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シグナル伝達介在物質 CO、免疫・神経調節因子

SIGNALING MEDIATORS:
CO, an Immuno- and Neuromodulator

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2003, Issue 202, pp. tw375, 30 September 2003.
[DOI: 10.1126/stke.2003.202.tw375]

要約 : 2組の研究グループが、一酸化炭素(CO)が介するシグナル伝達を報告しているが、この気体は、シグナル伝達よりヘモグロビン中の酸素を置換して死をもたらす能力の方が、遥かによく知られている。Morseらは、マウス敗血症モデルにおいて、ストレスにより活性化されるヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)によって産生されたCOがサイトカインの産生を阻害し、保護作用を及ぼすという可能性を提示している。マウスをCOに曝露した後、リポ多糖類(LPS)を注射すると罹患率が低下し、さらに循環サイトカイン(インターロイキン-6(IL-6)およびIL-1β)の濃度も低下した。COに曝露して培養したマクロファージを解析すると、サイトカイン産生の低下は、転写の減少に起因することが示唆された。レポーター遺伝子の発現解析および電気泳動移動度シフト解析により、COはAP-1転写因子複合体のうち、特にc-FOSを含有する複合体の活性を阻害することが示された。さらに、JNK-/-マウスでは、LPSを注射して誘発した死がCOにより阻止されず、非致死性量のLPSによって誘発した炎症性サイトカイン濃度も、COの投与により減少しなかったことから、COはJun-N末端キナーゼシグナル伝達を阻害すると考えられた。Boehningらは、ニューロンにおいて、COの産生が活性に依存したHO-2のリン酸化によって亢進することを示している。著者らは、in vitroリン酸化解析法、リン酸化ペプチドマッピング法、部位特異的突然変異誘発法を用いて、HO-2の単一のセリンが、カゼインキナーゼ2(CK2)によってリン酸化されることを割り出した。海馬培養および培養嗅覚ニューロンにおいて、HO-2活性とリン酸化はそれぞれ、ホルボールエステル、匂い刺激によって刺激された。薬理学的解析によって、HO-2をCK刺激する上流経路は、2種類のニューロン培養で異なることが示唆された。COが介する神経伝達の解析が行われた最後の系は、内肛門括約筋(IAS)解剖標本であるが、この標本では、弛緩は一酸化窒素、COの両方が関与する非アドレナリン性非コリン性伝達を介することが知られている。CK2阻害薬を投与すると、電場刺激を受けたIASの弛緩は低下し、また、試験薬の効力はCK2阻害薬としての効果と相関していた。以上より、ニューロン活性に依存したCK2の亢進は、ニューロンにおいてCO合成の活性化をもたらす一般的な機構であると考えられる。

D. Morse, S. E. Pischke, Z. Zhou, R. J. Davis, R. A. Flavell, T. Loop, S. L. Otterbein, L. E. Otterbein, A. M. K. Choi, Suppression of inflammatory cytokine production by carbon monoxide involves the JNK pathway and AP-1. J. Biol. Chem. 278, 36993-36998 (2003).

D. Boehning, C. Moon, S. Sharma, K. J. Hunt, L. D. Hester, G. V. Ronnett, D. Shugar, S. H. Snyder, Carbon monoxide neurotransmission activated by CK2 phosphorylation of heme oxygenase-2. Neuron 40, 129-137 (2003).

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