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分子生物学
タンパク質のインタラクトームはどの程度完全であり得るか?

How Perfect Can Protein Interactomes Be?

Perspectives

Sci. Signal., 3 March 2009
Vol. 2, Issue 60, p. pe11
[DOI: 10.1126/scisignal.260pe11]

Emmanuel D. Levy*, Christian R. Landry*, and Stephen W. Michnick

Université de Montréal, C.P. 6128, Succ. Centre-Ville, Montreal, Quebec H3C 3J7, Canada.
* These authors contributed equally to this work.
† Corresponding author. E-mail, stephen.michnick@umontreal.ca

要約 : いかなる工学的デバイスも、非機能的な構成要素を絶対に含むべきでない。エネルギーと資金の無駄になるからである。これとは対照的に、進化論は、生物系は最適化されている必要がなく、非機能的な要素を大量に蓄積してもよいことを物語っている。変異的かつ個体群統計学的な過程の寄与によって、真核生物ゲノムおよび転写制御ネットワークには「ジャンク」DNAおよび偽のDNA結合部位が散在している。ここで我々は、このような概念がタンパク質のインタラクトームにも適用されるものかどうか、すなわち、このようなタンパク質のインタラクトームは、選別されておらず、非機能的なタンパク質相互作用(PPI)が一部に含まれているものとみなすべきかどうかという疑問を抱き、そのような相互作用に該当する部分を「ノイジー」相互作用の画分と名付けた。本稿では、任意の生物に存在すると予想されるノイジー相互作用の画分と3つパラメーターの間に成り立つ単純な関係を提示する。3つのパラメーターとは、(i)相互作用の形成および破壊に要する変異の数、(ii)プロテオームの規模、および(iii)ノイジー相互作用の適応度コストである。この3つのパラメーターのすべてが、ノイジーなPPIが存在する見込みであることを示唆している。ノイジーなPPIの存在は、大規模な研究によって決定されたPPIにおいて相互作用関係にあるタンパク質間に機能上の関係性が認められないことが多い理由、PPIが生物間でほとんど保存されていない理由、およびPPI空間が莫大であるようにみえる理由の説明を容易にするだろう。最後に、本稿ではPPIネットワークに含まれる進化上のノイズ画分を見積もるための実験的方策を提示する。

E. D. Levy, C. R. Landry, S. W. Michnick, How Perfect Can Protein Interactomes Be? Sci. Signal. 2, pe11 (2009).

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