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記事ID : 37057

AAT bioquest (ABD)社 カルシウムインジケーター (Cal-520®AM / Calbryte™ 520 AM) の開発


カルシウムインジケーターの歴史

プロベネシドを用いたCHO-M1細胞における内因性P2Y受容体のATPに対する応答

図1 プロベネシドを用いたCHO-M1細胞における内因性P2Y受容体のATPに対する応答。
CHO-M1細胞を、Costar 96ウェル黒壁/透明底プレートに100µL/ウェルあたり40,000細胞で播種し一晩置いた。4µM Fluo-4 AM(左、品番#20552)及び Cal 520™ AM(右、品番# 21130)in HHBS を100µLウェルに添加し、37℃で2時間インキュベートした。培地を100µLのHHBSに置き換え、300uMのATPを50µL添加した。細胞は、FITCチャネルを用いて蛍光顕微鏡(オリンパスIX71)でイメージングした。

毎年、カルシウムとその生物学的システムにおける役割に焦点を当てた数十万件の査読付き論文が発表されています。その理由は明らかで、カルシウムイオン(Ca2+)は、筋肉の収縮から神経伝達物質の放出まで、多くの生物学的プロセスにおいて重要な役割を果たしています。このようにカルシウムの役割は多岐に渡り、それに続く研究の必要性から、細胞内カルシウムを定量化して可視化するためのカルシウムインジケーター開発が求められるようになりました。
カルシウムイメージングにおける最初の大きなブレークスルーは、1980年代にカリフォルニア大学バークレー校のチームが、フルオレセインをベースとした最初のカルシウム指標を開発したことでした。彼らの研究は、Fluo-3 AMやFluo-4 AMなど、現在では確立されたカルシウムプローブへの道を切り開きました。これらの疎水性のフルオレセインベースのAMエステルは、生きている細胞の膜を容易に通過し、細胞内に入るとエステル分解酵素によって急速に加水分解され、カルシウムを検出するように設計されています。カルシウムとの結合すると、Fluo-3やFluo-4は、~490 nmの光源で励起されたときに~520 nmの蛍光を発します。

多くの問題点

これらの第一世代のフルオレセインベースの色素は、それ自体で重要な成果を上げましたが、いくつかの欠点を抱えていました。最も顕著なものは、これらのカルシウムプローブは、ノイズとしても知られる高バックグラウンドの蛍光がよく発生しました。一般的に研究者は、バイオアッセイやデータ解析に多くの問題を引き起こすため、バックグラウンドの蛍光を最小限に抑えようとします。誤ったシグナルを発生させることは、重要な結果を不明瞭にしたり、真の陽性が隠されることになり、実験的な反応の解釈を非常に困難にします。
Fluo-3 AMとFluo-4 AMによって蛍光のバックグラウンドが高くなる理由として以下の二つが考えられています。
第一は、アセトキシメチル(AM)エステルの化学的性質に関係しています。溶液中では、Fluo-3 AMやFluo-4 AMのようなAMエステルは加水分解し、アセトキシメチル基が切断される傾向にあります。これは、細胞に色素をロードする時にはAM基を含んでいないことになり、プローブのかなりの部分が不透過性になることを意味します。この結果、(細胞へ浸透する色素の減少による)低い蛍光シグナルだけでなく、より高いバックグラウンドの蛍光(細胞外の不浸透性のFluo-3またはFluo-4が蛍光を発し、ベースライン蛍光の上昇に寄与)が発生します。
第二の主な原因は、有機アニオントランスポーターを介した色素の漏出に起因すると考えられています。Fluo-3やFluo-4は細胞質内での局在性が悪く、実際には細胞内に取り込まれた後、細胞内小器官や細胞外マトリックスへと輸送されることが想定されています。この結果、加水分解されたAMエステルと同様の状況になります。つまり、Fluo-3やFluo-4が細胞外に集まって蛍光を発し、ベースラインの蛍光が上昇します。これは、カルシウムフラックスアッセイとカルシウムイメージングの両方がカルシウムの地理的空間的(geospatialな)定量に依存しているため、特に深刻な問題です。カルシウムプローブ自体の局在性が悪く、移動している場合、これらのバイオアッセイは、解釈が難しくなります。

プロベネシドの使用

CHO-K1細胞における内因性P2Y受容体のATP刺激カルシウム応答

図2 CHO-K1細胞における内因性P2Y受容体のATP刺激カルシウム応答、Fluo-4 AM(品番# 20552)を用いて測定した。
CHO-K1細胞を、96ウェル黒壁/透明底Costarプレートに、100µL/ウェルあたり50,000細胞で一晩播種した。5mM Fluo-4 AMに、2.5mMプロベネシドを添加(青)、あるいは添加なし(赤)を100µL添加し、37℃で1時間インキュベートした。ATP(50µL/well)をFlexStation®(Molecular Devices)で添加し、最終的に指示された濃度になるようにした。

