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研究用

2022年ノーベル化学賞受賞で注目 特集:クリックケミストリー

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クリックケミストリー2022年のノーベル化学賞はバリー・シャープレス氏,モーテン・メルダル氏およびキャロライン・ベルトッツィ氏によるクリックケミストリー(Click Chemistry)の研究業績に授与されることが決定しました 。

第一世代のクリックケミストリー:CuAAC

20世紀の変わり目頃、バリー・シャープレス氏は、ビルディングブロックが「簡単に」はまり合うような化学的変換の一種を研究していました。バリー・シャープレス氏とモーテン・メルダル氏は、互いに独立して、「クリックケミストリー」と呼ばれる、銅触媒によるアジド-アルキン1,3-双極子環状付加反応を発見しました。この反応は、さまざまな分野で幅広い応用性があり、現在最も広く使用されている結合技術です。銅触媒によるアジド-アルキン環化付加により、1,4-二置換異性体が得られます。

銅触媒によるアジド-アルキン環化付加反応
図1:銅触媒によるアジド-アルキン環化付加反応により、1,4-二置換トリアゾールが得られる。

注目すべきは、ルテニウムがアジドとアルキンの間の 1,3-双極子環状付加を触媒して、代わりに 1,5-二置換位置異性体を生成することもできるという事実です。 しかしながら、銅の存在は、高い細胞毒性、タンパク質の望ましくない酸化、ナノ結晶の発光特性の阻害などのいくつかの理由により、この反応のin vivoでのアプリケーションを制限してしまいます。

第二世代のクリックケミストリー:SPAAC

その後、キャロライン・ベルトッツィ氏により、クリック技術は新たな次元に推し進められ、正常な細胞機能を妨げることなく生体に適合するクリック反応(=生体直交型クリック反応:bioorthogonal Click reactions)が開発されました。 いわゆる銅を含まないひずみ促進型アジド-アルキン環化付加(strain-promoted azide-alkyne cycloaddition:SPAAC)は、銅を含まないクリック反応として、幅広い研究分野で広く利用されています。しかしながら、シクロオクチンを使用する場合には、その高い反応性に加えて、保存中及び実験中に熱分解および(または)オリゴマー化を引き起こすという欠点もあります。さらに、タンパク質やペプチドのシステイン残基などの生体分子内チオールと競合的に起こる付加反応は、それらの生体直交性を弱めることになり得ます。

一方で、比較的新しく開発された4,8-diazacyclononynes(DACN)は、高い熱的及び化学的安定性を有し、高い反応性と親水性を示し、さらにynophilesに対する高い選択性も示します。

SPAACの概略図
図2:SPAACの概略図

第三世代のクリックケミストリー:IEDDA

テトラジンライゲーションは、銅を含まない、迅速かつ完全な生体直交性型のクリックケミストリーの選択肢を提供することができます。機構的には、この反応はテトラジンとトランス-シクロオクテン(TCO)、シクロプロパンまたはノルボルネン等の歪みアルキンとの間のinverse electron-demand Diels-Alder環状付加反応を介して進行します。続いて二窒素の脱離下でretro-Diels-Alder反応が進行し、この反応は不可逆的になります。その他の利点として、この反応は非常に低濃度で反応性に優れており、水系溶媒中で行うことができます。

テトラジンの一般的な反応パートナー
図3:テトラジンの一般的な反応パートナー

広く用いられているテトラジンには、主に6-メチル置換テトラジン(MeTz)と6-水素置換テトラジン(HTz)の2種類があります。MeTzは高い安定性を示すとともに、TCO誘導体との反応速度論が他の生体直交型反応ペアよりも速い(約1000M-1s-1)ことが知られています。HTzは、苛酷な反応条件に対しては安定性および耐性が低いですが、in vivoイメージングのような用途ではより速い反応速度(最大30000M-1s-1)を示します。

現在、クリックコンジュゲーションの技術の応用は、イメージングや創薬設計からセンサーの開発まで多岐にわたり、ケミカルバイオロジー、材料科学、表面化学、高分子化学など多様な分野に及んでいます。

Cosmo Bio would like to acknowledge and thank the Iris Biotech GmbH, Inc. for providing Click Chemistry information presented here.

参考文献
  1. A Stepwise Huisgen Cycloaddition Process: Copper(I)-Catalyzed Regioselective “Ligation” of Azides and Terminal Alkynes; V. V. Rostovtsev, L. G. Green, V. V. Fokin, K. B. Sharpless; Angew. Chem. Int. Ed. 2002; 41: 2596-2599. https://doi.org/10.1002/1521-3773(20020715)41:143.0.Co;2-4
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  6. Heteroatom-embedded Medium-Sized Cycloalkynes: Concise Synthesis, Structural Analysis, and Reactions; R. Ni, N. Mitsuda, T. Kashiwagi, K. Igawa, K. Tomooka; Angew. Chem. Int. Ed. 2015; 54: 1190-1194. https://doi.org/10.1002/anie.201409910
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  8. Inverse electron demand Diels-Alder (iEDDA)-initiated conjugation: a (high) potential click chemistry scheme; A. C. Knall, C. Slugovc; Chem Soc Rev 2013; 42: 5131-42. https://doi.org/10.1039/c3cs60049a
  9. Highly accelerated inverse electron-demand cycloaddition of electron-deficient azides with aliphatic cyclooctynes; J. Dommerholt, O. van Rooijen, A. Borrmann, C. F. Guerra, F. M. Bickelhaupt, F. L. van Delft; Nat Commun 2014; 5: 5378. https://doi.org/10.1038/ncomms6378
  10. Inverse electron demand Diels-Alder (IEDDA) reactions in peptide chemistry; M. Pagel; J. Pept. Sci. 2019; 25: e3141. https://doi.org/10.1002/psc.3141
  11. Tetrazine-Based Cycloadditions: Application to Pretargeted Live Cell Imaging; N. K. Devaraj, R. Weissleder, S. A. Hilderbrand; Bioconjug. Chem. 2008; 19: 2297-2299. https://doi.org/10.1021/bc8004446
  12. https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2022/popular-information/?amp;amp [17.10.2022]

商品リスト

IRIS社では、TBTA(RL-2010)、THPTA(RL-2210)などの関連する試薬と同様に、様々な保護基を有する多様なアジド及びアルキンビルディングブロックを提供しています。これらの化合物のいくつかは、組換え合成、特にアンバーサプレッションに基づく直交系を用いた非中性タンパク質翻訳によってペプチド及びタンパク質に組み込むことができますが、固相ペプチド合成に適しているものもあります。

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1,3-双極子SPAAC反応によるアジドのMono-DBCO-Nanogold® 標識を示す概略図
1,3-双極子SPAAC反応によるアジドのMono-DBCO-Nanogold® 標識を示す概略図

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The click in click chemistry
The "click" in Click Chemistry.

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商品は「研究用試薬」です。人や動物の医療用・臨床診断用・食品用としては使用しないように、十分ご注意ください。

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