• ホーム
  • 免疫学 死亡してもなお致命的である

免疫学
死亡してもなお致命的である

Immunology Dead But Still Deadly

Editor's Choice

Sci. STKE, 23 January 2007 Vol. 2007, Issue 370, p. tw27
[DOI: 10.1126/stke.3702007tw27]

Elizabeth M. Adler

Science's STKE, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 侵入病原体に対する初期応答において重要な役割を担う好中球は、いくつかのメカニズムにより微生物を死滅させる。微生物はファゴソームの中に取り囲まれることがよく知られているが、そこでは微生物は高濃度の活性酸素種(ROS)と顆粒から放出される抗菌ペプチドに曝露される。また、活性化された好中球は細胞外トラップにおいても微生物を捕獲して死滅させる。好中球細胞外トラップ(NET、クロマチンと顆粒のタンパク質で構成される)を最初に報告したFuchらは、生細胞イメージングを用いて、個々の好中球の形態および生存能とNETの出現とを同時に観察した。ホルボールエステルであるホルボール12-ミリスチン酸13-酢酸塩(PMA)を用いて活性化すると、好中球は一連の形態変化を引き起こし、最終的に細胞は破裂した(色素カルセインブルーの喪失とホスファチジルセリンの露出が同時に起こることにより示される)。NETは細胞死と同時に現れただけであった。PMAあるいは黄色ブドウ球菌(Staphyloccus aureus)による刺激後のさまざまな時点で固定された好中球を形態学的に解析することにより、核膜と顆粒膜の溶解によってクロマチンが顆粒の中身と混ざるという、NET形成を引き起こす細胞死のプロセスは、アポトーシスや壊死とは異なることが示された。また、NETを引き起こすよう活性化された細胞は、TUNEL(ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ仲介デオキシウリジン三リン酸ニックエンドラベリング)により検出されるDNA断片化を受けなかった。NET形成はカタラーゼ阻害により亢進し、慢性肉芽腫疾患(NADPH酸化酵素の変異と関連する)の患者の好中球においては起こらず、NADPHの薬理学的阻害により阻止された。いずれの場合にも、NET産生は過酸化水素により回復した。以上より、NET産生には、ROS生成を必要とし、死滅した好中球でさえもが抗菌活性の維持することを可能にする積極的細胞死の別個の形式が関与すると著者らは結論づけている。

T. A. Fuchs, U. Abed, C. Goosmann, R. Hurwitz, I. Schulze, V. Wahn, Y. Weinrauch, V. Brinkmann, A. Zychlinsky, Novel cell death program leads to neutrophil extracellular traps. J. Cell. Biol. 176, 231-241 (2007). [Abstract] [Full Text]

E. M. Adler, Dead But Still Deadly. Sci. STKE 2007, tw27 (2007).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

バックナンバー一覧へ