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技術情報

記事ID : 45498

QuantSeqを用いた神経炎症、ALS、アルツハイマー病研究の事例紹介神経研究におけるRNAシーケンスの活用事例


神経炎症、アルツハイマー病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの神経疾患研究では、疾患の背景にある分子変化を捉える手法としてRNAシーケンスが広く活用されています。なかでも、遺伝子発現の変化を効率よく解析できるLexogen社のQuantSeqは、病態理解や作用機序の解明を支える手法の一つです。ここでは、QuantSeqを用いたRNA-seq解析が神経研究にどのように活用されているのか、神経炎症、アルツハイマー病、ALSをテーマにした事例を交えてご紹介します。

神経炎症

CRISPRi screens in human iPSC-derived astrocytes elucidate regulators of distinct inflammatory reactive states
Leng K et al., Nat Neurosci (2022), 25(11), 1528−1542
DOI: 10.1038/s41593-022-01180-9

中枢神経系(CNS)に存在するアストロサイトは、さまざまな障害や刺激に応答して反応性を示す特殊な細胞です。しかし、その分子メカニズムについては、これまで十分に理解されていませんでした。そのメカニズムが明らかになれば、炎症性アストロサイト反応のさまざまな側面を選択的に制御する治療法の開発につながることが期待されます。

本研究では、ヒトiPS細胞(hiPSC)由来アストロサイトを用いたCRISPR interferenceスクリーニングと、シングルセル・トランスクリプトーム解析を組み合わせることで、さまざまなサイトカイン刺激によって誘導される炎症性アストロサイトの反応性を解析しました。
その結果、STAT3(炎症シグナル伝達に重要な転写因子)によって促進されるものと、STAT3によって抑制されるものの、2種類の炎症性反応シグネチャーの存在が明らかになりました。

さらに、異なるサイトカイン刺激に応答した際の転写シグネチャーを解析するために、iAstrocytes(hiPSC由来アストロサイト)およびiNeurons(hiPSC由来ニューロン)のバルクRNA-SeqにQuantSeqライブラリー調製キットが用いられました。

その他 参考文献

  1. Phloretin suppresses neuroinflammation by autophagy-mediated Nrf2 activation in macrophages
    Dierckx T et al., J Neuroinflammation (2021), 18(1), 148
    DOI: 10.1186/s12974-021-02194-z
  2. Neuroinflammatory transcriptional programs induced in rhesus pre-frontal cortex white matter during acute SHIV infection
    Hawes CE et al., J Neuroinflammation (2022), 19(1), 250
    DOI: 10.1186/s12974-022-02610-y
  3. Early peripheral blood gene expression predicts 90-day outcomes following subarachnoid hemorrhage
    Knepp B et al., J Neuroinflammation (2025), 22, 286
    DOI: 10.1186/s12974-025-03630-0
  4. PACAP-38 induces transcriptomic changes in rat trigeminal ganglion cells related to neuroinflammation and altered mitochondrial function presumably via PAC1/VPAC2 receptor-independent mechanism
    Takács-Lovász K et al., Int J Mol Sci (2022), 23(4), 2120
    DOI: 10.3390/ijms23042120

ALS(筋萎縮性側索硬化症)

タイトル:How TDP-43 Condensation Modulates its RNA Processing and How This is Relevant for Amyotrophic Lateral Sclerosis

登壇者:Martina Hallegger

ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、脊髄や脳の神経細胞が進行性に変性していく致死性の運動ニューロン疾患です。
この疾患は、2014年に大きな話題となった「アイス・バケツ・チャレンジ」によって広く社会に知られるようになりました。この取り組みは、疾患の認知向上にとどまらず、研究資金の拡大にも寄与しました。実際に、このキャンペーンによる寄付はALS Associationの年間研究助成を大幅に押し上げ、その間にALS研究は着実な進展を見せました。患者さんへのケア体制も広がり、連邦政府による研究投資も増加しました。

Halleggerらはその中でも、ALSの病態形成に深く関与する中心的なRNA結合タンパク質(RBP)であるTDP-43に着目しました。研究チームは複数の細胞系でTDP-43の変異体を作製し、このRBPの凝縮特性が変化する変異を導入しました。

そのうえで、UVクロスリンキング免疫沈降法(iCLIP)およびQuantSeqを用いたRNA-seq解析を行った結果、TDP-43の凝縮が、GUリッチモチーフの高度に多価な配置など、特徴的な配列特性をもつ一部のRNAに対して、効率的な集合と機能発揮を促進することが示されました。
この研究は、ALSの分子病態の理解を深めるうえで重要な知見を提供しています。

アルツハイマー病

タイトル:Transcriptomic analysis of Autosomal Dominant Alzheimer's Disease

登壇者:Oscar Harari

アルツハイマー病は神経変性疾患であり、認知症症例の約60〜70%を占める主要な原因です。
本疾患は多因子性疾患であり、さまざまなリスク因子が複雑に相互作用することで、複数の生物学的プロセスにまたがる分子ネットワークに多面的な変化を引き起こします。

アルツハイマー病の理解において大きな節目となったのが、アミロイドβ前駆体タンパク質(APP)およびPSEN1、PSEN2遺伝子の変異が、メンデル型アルツハイマー病を引き起こすことの発見でした。これらの遺伝子変異は、病態形成の初期機序や関連経路を解明するうえで重要な手がかりとなっています。
さらに注目すべきことに、これらの遺伝子の変異はそれぞれ異なるトランスクリプトーム・プロファイルをもたらし、変異保有者は非保有のきょうだいとは異なるクラスターを形成することが示されています。近年では、神経細胞およびグリア細胞それぞれに特異的な経路が病態に寄与していることを支持する新たな証拠も得られていますが、遺伝子座と分子変化がどのように共通ネットワークとして整理されているのかについては解明されていません。

Oscar Harariの研究グループは、PSEN1、PSEN2、APP遺伝子にメンデル型変異をもつアルツハイマー病患者の死後脳を対象に、細胞種別のトランスクリプトーム解析と共発現ネットワーク解析を組み合わせて研究を進めました。
デジタル・デコンボリューション手法を用いることで、細胞種特異的な発現情報を取得し、1,500例を超えるアルツハイマー病および非認知症対象のコホートにおいて、ニューロン、ミクログリア、オリゴデンドロサイト、アストロサイトの分布を評価しました。

その結果、細胞種の分布差を補正した発現データをもとに遺伝子制御ネットワークを構築し、早発型の常染色体優性アルツハイマー病と、遅発型孤発性アルツハイマー病の両方に関連するとされる変異をもつ遺伝子群(PSEN1、SOD1、BACE1、PICALM、SLC4A2 など)を含むモジュールが同定されました。

この研究では、細胞種分布の違いを補正した遺伝子発現プロファイリングを行う前段階として、3′ mRNA−Seqライブラリーの調製にQuantSeqが使用されました。

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