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〜哺乳類細胞を用いて〜AAT bioquest社 蛍光カルシウム指示薬を用いたATP誘導カルシウム流入の定量方法


背景

アデノシン三リン酸(ATP)は、エネルギー源であり、細胞内の多くの酵素のコファクターでもあります。また、細胞プロセスを媒介する重要な細胞外のシグナル分子でもあります。ATP感受性受容体には、リガンド依存性イオンチャネルファミリー (P2X)と代謝型Gタンパク共役型受容体 (P2Y)ファミリーの2つのタイプがあります。ATPによるP2X受容体刺激は非選択的陽イオン電流を活性化し、細胞内カルシウム濃度を直接的に増加させます。またATPは、細胞表面 P2Yヌクレオチド受容体に結合し、イノシトール三リン酸(IP3)を産生し、細胞内カルシウムストアからカルシウムを放出させます(図1 参照)。刺激があたえられると、細胞内カルシウム濃度は静止濃度100 nMからおよそ1,000 nMまで上昇します。カルシウムはシグナル伝達機能を完了すると、様々なポンプやエクスチェンジャーによって細胞質から除去され、ER、ミトコンドリアなどの細胞内カルシウムストアへと戻されます。

(左)リガンド依存性イオンチャネルファミリー、(右)代謝型Gタンパク共役型受容体ファミリー
図1.(左)リガンド依存性イオンチャネルファミリー(P2X)、(右)代謝型Gタンパク共役型受容体(P2Y)ファミリー

カルシウム定量ツールキット

  • 哺乳類細胞
    P2受容体はほとんどの細胞に発現しているので、P2受容体を発現している哺乳類細胞株や初代培養細胞が使用できます。しかし、すべての細胞がATPに等しく応答するわけではないので、最滴なATP濃度を決めるためにATP容量反応試験を行うことを推奨します。細胞は適切な培養培地で維持し、実験前に良好な状態にしておきます。
  • 細胞透過性蛍光カルシウム指示薬
    カルシウム指示薬はスペクトル特性、測定モード、解離定数(Kd値)、細胞透過性で分類できます。アプリケーションに適したカルシウム指示薬の選択方法については、こちら PDF をご覧ください。
    例えば、最も一般的に使用されている指示薬は、細胞内濃度に基づいた適切なKd値を有する488 nm励起の単一波長です。細胞透過性アセトキシメチル(AM)エステル基を付与した指示薬は、細胞内に浸透・拡散し、細胞内の酵素によってAMエステル基が切断され細胞内に留まるため、細胞内滞留の良い指示薬として好まれます。
  • バッファー
    このアプリケーションにはpH 7.4の生理学的バッファーが適しています。例えば、Hanks’ Balanced Salt Solution Buffer with 20 mM Hepes (HHBS 外部リンク ) が使用されます。カルシウム指示薬の水溶性を高めるために非イオン性界面活性剤であるPluronic® F-127 外部リンク を含む生理的バッファーが使用されることがあります。また、クエンチャー(消光剤)を含むバッファーであれば、色素をローディングした後の洗浄ステップも省くことが可能です。
  • 有機アニオントランスポーター阻害剤(オプション)
    CHO-K1などの細胞タイプでは、カルシウム指示薬に付加されているAM基がエステラーゼによって消化されて5価の陰イオンを帯びると、細胞膜の陰イオントランスポーターによって細胞外に押し出されてしまいます。色素の漏出は、陰イオントランスポーターのプロベネシド(1〜2 mM)を添加することで防ぐことができますが、プロベネシドは細胞毒性もあります。
  • 測定機器
    ATP刺激によるカルシウムシグナルは一過性のため、プログラム操作でATP溶液添加が可能で、1秒ごとに蛍光値変動を検出できる機器が理想的です。たとえば、Molecular Devices社のFLIPR システムやFlexStationシステムは、96、384、1536ウェルマイクロプレートでカルシウム反応をモニターするのに理想的な機器です。蛍光値変動を検出可能なフローサイトメトリーと蛍光顕微鏡もこのアプリケーションに使用できます。

Calbryte™-520AMを用いた、ATP刺激によるCHO-K1細胞におけるカルシウムシグナル変化の検出例

CHO-K1はチャイニーズハムスターの卵巣細胞で、ATCCから入手できます(Cat#CCL-61)。CHO-K1細胞は、細胞内カルシウムの研究によく使われています。また、GPCR(Gタンパク共役型受容体)のトランスジェニック細胞株の作成にも最もよく使用されています。CHO-K1は約1 µM のEC50でATP刺激に反応します。

Calbryte™-520 AMは励起波長492 nm、蛍光波長514 nmの便利なカルシウム指示薬です。Calbryte™-520の Kd値は1.2 µMで、細胞内カルシウム変化の測定に適しています。既存のカルシウム指示薬(Fluo-3 AM, Fluo-4 AM, Rhod-2 AMなど)に比べて、Calbryte™-520はカルシウムに結合すると非常に明るく、圧倒的に高いシグナル-ノイズ比を持ちます。Calbryte™-520 AMは細胞内への滞留性とローディング効率も改善されています。Calbryte™-520AMはCHO-K1細胞内に滞留させるためのプロベネシドが不要で、細胞毒性がなく簡便に細胞にローディングすることができます。別の励起/蛍光波長のCalbryteシリーズもあり、同様に使用できますので、こちらをご覧ください。様々なカルシウム指示薬の波長はSpectrum Viewer 外部リンク で比較できます。

  1. CHO-K1細胞は実験の前日に、96ウェルの細胞培養用プレート(黒色ウェル/透明底)に40,000 から 80,000 細胞/well/100 µLで増殖培地で播きます。
  2. Calbryte™-520 AMは使用前に無水DMSOに溶解し、-20℃の暗所で保存します。Calbryte™-520 AMはHHBS で10 µg/mLに希釈し、Pluronic® F-127も0.04%になるように添加します(10 µg/mL in HHBS with 0.04% Pluronic® F-127)
  3. 培養培地を除去せずに、ステップ2で作成した希釈済みのCalbryte™-520 AM 100 µLを細胞に添加し、37℃で30分から1時間インキュベートします。200 µLの溶液中でCalbryte™-520 AMの濃度が5 µg/mL 、Pluronic® F-127 の濃度が 0.02% となります。
  4. 細胞をインキュベートしている間にATP溶液を用意します。ATP容量依存性カルシウム反応を測定する場合、ATPはHHBSで最終濃度10, 3, 1, 0.3, 0.1, 0.03, 0.01, 0 µMに希釈します。Calbryte™-520 AMのインキュベーション後にATP溶液を50 µL添加する場合、ATP溶液は最終濃度の5xを用意します。Serial Dilution Calculator 外部リンク を使用して計算すれば簡単です。
  5. それぞれのウェルから溶液を除去し、200 µLのHHBSを添加します(ステップ2でプロベネシドを使用している場合は、プロベネシドも添加してください)。ステップ2からクエンチャーを使用している場合はこの洗浄ステップを省くことができます。
  6. 測定を行います。
    • ① FlexStationでの測定
      各ウェルにATP溶液50 µLを添加します。ATPの添加前後でEx/Em=490/525で1.5秒おきに120秒間測定すると、以下のようなグラフになります。
      FlexStationでの測定
      図2. FlexStationでの測定
    • ② FITCチャネルの蛍光顕微鏡での測定
      ATP溶液50 µLを添加する前後で以下のような画像が得られます。
      FITCチャネルの蛍光顕微鏡での測定
      図3. FITCチャネルの蛍光顕微鏡での測定

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