し、FCS 測定で拡散時間( DT=Diffusion Time )を測定する。(例:0.279 ms )
  2. 膜染色試薬を終濃度と同じ 1,000 倍希釈液に調製し、FCS 測定で拡散時間を測定する。(例:0.080 ms )
  3. それぞれ、得た DT を第 1 成分に入力しFix(固定)、第 2 成分を未知成分として測定する。

結果

SMART FCCSを使い、細胞培養上清中のエクソソームを抗CD9抗体と膜染色試薬で2重染色した実験データ1

Ch C1
[1/mL]
C2
[1/mL]
Dia1
[nm]
Dia2
[nm]
CR-BG
[kHz]
NP CPM
[kHz]
F1 DT1
[ms]
DT2
[ms]
G 1.96E+10 1.59E+12 13.2 144.7 58.3 0.4 153.139 0.012 0.279 3.058
R 1.21E+13 3.02E+14 2.2 183.4 3450.8 164.4 20.994 0.038 0.080 6.573
C 0 1.61E+12 0.5 423.2 - 1 0.5 - 1 0 0.01 8.942

SMART FCCSを使い、細胞培養上清中のエクソソームを抗CD9抗体と膜染色試薬で2重染色した実験データ2

SMART FCCSを使い、細胞培養上清中のエクソソームを抗CD9抗体と膜染色試薬で2重染色した実験データ3

SMART FCCSを使い、細胞培養上清中のエクソソームを抗CD9抗体と膜染色試薬で2重染色した実験データ4

SMART FCCSを使い、細胞培養上清中のエクソソームを抗CD9抗体と膜染色試薬で2重染色した実験データ5

SMART FCCSを使い、細胞培養上清中のエクソソームを抗CD9抗体と膜染色試薬で2重染色した実験データ6

Green
第1成分(抗体):13.2 nm、1.96 × 1010 個/mL
第2成分(CD9陽性エクソソーム):144.7 nm、1.59 × 1012 個/mL
Red
第1成分(染色用色素):2.2 nm、1.21 × 1013 個/mL
第2成分(膜陽性エクソソーム):183.4 nm、3.02 × 1014 個/mL
CCF
同時検出粒子:1.61 × 1012 個/mL

膜陽性粒子は多数検出されましたが CD9陽性粒子は少数であり、その多くは膜構造を有することが確認されました。

この結果は、CD9を持たない細胞外小胞や膜粒子が多数含まれる可能性を示しており、SMART FCCSによるサブポピュレーション解析の有用性が示されました。
従来困難だったマーカー陽性率の定量や、標的マーカーに基づくエクソソーム評価が可能です。

 

実験例 ②(ウシミルクエクソソームの測定と他の測定装置との比較)

②-1 FCS を用いたウシミルクエクソソーム膜陽性粒子数の測定

  • 試験材料:ウシミルクエクソソーム(コスモ・バイオ:EXBM 100L )
  • 膜染色試薬:CellMask™ Plasma Membrane Stains(Green)( Thermo:C37608 )

実験方法

  1. ウシミルクエクソソーム(原液)20 µL に対し、100 倍希釈した膜染色試薬 2 µL 添加する。
  2. 室温で 30 〜 60 分静置後、SMART FCCS にて測定。

※測定条件:レーザーパワー 99 %、Green 単色測定モード使用、30 秒 × 5 回 測定

FCSを用いたウシミルクエクソソーム膜陽性粒子数の測定データ1

Ch C1
[1/mL]
C2
[1/mL]
Dia1
[nm]
Dia2
[nm]
CR-BG
[kHz]
NP CPM
[kHz]
F1 DT1
[ms]
DT2
[ms]
G 1.91E+12 0 215.70 263761.5 16.1 0.4 42.586 1 4.089 5000

FCSを用いたウシミルクエクソソーム膜陽性粒子数の測定データ2

FCSを用いたウシミルクエクソソーム膜陽性粒子数の測定データ3

FCSを用いたウシミルクエクソソーム膜陽性粒子数の測定データ4

FCSを用いたウシミルクエクソソーム膜陽性粒子数の測定データ5

FCSを用いたウシミルクエクソソーム膜陽性粒子数の測定データ6

  • 粒子濃度:1.91 × 1012 個/mL
  • 粒子径:215 nm

②-2 ナノサイト LM-10 を用いたウシミルクエクソソームの粒子数、粒子径測定結果

  • 試験材料:ウシミルクエクソソーム(コスモ・バイオ:EXBM 100 L )

実験方法

  1. ウシミルクエクソソーム(原液)10 µLに対し、4990 µL の PBS(-)を添加する。( 500 倍希釈)
  2. ナノサイト LM10 にて測定

結果

ナノサイトLM-10を用いたウシミルクエクソソームの粒子数、粒子径測定結果のグラフ

  • Nanoparticle Tracking Analysis
  • Instrument: NanoSight LM10
  • Dilution factor: 500
  • Particle size (mean): 196 nm
  • Concentration: 1.84 × 1012 Particles

