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技術情報

Cellecta社 ライブラリー 技術情報

記事ID : 6845
研究用

2. 信頼性の高いプール型shRNAライブラリースクリーニングにおけるライブラリーデザインと次世代シークエンシングの重要性


Cellecta社では、これまで市販のプール型200,000 shRNAレンチウイルスライブラリーを使用し、FAS誘導型HeLa細胞をモデルに情報伝達分子のゲノムワイドスクリーニングを行ってきた。ここで得られた結果には多くの偽陽性または偽陰性が含まれ、わずか4%の”陽性”クローンのみ既知のアポトーシス情報伝達経路の修飾因子関連遺伝子であった。有用な情報も得られたが、スクリーニングに問題があったともいえる。スクリーニングを最適化し、かつプール型shRNAライブラリー効率の評価を目的とし、同様のスクリーニングが可能な改良型Cellecta shRNAレンチウイルスライブラリーを構築した。

スクリーニング実験における問題点:真の陽性はほとんど得られず、多くは偽陽性

市販のプール型200,000 shRNAレンチウイルスライブラリーを用いて、HeLa D98/AH2細胞をモデルとしFAS誘導型アポトーシス調節に関与する遺伝子の同定を行った。当ライブラリーにはAffymetrix Human Genome U133+2 GeneChipに搭載された47,000トランスクリプトを標的するshRNAが、各トランスクリプトに対して4〜5種類含まれる。各shRNA配列はGenome U133+2 arrayのプローブ配列と相補しているため、スクリーニング後のshRNA検出に当該アレイを使用することが可能である。
HeLa細胞(1x108 cells)を2セット用意し、200K shRNAウイルス粒子ライブラリーをMOI=0.3で各細胞群にトランスダクションした。細胞は、FAS経路を活性化しアポトーシスを誘導することで知られる抗Fasレセプター抗体で処理した後、7日間培養した。Mock処理群をコントロールとした。コントロール群および処理群より生存細胞を回収してcDNAを作製し、ベクター特異的プライマーおよびshRNAループ配列特異的プライマーを用いた2回のPCRによりsiRNA挿入配列を回収した。これをAffymetrix HG U133+2 arraysにハイブリダイズした(図1参照)。
セレクションにより95%の細胞死が誘導できたことから手法は適切なものであると考える。しかし、コントロール群と処理群を比較した結果、2,500ものshRNAが濃縮の結果として同定された反面、半数以上の同定shRNA配列が2倍のシグナル強度を示した(対角線付近の赤色回繰返し実験の片方のみからしか検出されず、偽陽性率の高さが疑われた。同定された遺伝子は、アポトーシス関連遺伝子候補が20遺伝子と3つの既知アポトーシス関連遺伝子(Bax, Bcl-xl, FasL)であったことから、セレクション手法は適当であったと考える。一方、偽陽性(バックグランド)が高く、得られた実験結果から "真の陽性結果" を導きだすことは困難であった。さらに、CASP8, BID, DR4といったFas誘導性アポトーシス活性化に関与する既知遺伝子が検出されず、偽陽性率の高さも伺えた。


図1 200K shRNAライブラリースクリーニング結果:
FAS処理細胞群またはMock細胞群より抽出したゲノムDNAを用いてshRNA配列を回収し、Affymetrix HG U133+2.にハイブリダイズした。図1にはコントロール群(x軸)または処理群(y軸)より同定されたshRNA配列のハイブリダイゼーションシグナル強度(shRNA存在量に比例すると考えられる)を示した。処理により多くの細胞が死滅したためshRNA配列が回収できず、これらは図表中x軸付近の底辺に表記されている。Mock群および処理群に同程度で存在していたshRNAは対角線上に示されている。図中、対角線より上部に現われるshRNAは処理群においてより多く検出されたものであり、これら遺伝子を抑制することでFAS活性型アポトーシス耐性が得られたものと考えられる。約2,500種のshRNAでは、処理群において2倍のシグナル強度を示した(対角線付近の赤色で表記した領域)。また、多くのshRNAは処理群/未処理群の何れからも検出されなかった(赤丸で示した領域)。

