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シグナルを伝達する:G蛋白質が新しい個性を獲得

Transducing the Signals: A G Protein Takes a New Identity

Perspectives

Sci. STKE, Vol. 2006, Issue 347, pp. pe31, 8 August 2006
[DOI: 10.1126/stke.3472006pe31]

Danny N. Dhanasekaran*

Fels Institute for Cancer Research and Molecular Biology, Temple University School of Medicine, Philadelphia, PA 19140, USA.
*Contact information. E-mail, danny001@temple.edu

要約 : 広く知られた定説では、ヘテロ三量体Gタンパク質は、Gタンパク質共役受容体(G protein-coupled receptors:GPCRs)としても知られる7回膜貫通モチーフ含有細胞表面受容体からのシグナルを伝達することに専念している。新しい知見から、Gタンパク質G13のαサブユニットであるGα13は、GPCRとのこの伝統的な独占シグナル伝達分子群から離脱し、血小板由来増殖因子受容体(platelet-derived growth factor receptor:PDGFR)、上皮増殖因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)、血管内皮増殖因子受容体(vascular endothelial growth factor receptor:VEGFR)といった受容体チロシンキナーゼ(receptor tyrosine kinases:RTKs)からのシグナルを伝達することが示唆される。Gα13は、リゾホスファチジン酸(lysophosphatidic acid:LPA)またはトロンビンによって活性化されたGPCRsに応答した細胞遊走に関与する。新しい報告から、Gα13は、PDGF、EGF、またはVEGFなどの増殖因子が誘発する細胞遊走にも必要とされることが示唆される。そのようなRTKからGα13へのシグナル伝達にはGPCRとの結合は必要ではない。GPCRsおよびRTKsの両方のシグナル伝達物質としてのGα13の新しい特性は、他のGαサブユニットに関する類似した発見の前触れかもしれない。GPCRシグナル伝達およびRTKシグナル伝達における、Gタンパク質のこのような役割の広がりは、細胞シグナル伝達全般に対してだけではなく、より具体的には、GPCRs、RTKs、およびGタンパク質によるシグナル伝達の調節不全が、腫瘍形成、腫瘍進行および/または転移などの場合に病理生理学的変化を引き起こすことに対する我々の理解にも大きな影響を与えそうである。

D. N. Dhanasekaran, Transducing the Signals: A G Protein Takes a New Identity. Sci. STKE 2006, pe31 (2006).

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