糖鎖(グリカン)を2ABまたは2AA色素で蛍光標識するためのキットです。
従来の還元剤(シアノ水素化ホウ素ナトリウム)よりも毒性の低い還元剤「ピコリンボラン(picoline borane)」を採用しているため、より安全性の高い操作が可能です。
背景
糖鎖の蛍光標識
治療用の糖タンパク質の糖解析を行う場合、糖鎖を蛍光標識して解析する手法が確立されています。適切な標識によってその後の分離や定量*を効果的にできます(* HPLC/UHPLC、キャピラリー電気泳動(CE)、質量分析などで解析されます。)。
2-AB(2-aminobenzamide)や2-AA(2-aminobenzoic acid)蛍光標識は、オリゴ糖解析で最も広く使用される色素です。
標識 | 構造 | 蛍光 | 分子量 |
---|---|---|---|
2-AA | λex (glycan-dye conjugate) = 250 nm λem = 425 nm. |
137 | |
2-AB | λex = 250 nm, λem = 428 nm. | 136.15 |
糖鎖標識反応の概要
標識反応は、以下の2段階のプロセスで行われます。(図1参照)
- シッフ塩基(Schiff's base)の形成
この反応には、開環状と閉環状の平衡状態にある遊離の還元末端を有するグリカンが必要です。色素の第一級アミノ基は、非環状の還元末端残基におけるカルボニル炭素に求核攻撃を行い、部分的に安定したシッフ塩基を形成します。 - シッフ塩基の還元
シッフ塩基は化学的に還元され、安定したグリカン標識-複合体となります。
図1. 2-AA(2-aminobenzamide acid)とグリカンの標識
還元剤の安全性に関する問題
従来の2-AA/2-AB標識キットでは、還元剤としてシアノ水素化ホウ素ナトリウム(sodium cyanoborohydride)を使用します。シアノ水素化ホウ素ナトリウムは毒性があるため、ドラフトチャンバー内で取り扱う必要がありました。
Ludger社では、安全衛生規則に準拠して、非常に安全性の高い還元剤「ピコリンボラン(picoline borane)」を使用するVP 糖鎖キットの販売を開始しました。VPキットは、従来品と同等の糖鎖標識性能を示し、安全で、より便利(少ない試薬の混合回数)、より安定な試薬を含みます。また、2-ABまたは2-AA標識後の糖鎖精製に有用なT1 カートリッジを提供しています。T1 カートリッジは、従来のS-カートリッジを代替し、操作性が良くかつ迅速、実験室のロボットでの自動化にも対応します。
特長
- 性能検証済み
- 本製品は、ICH Q2(R1)ガイドラインに従い検証されています。
- 優れた精度を実現します(図2)。
(with CVs of <5% for peaks with relative areas over 5% and CVs of <8% for peak with relative areas less than 5%) - 標準的なLudgerTag™2AA/2AB標識キット(シアノ水素化ホウ素ナトリウムを含有)と同等の標識効率を提供します(図3)。
- 安全性を大幅に向上
:2-PB(picoline borane)は、シアノ水素化ホウ素ナトリウムと比較して低い毒性が特長です。 - 簡単操作
:各キットには、2種類のプレミックス試薬が含まれます。一方は、酢酸とDMSO溶液を含み、もう一方は、2PBと組み合わせて使用する2-AB/2-AA標識試薬です。標識操作は、とても簡単です。
性能の検証データ
図2. ピコリンボラン(PB)還元剤で2AB標識したヒトIgG 糖鎖を、HILIC UHPLCカラム上で解析し、48反復の解析データを重ね合わせた。
図3. シアノ水素化ホウ素ナトリウム還元剤またはとピコリンボラン(PB)還元剤と共に2AB標識したヒトIgG 糖鎖を、HILIC UHPLCカラム上で解析し、各5反復の解析データを重ね合わせた。
構成内容
各キットには標識反応試薬が2セット含まれます。1セットあたり、以下の試薬1バイアルずつで構成されます。
- 2-AA(2-aminobenzoic acid)色素 または
2-AB(2-aminobenzamide)色素 7.5 mg - 2PB(2-picoline borane)還元剤 16.5 mg