200K shRNAライブラリーのスクリーニング結果およびライブラリーの問題

まず使用したライブラリー自体の検証を目的として、ライブラリーから回収したshRNA配列をAffymetrix HG U133+2 arrayにハイブリダイズしたところ、わずか50%のshRNA配列のみ検出できた。これは、特定shRNA配列のハイブリダイゼーション効率の低さ、またはshRNA自体がライブラリーに含まれていないことが憂慮された。この点を検証するため、先のライブラリーを用いた検証で検出できなかった40種のshRNAに対して、これらに対する特異的プライマーを用いたshRNA配列増幅を試みた。残念ながら36のshRNAはPCRにより回収できず、ライブラリー自体に含まれていない可能性が示唆された。つまり、ライブラリーは200K shRNAを考慮して構築されたものの、そのうち40%程度のものはライブラリーに含まれていないことが疑われた。一方で、ライブラリーに存在しているであろうshRNA配列においても、各shRNAの存在比にバラツキがあるなどの問題が憂慮された。
本検討で行ったハイブリダイゼーション結果を検討する中でさらに2つの問題点が浮上してきた。1) いくつかの配列では他の配列との交差性が憂慮され、偽陽性を招く可能性が疑われる、2) ダイナミックレンジが狭く、わずか100倍程度であった。つまり、検出限界を下回る場合ハイブリダイズしていたとしてもshRNA配列は検出できず、一方、shRNA存在量は多くともシグナル強度に反映されず、結果検出できない可能性がある。

 

スクリーニング効率改善を目指して新規ライブラリーを構築

設計したshRNAが構築済みshRNAに含まれているかどうか、ハイブリダイゼーション時の交差性、アレイへハイブリダイズしたところダイナミックレンジが低かった、といった問題を受け、Cellecta社独自の新規ライブラリー構築を試みた。この際、shRNA挿入配列ごとにIllumina GAIIxシークエンシング技術に対応した検出用特異的配列(バーコード)を付与し、次世代シークエンシングで同定できるよう設計した。さらに、ライブラリーの大きさとして、信頼度の高いアノテーションをもつ8,000遺伝子を標的とした38,000種のshRNAプールとした。ライブラリーは小規模ではあるものの、詳細な検討かつ全shRNAを検討するには実用的なスケールであると考える。
次世代シークエンシングを用いてCellecta 38K shRNAライブラリーを分析したところ、各コンストラクト構築およびウイルス粒子へのパッケージングに問題はなく、全shRNA配列がライブラリーに含まれることを確認している。さらに、一部のものにおいては5オーダー以上の差が存在したものの、95%以上のshRNAはライブラリーに含まれる各配列の存在量は最大で10倍程度の違いしかなかった(図2参照)。


図2 Cellleta社38K shRNAライブラリー実験結果:
shRNAライブラリーをトランスダクション後、処理群または非処理群よりゲノムDNAを抽出し、ライブラリーに含まれる各shRNA配列に対応するバーコード配列をIlluminaの次世代シークエンシングにより同定した。x軸はコントロール、y軸には処理群を示し、各プロットは各shRNAの存在量比を示している。先のスクリーニング実験で示した通り、機能しなかったshRNAはx軸付近に現れる。前回の200K shRNAライブラリーを使用した際と異なり、本スクリーニングでは処理群より検出されたshRNA数は200K ライブラリーを使用した場合に比べ少なかった。およそ350 shRNAがセレクションにより検出できた。

結果と考察:品質が向上した新規ライブラリー

200K shRNAライブラリーを使用したスクリーニングでは偽陽性率が高く、セレクションで濃縮されたshRNA群の同定が困難であった。そのため、小さいライブラリーを用いて同様のセレクションを行い、かつ、より定量性の高い検出法である次世代シークエンシングを利用することを考慮した。検討の結果、小スケールライブラリーと次世代シークエンシングの利用が有用であることが示唆された。
Cellecta 38K shRNAライブラリーを用いたスクリーニングの結果、約350種のshRNAが処理群において多く検出された。そのうち、150のshRNA(43%)は既知のアポトーシスの修飾因子でありNF-κBとp53経路に関するシグナル伝達経路に関与する遺伝子であった。本結果より、 ノックダウン実験手法を熟考し良質のshRNAプール型ライブラリーを用いてスクリーニングを行うことで、特定の生物学的応答に関与する遺伝子群の同定が可能になると考える。200K shRNAライブラリーとCellecta 38Kライブラリーとの大きな違いは、予定したshRNAがどの程度ライブラリーに含まれるか、ライブラリーの複雑度(標的遺伝子数/shRNAコンストラクト数など)であり、この点が大きな問題となると考える。

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