当時の最良の解決策は、プロベネシドという試薬を併用することでした。プロベネシドは、現在、大きく分けて2つの用途があります。1つ目は痛風と高尿酸血症の治療薬、2つ目は、ペニシリンなどの他の薬の効果を長引かせることです。いずれの場合も、想定される作用機序は同じであり、プロベネシドは腎臓を標的とし、そこでは有機アニオントランスポーターの活性を阻害していると考えられています。これにより医薬品などの特定の化合物の保持が大きくなり、その結果効果を長引かせます。
この作用メカニズムは、Fluo-3およびFluo-4と組み合わせてプロベネシドを使用する利点も説明しています。トランスポーターを阻害することにより、プロベネシドはFluo-3およびFluo-4の保持を改善し、その結果バックグラウンド蛍光を低下させます。プロベネシドの使用は、色素の漏出を防ぐという観点では良い解決策でしたが、その性質上、細胞機能の変化、細胞毒性の増加等の未知の影響が多数あることが考えられます。これは追加のコントロール実験(例えばプロベネシド用量反応)が必要になる等、必ずしも便利な試薬とは言えませんでした。

AAT bioquest社による新たなCa2+インジケーターの開発

このような解決策に満足していなかった我々(AAT bioquest社)は、バックグラウンド蛍光の問題を解決するために独自の方法を模索することにしました。
第一のアプローチは、化学的性質を改良してAMエステル結合の安定性を高めることでした。これにより、溶液中での加水分解を最小限に抑え、細胞へのロードを改善することができました。
第二のアプローチは、官能基を使用してプローブの水溶性を向上させることでした。官能基を置換することで、細胞の保持を強化し、局在を改善することができました。膨大な量の理論的モデリングを行った結果、高バックグラウンド蛍光の問題を解決するいくつかの重要な構造を見つけることに成功しています。
また、企業にとっては、設計したコンパウンドをどうやって生産するかだけではなく、設計したコンパウンドをいかに効率よく生産するかが課題でした。収率の優れた反応経路の開発は、生産コストの削減に繋がり、お客様に還元することができるため非常に重要です。Cal-520®は厳格な品質管理システムと効率的な製造プロセスにより、最高品質の製品を最高の価値で提供しています。

化学構造を変更することで、AMエステル結合の安定性を大幅に向上させることができました。AMエステルの形態では、Cal-520®AMはFluo-3 AMおよびFluo-4 AMと比較して、溶液中での自発的な加水分解が非常に少なくなっています。さらに、Cal-520®の化学構造を最適化し、細胞内での局在性を高めています。
ミトコンドリアに局在するRhod-2とは異なり、Cal-520®のは主に細胞質に局在します。さらに、一度局所化されると、プロベネシドを添加しなくても、非常によく保持されます。これはFluo-3やFluo-4とは大きく異なります。つまりCal-520®はプロベネシドの添加を必要とせずに、バックグラウンド蛍光が低く、バックグラウンドに対するシグナルの比率が大幅に改善されていることを意味します。さらに、Cal-520®のはFluo-3とFluo-4のスペクトルを維持しています。
マルチプレックス用には、Cal-520®の AMの高いシグナル対バックグラウンド比を維持しながら、GFPのような緑色蛍光インジケーターと完全に互換性のある長波長励起であるCal-590™ AMとCal-630™ AMも開発されています。

バックグラウンドの比較

図3 Fluo-4 AM(品番# 20552)とCal-520® AM(品番# 21130)のバックグラウンドの比較。
CHO-K1細胞をCostar黒壁/透明底96ウェルプレートに100µL/ウェルあたり50,000細胞で播種し一晩置いた。5 uM Fluo-4 AMまたはCal-520® AMにプロベネシドを添加した溶液100µLを細胞に添加し、37 0℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞をHHBSで1回洗浄し、その後、ATP処理を行わずにバックグラウンドをイメージングした。

ATP刺激性カルシウム応答

図4 Cal-520® AM(赤、品番#21130)またはFluo-4 AM(青、品番#20552)でインキュベートしたCHO-K1細胞の内因性P2Y受容体のATP刺激性カルシウム応答、プロベネシドなし。
CHO-K1細胞をCostar黒壁/透明底96ウェルプレートに50,000細胞/100μL/wellで播種し一晩置いた。HHBSを溶媒とした、5μM Fluo-4 AM、またはCal-520® AMを100µL添加し、37℃で2時間インキュベートした。ATP(50µL/well)をFlexSation®を用いて添加し、最終的に指示された濃度になるようにした。

Cal-520®の普及、そしてCalbryte™の開発

Cal-520® AMは、GPCRやカルシウムチャネルのターゲットを評価するだけでなく、それらのアゴニストやアンタゴニストのスクリーニングにも最適です。さらに、Cal-520® AMは、フローサイトメトリー、蛍光顕微鏡、蛍光分光法、および蛍光マイクロプレートプラットフォームでの使用と完全に互換性があります。 Cal-520®の人気が高まるにつれ、神経生物学から細胞シグナル伝達、心臓病学まで、様々な分野の論文で定期的に引用されるようになってきました。

※さらに、現在ではCal-520®シリーズのAMエステル結合の安定性が向上し、官能基がより最適化されたCalbryte™シリーズが発売されています。ローディング時間は〜45minに短縮され、輝度もさらに向上しています。詳細は以下のリンクをご覧ください。

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