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技術情報

記事ID : 43226

Applied Biological Materials(APB)社 細胞培養 細胞の生死


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健全な細胞培養物と死滅した細胞を見分けることは、細胞培養を行う上で習得すべき重要な基礎的スキルです。

【目次】

  1. 培養細胞の成長挙動
  2. 細胞の形態
  3. 細胞死の確認
  4. 細胞のカウント
  5. 細胞培養の培地・容器
  6. トラブルシューティングガイド

培養細胞の成長挙動

細胞培養を始める前に注意すべき点として、増殖率や播種密度などの細胞株の成長特性があります。
培養中の細胞の成長は、誘導期、対数増殖期、そして定常期という標準的なパターンをたどります(図1)。実験のために健全な細胞を維持するためには、細胞培養がどの成長段階にあるかを認識することが重要です。

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図1.細胞培養の典型的な成長曲線は、誘導期、対数増殖期、定常期を含むシグモイド (S) 型のカーブを描く

誘導期

解凍後、細胞は新しい培養条件に順応し始め、誘導期に入ります。誘導期の長さは、細胞のストレス状態や使用した播種密度によって異なります。接着性細胞の場合、通常は24時間以内に接着します。

対数増殖期

細胞が回復し活発に分裂し始めると、対数増殖期に入ります。母集団の倍加時間やその他の細胞特性は、この時期に評価する必要があります。通常、細胞は対数増殖期の後半、100%コンフルエントになる前に継代されます。

定常期

細胞が過密状態になると、傷害、老化、アポトーシスの影響を受けやすくなります。この時点では、細胞は定常期にあり、活発に分裂している細胞は全体の10分の1以下です。

細胞の形態

細胞の形態とは、細胞の形状と全体的な外観を意味し、細胞培養の健全性を示す重要な指標となります。
不適切な無菌技術は、細胞株の汚染につながる可能性があるため、都度、細胞の形態を確認することをお勧めします。
細胞培養におけるコンタミネーションの兆候を確認する方法については、こちらの記事をご覧ください。
以下に、一般的な細胞の種類とその典型的な形態を示します。

接着細胞

  • 培養表面へと接着し、単層を形成する。
  • 2つの主要な形態的カテゴリー
    -上皮様 (Epithelial-like):多角形。静止しており、パッチ状に成長する。
    -線維芽細胞様 (Fibroblast-like):細長い形状、双極性または多極性、基質上を移動することができる。

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図2.上皮様の形態を持つ接着細胞

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図3.線維芽細胞様の形態を持つ接着細胞

浮遊細胞

  • 培養液中に自由に浮遊している (単層を形成しない)。
  • 単一の細胞または小さな塊として現れる。
  • リンパ球のような球形。
  • 光が屈折して見える細胞は健康な細胞である。

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図4.死細胞の例

細胞死の確認

細胞死の兆候を早期に注意深く観察し、原因を特定して貴重な培養物の劣化を防ぐことが重要です。
ここでは、細胞死の一般的な兆候をご紹介します。

  • 細胞塊の発生。細胞溶解後、DNAやその他の細胞の残骸が培地に放出され、細胞と一緒に凝集して小さな塊のように見えます。
  • 剥離して丸みを帯びた接着細胞や、小さくて暗い色に見える塊状の浮遊細胞。
  • トリパンブルーを添加すると青く染色される細胞。細胞膜が損傷していると、トリパンブルーが細胞内に入り込み、細胞内のタンパク質が染色されます。

死細胞の例
図5.死細胞の例

細胞のカウント

細胞培養の状態を正確に把握するためには、定期的に細胞を数える必要があります。
細胞数のカウントは、継代や播種に必要な細胞濃度の決定、細胞の成長率のモニタリング、薬剤処理後の細胞の生存率の評価などに不可欠です。
細胞計数には、以下の2つの機器が使用されます。

血球計算盤

  • 手動で細胞をカウントする装置。
  • スライドガラスに特定の寸法のグリッドが刻まれた2つのカウントチャンバーがあり、正確な体積内の細胞の総数をカウントすることができる。

自動セルカウンター

  • より正確に細胞数を測定する方法だが、電気インピーダンス法を用いた場合、死細胞をカウントしてしまうことがある。
  • 細胞が2つの電極間の開口部を通過する際にカウントされる。
  • 血球計算盤による生存率評価と組み合わせて使用可能。

細胞培養の培地・容器

細胞培養用の培地は、健全な細胞の成長に必要な必須栄養素、成長因子、ホルモンなどを提供するものです。
理想的な栄養素が不足している培地は、細胞の付着性や生存率を低下させる要因となる可能性があります。
細胞株によって必要な栄養素は様々です。細胞を培養する際に使用している培地が理想的な培地であるかどうか、その組成を確認することが重要です。

例えば、基礎培地によって、グルコース、アミノ酸、ビタミン、塩類、その他の栄養素の濃度が異なります。また、緩衝剤は、培地のpHを維持するために重要な役割を果たします。
さらに生育環境中のCO2の量に応じて、培地中の炭酸水素ナトリウムの量が変わります。
血清は熱に弱く、熱処理をするとその中に含まれる成長因子が不活性化する可能性があることに留意ください。

