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記事ID : 17627

ヒト iPS 細胞由来大脳皮質ネットワークの薬剤応答と可塑性現象の検出

ユーザーレポート

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鈴木 郁郎 先生
Ikuro Suzuki

東北工業大学 大学院工学研究科

Product

  • ヒト iPS 細胞由来大脳皮質ニューロン分化キット (品番:AX0026F)

メーカー:Axol Bioscience Ltd メーカー略号:AXO

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ヒト iPS 細胞由来大脳皮質ニューロン分化キット

健常者由来細胞ヒト iPS 細胞を大脳皮質ニューロンまで分化可能なキット

  • 大脳皮質ニューロンの典型的なマーカーである Tbr1、Ctip2、Brn2、CuX2 などの発現を確認しています。
  • 電気的活性を持つ機能性シナプスや、神経回路を形成できるニューロンに分化させる事ができます。
ヒト iPS 細胞由来の大脳皮質ニューロン分化キット

実験内容

ヒト iPS 細胞由来ニューロンは再生医療のみならず、創薬開発や安全性・毒性試験への応用が期待されています。我々は、Axol Bioscience社のヒト iPS 細胞由来大脳皮質ニューロン(hyCCN, hNPC)を用いて、電気生理学的な薬剤応答性、および神経ネットワークの特徴である可塑性現象の検出を試みました。電気生理学的計測は培養神経ネットワークの活動を非侵襲多点同時計測できる平面微小電極アレイ(MEA)細胞外電位計測システム(Alpha Med Scientific社)を用いました。

培養 2-3 週目から自発活動が観察され、培養日数の経過と共にシナプス伝播による同期バースト発火が観察され、活動頻度が上昇する様子が観察されました[1]。また、長期培養したニューロンの免疫化学染色の結果、大脳皮質で見られる錐体細胞様の形態とシナプス形成、およびプレ・ポストシナプスの共局在を確認しました(図1[1])。ヒト iPS 細胞由来大脳皮質ニューロンは、長期培養が可能で、2 年以上に渡って電気活動をモニタリングすることに成功しました。

図1 ヒトiPS 細胞由来大脳皮質ニューロンと薬理応答
図1 ヒトiPS 細胞由来大脳皮質ニューロンと薬理応答

次に、各種グルタミン酸受容体および GABA 受容体に対する薬剤(Bicuculine, Kainic acid, CNQX, AP-5)を用いて、自発活動の変化(図1)および電気刺激誘発応答を調べたところ、両実験条件において興奮性、抑制性の顕著な薬理応答を示しました[1]。特筆すべき点は、グルタミン酸受容体である AMPA 受容体と NMDA 受容体それぞれの応答が顕著に現れた点です。NMDA 受容体は様々な神経疾患に関与しており、NMDA 受容体の応答を検出できた点は、ヒト iPS 細胞由来ニューロンを用いた創薬開発において非常に重要で期待が持てます。

さらに、神経疾患であるてんかんに着目し、ペンチレンテトラゾールを投与した結果、異常発火(高頻度同期バースト発火)を示すてんかん現象が誘発され、抗てんかん薬であるフェニトイン、バルブロ酸ナトリウム投与において、異常発火が抑制される抗てんかん薬の作用が検出されました(図2[1])。

可塑性現象の誘発は、高頻度電気刺激(HFS)を与え、HFS 前後のネットワーク応答を単発電気刺激に対する誘発応答で評価しました。ネットワーク活動頻度の上昇が1時間程度保持される長期増強(LTP)現象と抑制が維持される長期抑制(LTD)現象が検出されたことから、スパイク数の変化を指標とした可塑性現象をヒト iPS 細胞由来ニューロンから検出できることが明らかになりました[2]

これらの実験結果より、Axol社のヒト iPS 細胞由来大脳皮質ニューロンは、培養日数の経過と共に機能的な各種シナプス受容体を発現しており、興奮性と抑制性のバランスも良好で、電気生理学的な薬剤評価や病態モデルの再現およびヒト中枢ニューロンを用いた可塑性研究に適していると言えます。

図2 PTZ 投与によるてんかん様異常発火の誘発と抗てんかん薬の作用
図2 PTZ 投与によるてんかん様異常発火の誘発と抗てんかん薬の作用

参考文献

  1. A.Odawara et.al, Sci Rep., 6, 26181 (2016)
  2. A.Odawara, H.Katoh et.al, BBRC., 469(4), 856(2016)

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