• ホーム
  • STATシグナル伝達 リン酸化なしでも問題なし

STATシグナル伝達
リン酸化なしでも問題なし

STAT Signaling
No Phosphate, No Problem

Editor's Choice

Sci. Signal., 23 June 2009
Vol. 2, Issue 76, p. ec204
[DOI: 10.1126/scisignal.276ec204]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : I型膜貫通糖タンパクCD44は細胞の増殖や生存のような過程を調節する。また、CD44はがん幹細胞マーカーでもあり、CD44およびそのリガンドであるオステオポンチンはいずれも胃がんに関連がある。以前の研究によって、CD44の断片が核において転写装置と結合できることが示されたが、CD44がどのようにして核に到達して、そこでどのような役割を果たすのかは不明である。Leeらは、免疫組織化学的解析およびウェスタンブロット解析によって、原発性胃がんおよびオステオポンチン処理胃がん細胞の核内にCD44分子全体が検出されたが、正常胃細胞の核にはCD44は検出されなかった。細胞内移行したCD44は初期エンドソームを通過したが、C末端を欠損するCD44変異体は細胞内に取り込まれなかった。CD44欠損細胞におけるCD44の異所性発現はその細胞の増殖を促し、それに伴ってサイクリンD1のmRNAとタンパク質の存在量が増大した。クロマチン免疫沈降アッセイの結果、CD44はcyclin D1プロモーターと会合し、さらに免疫蛍光および免疫沈降(IP)アッセイの結果、核内CD44はSTAT3(シグナル伝達性転写因子3)およびp300アセチルトランスフェラーゼと会合することが示された。活性化CD44はサイトゾルでSTAT3と結合し、その後に核へ移行した。CD44抗体によってCD44を活性化すると、STAT3のアセチル化が起こったが、リン酸化は起こらなかった。また、アセチル化STATの存在量はp300の存在量と相関していた。他のSTAT3応答性遺伝子の発現もCD44の活性化に応じて増大した。これらのデータを統合すると、CD44の活性化はSTAT3のアセチル化および活性化を誘発し、その結果、増殖関連遺伝子がリン酸化非依存的に発現することが示唆される。

J.-L. Lee, M.-J. Wang, J.-Y. Chen, Acetylation and activation of STAT3 mediated by nuclear translocation of CD44. J. Cell Biol. 185, 949-957 (2009). [Abstract] [Full Text]

J. F. Foley, No Phosphate, No Problem. Sci. Signal. 2, ec204 (2009).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

バックナンバー一覧へ