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microRNA(miRNA)は21-25塩基(nt)長の1本鎖RNA分子であり真核生物において遺伝子の転写後発現調節に関与します。ヒトゲノムには1000以上のmiRNAがコードされていると考えられています。miRNAはその標的mRNAに対して不完全な相同性をもって結合し、一般に標的遺伝子の3'UTRを認識して、標的mRNAを不安定化するとともに翻訳抑制を行うことでタンパク質産生を抑制します。miRNAが介する転写抑制は、発生、細胞増殖および細胞分化、アポトーシスまたは代謝といった広範な生物学的プロセスに重要な役割を担うことが知られています[1]。

microRNA(miRNA)経路

microRNA(miRNA)は、2つの連続したプロセスを経て生合成されます。Primary miRNA転写物(pri-miRNA)は、ステム-ループのヘアピン構造を1つまたは複数もち、その多くはPol IIを介した転写により産生します。典型的なmiRNAの成熟経路における最初のステップでは、pri-miRNAはマイクロプロセッサ複合体により切断されます。RNase III系酵素であるDroshaにより、ヘアピン形態をとり、かつ70塩基程度の中間前駆体であるprecursor miRNA (pre-miRNA)が産生します。その後、pre-miRNAはExportin5を介して核より細胞質へと移送されます。細胞質では別のRNaseIII酵素であるDicerによりmiRNA生合成の2段階目のプロセシングが触媒され、2本鎖mature miRNAが産生します。2本鎖mature miRNAは、多くの場合それぞれprecursor miRNAのうちヘアピンを挟んだ2つのステム部分に由来します。pre-miRNAより2つのmature miRNAが発現する場合において、その発現量が顕著に高いものを"miR-xx"、顕著に低いものを"miR-xx*と表記します。ただし、どちらがdominant か不明な場合は、precursor の5' 末端側から発現するものに"-5p"、3' 末端側から発現するものに"-3p" を付加し、”hsa-miR-21-5p”,”hsa-miR-21-3p”のように表記します。最近のmiRBase のアップデートでは,数字および数字+"*" で表記されていた配列が"-5p" と"-3p" に名称変更するケースが非常に多くなっています。2本鎖miRNAはArgonateを含むRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に認識され取込まれます。Ago::miRNA複合体はその後RISCローディング複合体より解離してRISC複合体コアとなり、特定標的mRNAの転写後遺伝子発現抑制調節に関与します。

miRNA(microRNA)とは

図1. micoRNA(miRNA)のプロセッシング

近年同定された短鎖RNAのひとつであるmiRNAは、生物工学に新たな見識を与えています。miRNAは比較的近年に発見され認識されたものであるにもかかわらず、遺伝子の転写後調節を行う最も重要な調節因子であると考えられています。また、種々の研究報告より、miRNAはタンパク質をコードする遺伝子のうち30%以上のものに対してその発現調節を行うことが予想されています[3]。miRNAの生合成、遺伝子発現制御のメカニズムおよび機能に関する知見を蓄積することは、複雑な遺伝子調節ネットワークを理解する上で新たな次元を加えることにつながるでしょう。miRNAは特定のがん型、かつ特定のステージにおいて特異的な発現様式を示し、また多数の疾患やウイルス感染において重要な役割を担うことが報告されています。これらの結果はmiRNAが疾患診断の新規バイオマーカーや予後マーカーとして機能する可能性や、miRNAを用いた遺伝子治療の可能性を示唆するものといえます。

1. Sci china Ser C-Life Sci, 2009, 52(4):323-330
2. Annu. Rev. Cel. Dev. Biol. 2007. 23:175-205
3. Virchows Arch. 2008. 452:1-10
4. J. Cell. Mol. Med. 2008. 12(1): 3-21

microRNA(miRNA)実験を始めるにあたって

microRNA (miRNA)研究の実験アプローチ方法例を図 2に示し、これらを使って実験を進める際のポイントを以下にご紹介します。コスモ・バイオではこれらをサポートする実験ツールを多数準備ご用意しておりますので、各製品ページをご参照ください。

miRNA 研究の実験アプローチ方法例
図.2 miRNA 研究の実験アプローチ方法例

 

(1) miRNA 発現プロファイリング

miRNA microarrayやパネルタイプのmiRNA qPCR プレートを利用して、目的の細胞・組織における各 miRNAの発現レベルを調べることにより、実際に発現しているmiRNAやその差異を知ることができます。次世代シークエンシングによる網羅的な配列解析も広く行われています。

■ miRNA 発現プロファイリング用qPCR製品

■ 次世代シークエンシング用製品

 

(2) miRNAの検出・定量

プロファイリングの後には実際にmiRNA がどの程度またはどのように発現しているか、個別の検証データが必要な場合もあります。この時、実験の目的に応じて以下の点を考慮します。

  • • 定量的または定性的
  • • どのmiRNA形態 ( mature, precursor, primary ) を検出したいか
  • • 類似 miRNA 識別の必要性
       例えば、 mature form の miR-196a と miR-196b は1塩基のみ異なり、
       mature miR-196a には2つの precursor mir-196a-1 と mir-196a-2 が存在。

 

■ 個別のmiRNA 定量用qPCR製品

■ miRNAscope™ in situ hybridization アッセイ

 

(3) miRNAの機能解析

miRNAインヒビターなどを用いて、miRNAの機能を抑制する方法と、miRNA mimic(オリゴ)やpre-miRNA発現プラスミドなどを使用してmiRNAを過剰発現する方法があります。また、mimicやインヒビターのライブラリーを使用して機能性スクリーニングを実施することも行われています。

■ 機能阻害実験用製品(インヒビター) --- miRNAにインヒビターを結合してその活性を阻害。
miRNAインヒビターを用いて miRNA を阻害し、標的遺伝子の発現量の変化や表現型への影響を確認します。

■ miRNA過剰発現用製品 --- miRNAを強制発現し、標的遺伝子の発現レベルへの影響、ならびに表現型を確認。
・ miRNA mimic製品(合成 RNA オリゴ)
Mature miRNA (二本鎖) に相当する配列の合成 RNA(miRNA mimic)を細胞に導入し、その影響を確認します。siRNAを使用した実験と同様、予備実験を行い細胞への導入条件を検討します。

pre-miRNA発現ベクター(プラスミド)
precursor miRNA を発現するベクターまたはウイルス粒子を細胞に導入し、その影響を確認します。

ORIGENE(ORG)社 microRNA(miRNA)発現プラスミド FAQ の情報もご参照ください。

 

(4) miRNAの標的遺伝子の予測

miRNAが標的する遺伝子を予測するためのアルゴリズムがいくつか公開されていますが、miRNAはその特性が複雑なため、ターゲット配列の認識様式は未だ研究途上にあります。
公開されているmiRNAの標的遺伝子の予測アルゴリズムを以下にご紹介します。

miRnada TargetScan MicroCosm DIANA

 

(5) miRNA ターゲット検証

miRNA の機能検証や標的遺伝子探索方法として、ルシフェラーゼをはじめとしたレポーターベクターシステムを利用した方法が広く行われています。弊社では、各 miRNAがターゲットする遺伝子の3’UTR領域をあらかじめ組み込んだmiRNA機能検証用のクローンを多数ご用意しています。

■ miRNA の機能検証用製品

より詳細な情報を RNAiハンドブック (PDF) に掲載しています。カタログ請求よりお申込みください。

商品は「研究用試薬」です。人や動物の医療用・臨床診断用・食品用としては使用しないように、十分ご注意ください。

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