ページの本文へ移動

記事ID : 46597
研究用

TLR(Toll様受容体)の伝達経路を容易にモニタリング可能 TLR(Toll様受容体)レポーター細胞株


InvivoGen社 TLR(Toll様受容体)レポーター細胞株のシグナル伝達経路例
図1:TLRレポーター細胞株のシグナル伝達経路例

TLR(Toll様受容体)は、自然免疫の初期段階において病原体の侵入を感知する重要なセンサーです。

病原体に特徴的な分子パターンを感知し、TLRシグナル経路が刺激されると、NF-κBIRF 等の転写因子が活性化され、炎症性サイトカインやインターフェロン産生を誘導します。加えて、適応免疫の誘導にも関与しています。

InvivoGen は、TLR(Toll様受容体) を介したシグナル伝達経路を容易にモニタリングするための、さまざまな ヒトおよびマウス細胞株 を提供しています。

本レポーター細胞は、これら転写因子により誘導されるレポーター遺伝子を発現しており、活性化に応答して SEAP(分泌型アルカリホスファターゼ) および/または Lucia(分泌型ルシフェラーゼ) を発現するように設計されています。両方のレポータータンパク質は培養上清に分泌されるため、検出試薬を用いてシグナル経路の活性化を容易に検出できます。

TLR(Toll様受容体)レポーター細胞株 商品一覧 は<目次>の 商品選択ガイド からご確認ください。

TLR(Toll様受容体)とは?

TLR(Toll様受容体)は、侵入してくる病原体を感知することで、自然免疫系の初期反応において重要な役割を果たしており、体内由来の危険信号の認識にも関与しています。

ヒトTLRはショウジョウバエのTollタンパク質に由来する進化的に保存された受容体であり、微生物感染に対する防御に重要であることが発見されております[1]。

また、TLRは、微生物病原体に特有の 病原体関連分子パターン(PAMP)や、壊死または死にかけた細胞から放出される 損傷関連分子パターン(DAMP)として知られる、高度に保存された構造モチーフを認識します。

PAMP には、リポ多糖(LPS)、ペプチドグリカン(PGN)、リポペプチド などの細菌の細胞壁成分、さらには、鞭毛タンパク質(フラジェリン)、細菌DNA、ウイルスの二本鎖RNAなどが含まれます。

一方、DAMP には、熱ショックタンパク質などの細胞内タンパク質や、細胞外マトリックス由来のタンパク質断片など が含まれます。

TLRが対応するリガンド(PAMP または DAMP)によって刺激されると、シグナル伝達カスケードが開始され、転写因子である AP-1、NF-κB、インターフェロン調節因子(IRF)など が活性化されます。TLRによるシグナル伝達は、インターフェロン(IFN)、炎症性サイトカイン、適応免疫応答を誘導するエフェクターサイトカインなど、さまざまな細胞応答を引き起こします。

TLRの構造と分布

TLRは I 型膜貫通タンパク質 で、ロイシンリッチリピート(LRR)を含む細胞外ドメインと、Toll/IL-1受容体(TIR)ドメイン と呼ばれる保存領域を持つ細胞質末端を特徴とします。

主に脾臓や末梢血白血球など免疫機能に関与する組織、および肺や消化管など外界にさらされる組織で発現しており、その発現プロファイルは、組織や細胞の種類によって異なります。ほとんどのTLRは細胞膜上に局在していますが、TLR3、TLR7、TLR9は例外で、これらはエンドソーム内に存在します[2]。

TLRの種類と認識するリガンド

現在までに、ヒトではTLR1〜TLR10の10種類マウスではTLR1〜TLR9に加え、TLR11、TLR12、TLR13(TLR10の相同遺伝子を欠く)の計12種類 のTLRが同定されており、それぞれ異なるリガンドを認識します。

代表的な認識リガンドは以下のとおりです。

TLR2
グラム陽性菌由来の細菌性リポタンパク質、リポマンナン、リポタイコ酸など
TLR3
ウイルス由来の二本鎖RNA
TLR4
リポ多糖(LPS)
TLR5
細菌性鞭毛タンパク質(フラジェリン)
TLR7 / TLR8
一本鎖RNA(ssRNA)
TLR9
非メチル化CpG DNA
TLR11 / TLR12
尿路病原性大腸菌[3] や、Toxoplasma gondii 由来の プロフィリン様タンパク質[4]

また、TLRは互いに ヘテロダイマーを形成 することで、認識できるリガンドの種類(特異性)を広げていると考えられています。例えば、TLR2とTLR6の二量体はジアシル化リポタンパク質への応答に、TLR2とTLR1の二量体はトリアシル化リポタンパク質の認識に必要です[5]。

TLRの特異性は、LPSに反応してTLR4と複合体を形成する MD-2 や CD14 などのさまざまなアダプター分子やアクセサリ分子によっても影響を受けます[6]。

