Cell Surface Vimentin とは?〜NKp46 ligand の検出〜

ユーザーレポート

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原田 結 先生
Yui Harada

九州大学大学院薬学研究院 革新的バイオ医薬創成学

Products

メーカー:Abnova Corporation (Taiwan) メーカー略号:ABV

 Abnova Corporation (Taiwan) appnote_title_use.jpg

Anti Cell-Surface Vimentin抗体 (84-1)

本製品はCell-Surface Vimentinを認識する抗体で、がん細胞の検出に使用可能です。Abnova社は、MD Anderson Cancer Center(アメリカ)がパテントを有するAnti-CSV モノクローナル抗体(クローン番号:84-1)を、世界で独占的に販売するライセンスを取得しています。この抗体は多数のがん細胞株における、免疫蛍光染色とフローサイトメトリーでの使用が保証されています。

LM7細胞の染色

実験内容

近年、免疫チェックポイント阻害剤の登場により、がんに対する免疫の積極的利用に注目が集まっています。私たちは、それらが共通して利用する “エフェクター” であるT細胞に依存しないモダリティを求めてNatural Killer (NK) 細胞の研究を進めてきました(1)。それは、NK細胞が『MHC Class I(ヒトではHLA)抗原を失った細胞を攻撃する』というMissing-self 仮説から、T細胞が原理的に傷害することが出来ない腫瘍細胞を傷害可能である、という考えに基づいたものでした。NK細胞のバイオロジーが紐解かれていくほどに、その機能の複雑さと臨床での有用性に気付かされてきました。NK細胞は自然免疫に分類され、その名が示す通り T細胞のような教育を受けずとも傷害活性を持つ細胞として発見された経緯から、ともすれば原始的な細胞と考えられることもあります。しかし今ではそれが誤りで、Licensing というプロセスを受けなければならないこと(2)、進化的には最新の細胞であること(3)などが明らかになってきましたが、本題から外れるのでここでは割愛します。

さて、Missing-self 仮説はあながち間違いでは無かったものの、NK細胞にはさらに極めて複雑な “腫瘍細胞認識システム” が備わっていることが明らかになってきました。NK細胞は対象細胞から受け取る “positive signal” と “negative signal” を天秤にかけ、そのバランスによって傷害するか否かを決定していることが今では広く知られるようになっています。前者のレセプターの筆頭は KIR や NKG2A と呼ばれる分子群で、主に HLA-B, C や HLA-E を認識します。KIR による HLA 認識のパターンは AML の治療に用いられる造血幹細胞移植後の予後と強く相関することなどから、精力的に研究が進められています。一方、後者のレセプターも多岐にわたり、NKG2D や NKp30、NKp44、そして本題の Cell Surface Vimentin (CSV) に関わる NKp46 などがよく知られています。

“positive signal” を受け取る NKp46 のリガンドはウイルスに由来するヘマグルチニンであることが知られてきました。これはウイルス感染細胞を積極的に傷害する上で極めてリーズナブルであり、進化の賜物として納得されてきたものでした。ところが、実は我々の細胞自身に由来する “何か” をも認識している可能性が示唆され、細胞膜上にビメンチンが発現し得るという報告(4)が成されて間もなく、それが NKp46 のリガンドであることが示されたのです(5)。そして、それが種々のがん細胞に広く発現していることが MD アンダーソンがんセンターの研究グループによって確認され(6, 7)、感度よくフローサイトメーターで検出可能な抗CSV抗体として世に出てきたのが clone: 84-1 (Abnova社 品番:H00007431-M08) です。

私はこの抗体を PE で標識したものをカスタムで製造して頂き、種々の細胞株での発現と、私たちが再生医療等製品として薬事開発を進める高活性NK細胞(AdoptCell®-NK)による腫瘍細胞認識機構に関する研究に用いています。一点注意したいのは、CSV はどうやらトリプシンに感受性が高く、その剥離操作によって検出が出来なくなる場合があります。そこで、EDTA のみを用いて慎重に剥離を行い、その発現を確認するようにしています。

まだその発現意義については未解明な部分が多い CSV ですが、この clone: 84-1 を用いたデータの集積は、NKG2D や NKp30 のリガンドである MICA/B や B7-H6 のように、悪性腫瘍とその予後との相関や、治療ターゲットとしての研究開発、またNK細胞のバイオロジーを深く理解する上で重要な役割を果たすことが期待できると考えています。

AdoptCell® は株式会社ガイアバイオメディシンの登録商標です。

表. NK細胞が持つ活性化型レセプター
  coupled with ITAM リガンド
NKG2C
CD94, DAP12
0
HLA-E+CMV pep
NKp80
NKp80?
2?
AICL
NKp65
NKp65?
2?
KACL
NKp46
CD3ζ, FcεRIγ
4〜6
Heamaglutinin, vimentin
NKp44
DAP12 x2
2
NKp44L, PCNA
NKp30
CD3ζ x2
4〜6
B7-H6, BAT3 (=BAG6)
KIRs
DAP12 x2
2
HLAs (ABD, FG)
LIRA1
non?
2
HLA-B27 dimer
LIRA2
non?
2
soluble HLA, 切断Ig
CD16
CD3ζ x2
6
Fc (IgG)

NK細胞が持つ活性化型レセプターの中でも ITAM (immunoreceptor tyrosine-based activation motif) を多く持つ NKp46 は極めて重要な分子と考えられ、その Agonistic 抗体を用いたNK細胞活性化培養Kitなども上市されている。生体に備わる NKp46 リガンドである CSV の重要性が伺える。

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図. CSV のフローサイトメーターでの検出
A. Trypsinに感受性のある CSV は、Trypsin による剥離操作で分解される可能性が高く、従って接着系細胞株による実験の際にはその検出に注意を要する。ここに挙げた大腸がん、乳がんのほか多くの細胞株で同様の現象が確認された。
B. 浮遊系である AML 細胞株では CSV を細胞膜上に発現していないものが多いが、2017年現在臨床で広く用いられる化学療法剤 Cytarabine の存在下で細胞膜上の発現が誘導される現象が確認された。NKG2D リガンドについても同様の現象が報告されており、化学療法と NK細胞の関係性の考察が進められている。

参考文献

  1. Saito S, et al. Ex vivo generation of highly purified and activated natural killer cells from human peripheral blood. Hum Gene Ther Methods. Aug;24(4):241-52, 2013.
  2. Kim S, et al. Licensing of natural killer cells by host major histocompatibility complex class I molecules. Nature. Aug 4;436(7051):709-13, 2005.
  3. Parham P, et al. Variable NK cell receptors exemplified by human KIR3DL1/S1. J Immunol. Jul 1;187(1):11-9, 2011.
  4. Moisan E and Girard D. Cell surface expression of intermediate filament proteins vimentin and lamin B1 in human neutrophil spontaneous apoptosis. J Leukoc Biol. Mar;79(3):489-98, 2006.
  5. Garg A, et al. Vimentin expressed on Mycobacterium tuberculosis-infected human monocytes is involved in binding to the NKp46 receptor. J Immunol. Nov 1;177(9):6192-8, 2006.
  6. Satelli A, et al. Universal marker and detection tool for human sarcoma circulating tumor cells. Cancer Res. Mar 15;74(6):1645-50, 2014.
  7. Satelli A, et al. Epithelial-mesenchymal transitioned circulating tumor cells capture for detecting tumor progression. Clin Cancer Res. Feb 15;21(4):899-906, 2015.

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