免疫 腸管へと向かう

IMMUNOLOGY: Going for the Gut

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2004, Issue 256, pp. tw380, 26 October 2004.
[DOI: 10.1126/stke.2562004tw380]

要約 : ナイーブ循環T細胞は、体全体の末梢リンパ組織に移行し、抗原に出会って活性化される。活性化後に産生されるエフェクターT細胞およびメモリーT細胞は、それらが活性化されたリンパ組織とつながる組織に向かって、選択的に遊走する。たとえば、腸間膜リンパ節(MLN)やパイエル板(PP、小腸にあるリンパ組織)において活性化されたT細胞または、これらの部位由来の樹状細胞によって活性化されたT細胞は、α4β7インテグリンやCCR9などの「腸管ホーミング受容体」を発現し、腸管に向かって遊走する傾向がある(Mora and von Andrian参照)。Iwataらは、ビタミンAが消化器感染症による乳児死亡を減少させることに注目し、マウスT細胞をビタミンAの代謝産物であるレチノイン酸(RA)に活性化時に曝露すると、α4β7インテグリンおよびCCR9の発現が促進され、皮膚へのホーミングに関与する受容体の発現が抑制されることを示した。また、T細胞をin vitroにおいてRA存在下で活性化した後マウスに移植すると、RA非存在下で活性化したT細胞に比べて、小腸に選択的にホーミングすることも示された。さらに、免疫組織化学解析により、ビタミンA欠乏マウスの小腸粘膜固有層では、T細胞数が著しく減少していることも明らかになった。in vitroにおいて、MLNまたはPP由来の樹状細胞は、RA生合成に関与する酵素を発現し、レチノールからRAを合成していた。薬理学的解析により、これらの樹状細胞によるT細胞でのα4β7インテグリン発現の活性化能は、RA生合成に依存し、レチノイン酸受容体を介することが明らかになった。以上より、RAは樹状細胞がT細胞を腸管に向かって遊走させる際のシグナルとなっているようである。

M. Iwata, A. Hirakiyama, Y. Eshima, H. Kagechika, C. Kato, S.-Y. Song, Retinoic acid imprints gut-homing specificity on T cells. Immunity 21, 527-538 (2004).[Online Journal]
J. R. Mora, U. H. von Andrian, Retinoic acid: An educational "vitamin elixir" for gut-seeking T cells. Immunity 21, 458-460 (2004).[Online Journal]

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