培養中に細胞が受けるストレスを最小限にするために、遠心分離機の速度や適切なタンパク質分解酵素の濃度など、培養プロトコルを確認することをお勧めします。

接着性の細胞を扱う場合、一般的に使用されている細胞培養容器のコーティングについて知っておくことが重要です。

  • ポリリジン (品番:TM061) : 陽電荷を帯びた合成ポリマーで、コーティングされたプレートと陰電荷を帯びた細胞膜との間の静電相互作用により、細胞がプレート表面に付着するのを助ける。
  • ポリオルニチン(品番:TM062): 陽性に帯電したアミノ酸の合成鎖で、培養容器のコーティングに使用され、細胞膜とプレートの間の静電的な相互作用によって細胞の付着を促進する。
  • コラーゲン: 哺乳類のタンパク質で、細胞外マトリックスに存在し、結合組織の細胞の接着と成長を可能にする。特定の細胞を確実に接着させるために、細胞培養容器のコーティングにも使用される。
  • フィブロネクチン: 細胞外マトリックス中に存在する糖タンパク質。特定の細胞の接着・増殖を促すためのコーティング剤として使用される。
  • ラミニン: 基底膜に存在する細胞外マトリックスタンパク質で、細胞の接着を助ける働きがある。
  • ゼラチン: コラーゲンを加水分解したもので、細胞を付着させるプレートのコーティング剤として使用される。

トラブルシューティングガイド

細胞を扱うたびに、こまめに詳細な記録を取っておくと、生育に問題が生じたときにその兆候を早期に発見し、原因を追究して将来の事故を防ぐことができます。
下の表を参考にし、トラブルシューティングを迅速に実施ください。

問題 考えられる可能性 解決法
細胞が増殖しない/増殖速度が遅い 培地や血清が誤っている、期限切れ等。 培地はサプライヤーが推奨するものを使用し、必要に応じて補充してください。新しいロットの新鮮な培地を用意し、あらかじめ加温してご使用ください。
マイコプラズマのコンタミネーション。 細胞を廃棄するか、マイコプラズマ除去液で処理してください。作業場所を完全に消毒し、新しい培地をご使用ください。
細胞が100%コンフルエントになった。 細胞が対数増殖期にあるうちに継代ください。
細胞を何度も継代した。 低い継代数の細胞をご使用ください。細胞を保存する際には、継代数の低い細胞を複数のチューブに分けて凍結保存することをお勧めします。
播種密度が低すぎる。 推奨される播種密度をご使用ください。
インキュベーターのCO2濃度または温度が間違っている。 インキュベーターのドアを開けている時間を短くし、インキュベーター内の環境を理想的に保ってください。CO2の供給をご確認ください。ドアの近くにある細胞は成長が遅くなる傾向があるため、インキュベーターの奥の方に細胞を置いてください。
解凍中に細胞が損傷した。 解凍時の推奨事項に正確にお従いください。室温で細胞がDMSOにさらされる時間を最小限にしてください。
細胞数測定が不正確。 正確な細胞数を得るために、細胞が均一に混合されていることをご確認ください。計算結果を再確認ください。
一部の培地成分 (リボフラビン、トリプトファン、HEPES等) は蛍光灯に感光し、細胞毒性のあるフリーラジカルやH2O2に変化する可能性がある。 培地や細胞培養物を暗所に保管ください。
細胞の接着が悪い プラスチック容器に静電気が帯電している。 相対湿度 (RH) が低い場合に発生しやすいです。湿度を上げるか、清潔な湿った布で容器の外側を拭くか、静電気防止装置をご使用ください。開封時に容器をプラスチックパッケージにこすりつけると、帯電量が増加してしまいます。
過剰なトリプシン処理 (トリプシン濃度が高すぎる、または不活化液を加えていない) 。 推奨される継代手順をご確認ください。新鮮な培地またはTrypsin Neutralizing solutionを加えてトリプシンを不活性化し、遠心分離でトリプシンを除去します。
培地に血清や接着因子が十分に含まれていない 培地の組成を確認し、必要に応じて接着因子を加えます。
不均一な細胞の付着や塊 細胞の混合が不十分である。 細胞が十分に再懸濁され、新しい培地に均一に混合されていることをご確認ください。
培地に気泡がある。 ピペットの先端を培養容器の内側に当てながら、培養容器に培地を分注ください。
トリプシンなどのタンパク質分解酵素による過剰分解。 継代のプロトコルと、必要な推奨トリプシン濃度をご確認ください。
細胞が過剰に増殖し、デブリや遊離DNAが蓄積している。 細胞が定常期および死滅期に達する前に継代を行ってください。細胞を継代する際の推奨細胞密度をご確認ください。
培養容器がインキュベーター内の穴の開いた金属棚に直接置かれている。 空のダミー 培養器を一番下に使用することで、棚との直接の接触を避け、より均一な温度分布を作ることができます。
生細胞が少ない 細胞の凍結方法が間違っている。 適切な培地および試薬を用いて、推奨密度で細胞を凍結ください。損傷を与える氷晶の形成を防ぐため、細胞はゆっくりと凍結ください。
細胞の解凍方法が間違っている。 推奨される解凍手順にお従いください。DMSOは室温では毒性があるので、細胞は速やかに融解ください。予め温めておいた培地をご使用ください。細胞を高速でボルテックスや遠心分離しないでください。
細胞が希釈されすぎている。 推奨される密度で播種ください。
細胞が死んでいる トリプシンなどのタンパク質分解酵素による過剰分解。 推奨されているプロトコールに従って細胞を剥離ください。細胞をトリプシンに8-10分以上さらさないでください。細胞の剥離は37℃で行うと早くなります。
過剰増殖。 細胞が100%になる前に、80%コンフルエント前後で継代ください。
環境ストレス。 凍結融解の繰り返し、ボルテックス、高速遠心などは避けてください。
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商品は「研究用試薬」です。人や動物の医療用・臨床診断用・食品用としては
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