TLRシグナル伝達経路

TLRシグナルは大きく「MyD88依存性経路」「MyD88非依存性経路(TRIF依存経路)」の2つに分けられます。

両経路はいずれも転写因子を活性化し、サイトカインやインターフェロンの産生を誘導しますが、使用するアダプター分子と最終的な応答が異なります。

1. MyD88依存性経路

この経路はTLR3を除くほぼすべてのTLRで利用され、主に 炎症性サイトカインの産生 を誘導します[7]。

リガンド結合によりTLRが活性化されると、TLRはホモまたはヘテロ二量体を形成し、細胞質側のTIRドメインを介してアダプタータンパクであるMyD88をリクルートします。続いてIRAK4がリン酸化によってIRAK1を活性化し、TRAF6と結合します。その後、TRAF6のユビキチン化とそれに続くTAK1の活性化を経て[8-10]、NF-κBおよびAP-1が活性化します。

複数のTLRシグナル伝達経路を表した図
図2:TLRシグナル伝達経路

これにより、TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-12 などの炎症性サイトカインが産生されます。TLR2やTLR4では、MyD88のリクルートにTIRAP/Malが補助的に関与し、各TLRに固有の応答性を与えています [11]。

2. MyD88非依存性経路(TRIF依存性経路)

一方、TLR3および一部のTLR4シグナルでは、MyD88を介さずにTRIF(またはTRAM)がアダプターとして働きます[12,13]。

この経路ではTBK1やIKKεを介してIRF3を活性化し[14]、Ⅰ型インターフェロン(IFN-βなど)の産生と樹状細胞の成熟 に関与します。

*TIRAP (TIR-associated protein), Mal (MyD88 adaptor-like protein), TRIF (TIR domain-containing adaptor protein-inducing IFN-β), TRAM (TRIF-related adaptor molecule)

TLR研究の意義と今後の展望

近年TLRの機能解明が大きく進展しています[15]。TLRは、自然免疫を活性化して病原体からの防御を担うとともに、獲得免疫応答の誘導にも不可欠な受容体です。一方、そのシグナルが過剰に活性化すると、炎症性疾患や免疫疾患、さらにはがんの発症・進行にも関与することが知られており[16]、TLR遺伝子の一塩基多型(SNPs)と特定の疾患との関連も報告されています。

現在、TLRを標的とした創薬研究が進展しており、自然免疫を制御することで炎症疾患やがん治療への応用が期待されております。

TLRレポーター細胞株の特長と商品データ例

TLRレポーター細胞株の特長

  • 代表的なPRRリガンドによって機能検証済み
  • 生存率、安定性、マイコプラズマ陰性について徹底的に試験済み
  • SEAPレポーター活性およびLuciaルシフェラーゼで容易に評価可能

商品データ例

商品選択ガイド

TLR 細胞株として、以下 3 つのファミリーを取り揃えております。

内因性TLR発現
ヒトTHP-1単球またはマウスRAW-264.7マクロファージにおける内因性TLR遺伝子発現を特徴とする細胞株。
TLR過剰発現(OE)
ヒトHEK293胎児腎癌またはヒトTHP-1単球において、ヒトまたはマウスTLR遺伝子を安定的に発現するようにトランスフェクトされた細胞株。
TLRノックアウト(KO)
ヒトTHP-1単球またはマウスRAW-264.7マクロファージにおいて、ヒトまたはマウスTLR遺伝子の発現がノックアウトされた細胞株。

ご参考までに、TLR過剰発現(OE)細胞株のうち、ヒトHEK293由来のHEK-Blue™ TLR細胞を例に、各TLRの種類に対応する代表的なリガンドおよび細胞情報を一覧でまとめております。

TLRの種類 代表的なリガンド種別 細胞品名(品番) パスウェイ レポーター
遺伝子名
コントロール
リガンド例(品番)
TLR2/TLR1 微生物由来リポタンパク質(トリアシル化リポペプチド) HEK-Blue™ hTLR2
(HKB-HTLR2)
NF-κB SEAP Pam3CSK4(TLRL-PMS)
TLR2/TLR6 微生物由来のリポタンパク質(ジアシル化リポペプチド) HEK-Blue™ hTLR2
(HKB-HTLR2)
NF-κB SEAP FSL-1(TLRL-FSL)
TLR3 二本鎖RNA(dsRNA) HEK-Blue™ hTLR3
(HKB-HTLR3)
NF-κB SEAP Poly(I:C) HMW
(TLRL-PIC)
TLR4 リポ多糖(LPS) HEK-Blue™ hTLR4
(HKB-HTLR4)
NF-κB SEAP LPS-EB(TLRL-EBLPS)
LPS-PG(TLRL-PGLPS)
TLR5 フラジェリン(鞭毛タンパク質) HEK-Blue™ hTLR5
(HKB-HTLR5)
NF-κB SEAP FLA-ST(TLRL-STFLA)
TLR7 一本鎖RNA(ssRNA) HEK-Blue™ hTLR7
(HKB-HTLR7V2)
NF-κB SEAP R848(TLRL-R848-1)
CL307(TLRL-C307)
TLR8 一本鎖RNA(ssRNA) HEK-Blue™ hTLR8
(HKB-HTLR8)
NF-κB SEAP R848(TLRL-R848-1)
TL8-506(TLRL-TL8506)
TLR9 CpG オリゴヌクレオチド(ODN) HEK-Blue™ hTLR9
(HKB-HTLR9)
NF-κB SEAP ODN 2006(TLRL-2006)
ODN2216(TLRL-2216)

