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記事ID : 35932

FLUOR DE LYS® SIRT 活性アッセイキットシリーズ

ユーザーレポート

伊藤 幸裕 先生

伊藤 幸裕 先生
Yukihiro Itoh

京都府立医科大学大学院医学研究科
統合医科学専攻 医薬品化学

Products

メーカー:Enzo Life Sciences,Inc. メーカー略号:ENZ

Enzo Life Sciences,Inc. こちらをつかってみました!

FLUOR DE LYS® SIRT 1,2,3,5 活性アッセイキット(蛍光)

特異的な HDAC・Sirtuin の阻害剤・活性剤スクリーニング、キネティクス解析にご使用いただける蛍光アッセイキットです。

  • アイソフォーム特異的阻害剤のスクリーニングに
  • 様々な条件下でのカイネティクス解析に

実験内容

 Sirtuin(SIRT)は NAD 依存的タンパク質脱アセチル化酵素で、遺伝子発現や細胞周期など、様々な生命現象を制御しています。ヒト SIRT には 7 種類のアイソフォーム(SIRT1-7)が存在し、それぞれが異なる生命現象や疾患に関与すると考えられています。そのため、アイソフォーム選択的 SIRT 阻害薬は、各アイソフォームの詳しい機能を調べる分子ツールや副作用の少ない治療薬として期待されます。こういった背景の下、私たちは SIRT2 に興味を持ち、SIRT2 選択的阻害薬の創製研究を展開してきました。私たちは SIRT2 の X 線結晶構造1 を基に、候補化合物を設計・合成し、その阻害活性を ENZO Life Sciences 社 の FLUOR DE LYS® SIRT 活性アッセイキットにて評価しました。その結果、図1 に示す化合物を SIRT2 選択的阻害薬として見出しています 1, 2。以下、本アッセイキットを用いた化合物1 の評価について紹介します。

SIRT2 選択的阻害薬の構造
図1. 我々が見出した SIRT2 選択的阻害薬の構造.

 FLUOR DE LYS® SIRT 活性アッセイキットには、SIRT と基質のアセチル化リシンペプチド、developer(脱アセチル化された酵素反応生成物に作用し、蛍光性物質を放出させる試薬)など、必要な試薬はすべて含まれています。そのため、蛍光プレートリーダーさえあれば、SIRT 活性を簡便に測定できます。私たちは、キット付属のマニュアルに従い、1 の SIRT2 阻害活性を評価しました。図2A に示すように、SIRT2 存在下(ctrl: control)における蛍光強度は、SIRT2 非存在下(blnk: blank)の 2.2 倍程度で、その強度比に物足りなさを感じました。しかし、各サンプル間でのバラツキは小さく、SIRT 活性を評価するには十分でした。実際に、1 の SIRT2 阻害活性を評価したところ、1 の濃度依存的に蛍光強度が低下しました。図2A のデータを基に用量反応曲線も描くことが可能で、1 の IC50 値は 0.60 µMと算出できました(図2B)。さらに、SIRT1、SIRT3、SIRT5 に対する阻害活性についても、同シリーズのキットを用いて評価しました。これらのアイソフォームに対しても SIRT2 と同様に評価でき、1 の SIRT1, SIRT3, SIRT5 に対する阻害活性は十分に低いことがわかりました(図2C)。これらの結果から、1 は高活性かつ高選択的な SIRT2 阻害薬であることがわかりました。続いて、化合物1 の酵素阻害速度論解析を行いました。化合物1 は、競合的阻害薬となることを期待して設計したため、1 と基質との競合性について本アッセイキットを用いて解析しました。図2D に示すように、ラインウィーバー・バークプロットを作成した結果、各直線は縦軸上でほぼ交わり、基質との競合性が示唆されました(図2D)。

SIRT 阻害活性評価
図2. FLUOR DE LYS® SIRT 活性アッセイキットを利用した化合物1 の SIRT 阻害活性評価.(A)SIRT2 阻害活性評価.(B)(A)の結果を基に作成した用量反応曲線.(C)SIRT1, SIRT3, SIRT5 阻害活性評価.(D)化合物1 の酵素阻害速度論解析.ラインウィーバー・バークプロット.

 以上のように、私たちは FLUOR DE LYS® SIRT 活性アッセイキットを利用して、SIRT2 選択的阻害薬を見出しました。本稿では割愛しましたが、初期のスクリーニングから一貫して本アッセイキットを利用しました。本アッセイキットは、テクニカルな操作を必要せず、どの SIRTアイソフォームに対しても安定した結果が得られるという点で非常に優れています。なお、SIRT に作用する化合物は阻害薬だけでなく、活性化薬も興味が持たれています。SIRT 阻害薬・活性化薬のスクリーニングをする際には、本アッセイキットを利用してみてはいかがでしょうか。

参考文献

  1. Paolo M, Itoh Y, et. al. Chem. Sci. 9, 6400-6408 (2017)
  2. Paolo M, Itoh Y, et. al. J. Med. Chem. 62, 5844-5862 (2019)

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