蛍光測定によって糞便中のムチンを定量化するキットです。
背景
ムチン (Mucin) は糖タンパク質の一種で唾液、涙、胃液、腸液などの粘液の主成分です。基本構造は分子量100万〜1000万の糖を多量に含む糖タンパク質で、 10〜80残基のペプチドの繰り返し構造をコアとし、セリン (Ser) またはスレオニン (Thr) の水酸基に対し、糖鎖の還元末端のN-アセチルガラクトサミン (GalNAc) が、O-グリコシド 結合により、高頻度で結合しています(図1参照)。
ペプチド骨格に糖鎖が枝状に結合した分子で、枝状の糖鎖の構造が不均一であることから多様性を生み、これによって多彩な生理機能を実現しています。 この中には特異的分子認識機能を持っておりウィルスや菌などの表面にあるタンパク質などを認識する糖鎖も知られています。このような性質から腸管においては、ウィルス、病原菌、および菌体由来の毒が腸管壁 を超え血中に移行することを阻止する働き、すなわち腸管バリア機能物質としても位置付けられています(図2参照)。
使用目的
- アルカリ条件下で O-グリカンをβ脱離で分解し、同時に糖鎖還元末端に蛍光ラベルさせることで得られる蛍光強度を測定することにより、糞便中のムチン含量を測定することが可能です。
- 機能性食品の開発や腸内フローラ、食品系、農学系の研究等に利用可能です。
構成内容
- 緩衝液A: 100 mL 用×3 個
- 緩衝液B: 25 mL×1 本
- 緩衝液C: 25 mL×1 本
- 試薬A: 1.0 mL×1 本
- 試薬B: 1.5 mL×2 本
- 標準液(N-アセチルガラクトサミン:250 μg/mL): 1.0 mL×1 本
- 酵素溶液: 1.5 mL×1 本
原理 と 方法
糞便中のグルコシダーゼを熱変性させムチンの分解を阻止する。 |
ムチンを粗抽出する。 |
酵素溶液を用いて食餌由来のデンプンを分解する。 |
エタノール沈殿法でムチンを精製する。 |
精製されたムチンに試薬Aを加えアルカリ条件下で熱処理する。 (アルカリ処理によって生じるムチンの糖鎖還元末端に試薬Aが反応して蛍光を発します)※ |
緩衝液Cを添加後、蛍光を測定する(励起:336 nm、蛍光:383 nm)。 |
※この時、N-アセチルガラクトサミンを標品として同時に反応させることで、ムチン含量(N-アセチルガラクトサミン当量として)を定量化出来ます。
実験例
ポリフェノール投与が高脂肪食摂取ラットの腸内環境におよぼす影響
図1 ムチン定量用検量曲線 |
図2 糞便中のムチン含量 |
※糞便の前処理に関する参考文献
- Tatsuya Morita, Hiroki Tanabe, Kimio Sugiyama, Seiichi Kasaoka, Shuhachi Kiriyama. "Dietary resistant starch alters the characteristics of colonic mucosa and exerts a protective effect on trinitrobenzene sulfonic acid-induced colitis in rats" Biosci Biotechnol Biochem 2004 Oct;68(10):2155-64. PMID: 15502362 doi: 10.1271/bbb.68.2155.
糞便ムチン測定キット
品名 | メーカー | 品番 | 包装 | 希望販売価格 |
---|---|---|---|---|
糞便ムチン測定キット / Fecal Mucin Assay Kit |
CSR | FFA-MU-K01 | 1 KIT [100 TEST] |
¥46,000 |
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