商品ラインアップ

HEK-Blue™ TLR細胞

品名 メーカー 品番 包装 希望販売価格
HEK-BlueTM hTLR2 cells詳細データ ING HKB-HTLR2 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
¥386,000
HEK-BlueTM hTLR3 cells詳細データ ING HKB-HTLR3 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
¥386,000
HEK-BlueTM hTLR4 cells詳細データ ING HKB-HTLR4 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
¥386,000
HEK-BlueTM hTLR5 cells詳細データ ING HKB-HTLR5 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
¥386,000
HEK-BlueTM hTLR7 cells詳細データ ING HKB-HTLR7V2 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
¥386,000
HEK-BlueTM hTLR8 cells詳細データ ING HKB-HTLR8 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
¥386,000
HEK-BlueTM hTLR9 cells詳細データ ING HKB-HTLR9 1 VIAL
[3-7 x 10e6 cells]
¥386,000

関連商品

【使用文献】
  1. Medzhitov R. et al., 1997. A human homologue of the Drosophila Toll protein signals activation of adaptive immunity. Nature, 388(6640):394-7.
  2. Nishiya T. & DeFranco AL., 2004. Ligand-regulated chimeric receptor approach reveals distinctive subcellular localization and signaling proper ties of the Toll-like receptors. J Biol Chem. 279(18):19008-17.
  3. Zhang D. et al., 2004. A toll-like receptor that prevents infection by uropathogenic bacteria. Science . 303:1522-1526.
  4. Lauw FN. et al., 2005. Of mice and man: TLR11 (finally) finds profilin. Trends Immunol . 26(10):509-11.
  5. Ozinsky A. et al., 2000.The repertoire for pattern recognition of pathogens by the innate immune system is defined by cooperation between toll-like receptors. PNAS USA , 97(25):13766-71.
  6. Miyake K., 2003. Innate recognition of lipopolysaccharide by CD14 and toll-like receptor 4-MD-2: unique roles for MD-2. Int Immunopharmacol . 3(1):119-28.
  7. Adachi O. et al., 1998. Targeted disruption of the MyD88 gene results in loss of IL-1- and IL-18-mediated function. Immunity . 9(1):143-50.
  8. Sun L. et al., 2004. The TRAF6 ubiquitin ligase and TAK1 kinase mediate IKK activation by BCL10 and MALT1 in T lymphocytes. Mol Cell . 2004 14(3):289-301.
  9. Keating SE. et al., 2007. IRAK-2 participates in multiple Toll-like receptor signaling pathways to NFκB via activation of TRAF6 ubiquitination. J Biol Chem . 282: 33435-33443.
  10. Kanayama A. et al., 2004. TAB2 and TAB3 activate the NF-kappaB pathway through binding to polyubiquitin chains. Mol Cell . 15(4):535-48.
  11. Horng T. et al., 2002.The adaptor molecule TIRAP provides signalling specificity for Toll-like receptors. Nature . 420(6913):329- 33.
  12. Yamamoto M. et al., 2002. Cutting edge: a novel Toll/IL-1 receptor domain-containing adaptor that preferentially activates the IFN-beta promoter in the Toll-like receptor signaling. J Immunol . 169(12):6668-72.
  13. Yamamoto M. et al., 2003. TRAM is specifically involved in the Toll-like receptor 4-mediated MyD88-independent signaling pathway. Nat Immunol . 4(11):1144-50.
  14. Doyle S. et al., 2002. IRF3 mediates a TLR3/TLR4-specific antiviral gene program. Immunity . 17(3):251-63.
  15. Kawai T. & Akira S., 2011. Toll-like receptors and their crosstalk with other innate receptors in infection and immunity Immunity 34(5):637-50.
  16. Rakoff-Nahoum S. & Medzhitov R., 2009. Toll-like receptors and cancer. Nat Revs Cancer 9:57- 63.

商品は「研究用試薬」です。人や動物の医療用・臨床診断用・食品用としては使用しないように、十分ご注意ください。

※  表示価格について

※  CAS Registry Numbers have not been verified by CAS and may be inaccurate.

お問い合わせ

「TLR(Toll様受容体)レポーター細胞株」は、下記のカテゴリーに属しています。

メーカー・代理店一覧

サポート情報

SNSアカウント

オウンドメディア

※当社のWEBサイトはユーザーの利便性を最適にし、それを保証するためにクッキーを使用しています。
 このWEBサイトの利用を継続することで、クッキーの使用に同意することになります。

© COSMO BIO