Stats: Merged Data

Mean196.0 nm
Mode173.7 nm
SD57.3 nm
D10133.3 nm
D50185.3 nm
D90273.3 nm

Stats: Mean +/- Standard Error

Mean196.0 +/- 1.5 nm
Mode169.2 +/- 4.6 nm
SD57.2 +/- 1.1 nm
D10133.6 +/- 1.2 nm
D50185.3 +/- 0.9 nm
D90273.3 +/- 3.2 nm
Concentration1.84e+12 +/- 2.45e+10 particles/mL
187.1 +/- 2.5 particles/frame
185.9 +/- 1.8 centres/frame

比較表

  粒子濃度(個/mL) 粒子径(平均値、nm)
SMART FCCS 1.91 × 1012 215.7
LM10 1.84 × 1012 196.0

このように生物種を問わず使用できる膜染色試薬を使用することで、容易に膜陽性粒子≒エクソソームを検出、測定することができます。

また散乱光測定を原理とした他の方法と比較して同等の測定結果が得られます。ただし脂肪滴、大きなタンパク分子、ナノバブル(気泡)などがあった場合、それらが散乱光を返した場合は異なった結果となることが予想されます。

膜染色試薬とFCSを組み合わせた方法では、膜染色試薬が標識しない粒子の誤検出を減らすことが期待でき、また膜染色試薬は生物種を問わないことから植物や菌体由来のEV検出にも使用が可能です。

特長

  • 1〜200 nm の径の蛍光粒子を測定可能
  • 2 波長のレーザーを装備(Ex. 488, 633 nm)
  • 単色測定(FCS)、二色測定(FCCS) の両モードを搭載
  • コスモ・バイオ各種エクソソーム抗体を使用して、FCS / FCCS によるエクソソームの定量解析が可能
  • FCS / FCCS 技術を用いた測定が簡便
  • 2 色同時測定による相互相関を計測可能

 

測定手順

初めての方でもすぐに使える専用ソフトウェアが付属しており、直感的な操作でどなたでもすぐに測定を開始できます。

FCCSのレンズ領域のカバーをあけた写真

矢印
FCCSに蛍光標識したサンプルをセットしている写真

測定条件を選択し、蛍光標識したサンプルをセット

矢印
測定のスタート画面の写真

サンプル名を入力して「Start」を押すだけで、測定が自動的にスタート

矢印
測定結果の写真

測定後は、測定結果が自動で解析され粒子径と濃度が表示されます

さらに、測定粒子をサイズの異なる2成分に分けて解析できる「2 componentsモード」を搭載しておリ、1 成分、2 成分抽出の両 方に対応しています。
たとえば「蛍光染色試薬とエクソソーム」や「蛍光標識抗体と標的タンパク質」など、さまざまなターゲット系に柔軟に対応できます。

 

測定原理

SMART FCCSは、ごく小さな観察領域でブラウン運動による蛍光粒子の出入りをリアルタイムに観測することで、粒子の大きさや濃度を測定します。 観察領域に粒子が入ると蛍光が光リ、出ていくと光が消えます。これを繰り返し観察して、蛍光強度の揺らぎパターンを時間相関解析することで、以下のことがわかります。

粒子の大きさ(直径)

  • 大きい粒子はゆっくリ動く
  • 小さい粒子は速く動く

粒子の濃度

  • 頻繁に出入りすれば濃度が高い
  • まれなら濃度が低い
SMART FCCSの原理を解説した図

 

仕様

本体仕様

製品サイズ 高さ 230 mm × 幅 300 mm × 奥行 520 mm
重量 約 8 kg
電源 AC 100 V、60 W

除振台

製品サイズ 高さ 60 mm × 幅 300 mm × 奥行 520 mm
重量 約 0.8 kg( 2 枚合計)

光学仕様

励起波長(緑) 488 ± 10 nm
励起出力(緑) 10 mW 以上(光源出射端において)
検出用フィルター(緑) 510 〜 560 nm バンドパスフィルター
検出器(緑) PMT
励起波長(赤) 633 ± 10 nm
励起出力(赤) 10 mW 以上(光源出射端において)
検出用フィルター(赤) 665 nm ロングパスフィルター
検出器(赤) PMT
蛍光分光用フィルター 570 nm ロングパスフィルター
対物レンズ 40 倍

解析仕様

マルチプルタウ方式ハードウェア相関器搭載

入力 2 チャンネル
自己相関 2 チャンネル(緑、赤各 1 チャンネル)
相互相関 1 チャンネル
最小サンプリング時間および
自己相関関数時間分解能
640 ns

動作用 PC について

本製品にはソフトが付属しますが、PCは付属しません。動作用 PC に必要なスペックは以下の通りです。

  • Intel Core i5 および互換 CPU 以上
  • 4.00 GB 以上の主記憶
  • 1 GB 以上の 2 次記憶機器
  • Windows 10 またはそれ以降の Windows OS
  • 64 ビット オペレーティング システム、x 64 ベース プロセッサ
  • Net Framework 4.6.1
  • USB-A ポート × 1 以上
品名 メーカー 品番 包装 希望販売価格
SMART FCCS SYSTEM new PMC FCCS02 1 SET
¥7,500,000

商品は「研究用試薬」です。人や動物の医療用・臨床診断用・食品用としては使用しないように、十分ご注意ください。

お問い合わせ

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