イノシトール1,4,5-トリスリン酸の非対称シグナルによる神経細胞成長円錐ナビゲーションの制御

Sci. Signal., 14 July 2009
Vol. 2, Issue 79, p. ra34
[DOI: 10.1126/scisignal.2000196]

Hiroki Akiyama¹, Toru Matsu-ura², Katsuhiko Mikoshiba², and Hiroyuki Kamiguchi^1*

¹ Laboratory for Neuronal Growth Mechanisms, Brain Science Institute, The Institute of Physical and Chemical Research (RIKEN), 2-1 Hirosawa, Wako, Saitama 351-0198, Japan.
² Laboratory for Developmental Neurobiology, Brain Science Institute, The Institute of Physical and Chemical Research (RIKEN), Wako, Saitama 351-0198, Japan.
* To whom correspondence should be addressed. E-mail: kamiguchi@brain.riken.jp

要約 : イノシトール1,4,5-トリスリン酸（IP₃）は、一般にサイトゾルのカルシウムイオン（Ca²⁺）濃度を上昇させる広域的メッセンジャーであると考えられている。しかし、IP₃の時空間的動態や局所で産生されるIP₃の細胞極性における機能的重要性についてはほとんどわかっていない。本稿では、軸索ガイダンスにおける空間的に限局したIP₃シグナルの重要な役割について述べる。我々は、細胞外にある神経成長因子（NGF）の濃度勾配に遭遇すると、IP₃シグナルおよびそれに続くCa²⁺シグナルが成長円錐内部で非対称に生成され、NGFに対する成長円錐の回りこみ反応を媒介することを発見した。さらに、成長円錐の片側での光分解誘発IP₃の産生は、IP₃濃度が高い側へ向かって成長円錐の回りこみを誘発させるのに十分であった。このように、局所で産生されるIP₃は、成長円錐を特定の方向へと移動させるように極性化させる空間的情報をコードしている。