- 30% 酢酸 DMSO溶液 500 µl
その他
- [サンプル量]
:1サンプルあたり、25 pmol〜25 nmol グリカン - [サンプル数]
:試薬1セットあたり12 サンプル分(全24サンプル) - [操作時間]
:2時間で完了- 反応サンプルのチューブへの添加・乾燥:30分間
- 水の添加:15分間
- 標識試薬の添加:15分間
- 反応試薬とインキュベート:1時間
手順
標識反応プロトコール
- 糖鎖を精製
必要に応じて糖鎖を精製します(品番:LC-EB10-A6 詳細)。 - 反応バイアルにサンプルを移す
- サンプルを乾燥後、水10μLで再懸濁
- 標識試薬を調整
30% 酢酸 DMSO溶液 150μLを、色素(2-AA/2-AB)の入ったバイアルに加えます。混合後の溶液150μLを、還元剤の入ったバイアルに移し、ピペッティングで還元剤を溶解します。 - 標識試薬をサンプルに添加
10μLの標識試薬をサンプルに添加し、混合します。 - インキュベート
ヒートブロックなどで、サンプルを65℃、1時間インキュベートします。 - 遠心、冷却
短い遠心後、サンプルを室温に戻します。
糖鎖クリーンアップ
特定のアプリケーションでは、標識後の精製も必要です。以下のいずれかをご利用ください。
- LudgerClean™ S カートリッジ(品番:LC-S-A6)
- 96 well compatible LudgerClean™ T1 カートリッジ(品番:LC-T1-A6)
蛍光標識糖鎖の解析
HPLC 分析
LudgerTag™ 2-AAまたは2-ABで標識した糖鎖混合物は、LudgerSep™ HPLCを含む種々の方法により分離、分析することができます。
酵素的分析
N結合型またはO結合型のLudgerTag™ 標識グリカンの構造解析に、高純度・シーケンシンググレードの酵素(エキソグリコシダーゼなど)が数多く市販されています。グリコシダーゼを選択するに際して、お客様の特定のアプリケーションに適合する製品であるかをよく注意してください。例えば、いくつかの酵素と酵素バッファーは、特定の種類の分析方法で干渉する成分を含む場合があります。
質量分析、電気泳動
LudgerTag™ で標識した糖鎖は、質量分析、電気泳動、および種々の分光法で分析することができます。
- Radoslaw et al., Tsetse salivary glycoproteins are modified with paucimannosidic N-glycans, are recognised by C-type lectins and bind to trypanosomes. PLoS Negl Trop Dis . 2021 Feb 2;15(2):e0009071. doi: 10.1371/journal.pntd.0009071.(品番:LT-KAB-VP24, LT-KAB-VP96)
LudgerTag™ 2AB/2AA 糖鎖標識キット
品名 | メーカー | 品番 | 包装 | 希望販売価格 |
---|---|---|---|---|
2-AA Glycan Labeling Kit, 2PB reductant | LUD | LT-KAA-VP24 | 2 RXN [12サンプル/RXN] |
¥121,000 |
2-AB Glycan Labeling Kit, 2PB reductant | LUD | LT-KAB-VP24 | 2 RXN [12サンプル/RXN] |
¥121,000 |
LudgerTag™ 2AB糖鎖標識キット
ハイスループットで遊離糖鎖を2-AB標識するキットです。96サンプル分を標識する試薬が含まれています。
品名 | メーカー | 品番 | 包装 | 希望販売価格 |
---|---|---|---|---|
2-AB Glycan Labeling Kit, 2PB reductant | LUD | LT-KAB-VP96 | 96 TEST |
¥385,000 |
【関連情報】
商品は「研究用試薬」です。人や動物の医療用・臨床診断用・食品用としては使用しないように、十分ご注意ください。
※ 表示価格について