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神経科学 鎮痛の新たな標的

NEUROSCIENCE:
New Targets for Pain Relief

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2003, Issue 196, pp. tw323, 19 August 2003.
[DOI: 10.1126/stke.2003.196.tw323]

要約 : 神経損傷後におこる持続性疼痛は身体を衰弱させるが、疼痛の発生に至るシグナル伝達機構が理解されていないことが、管理法開発の障害となっている。Tsudaらは今回、ある予想外の細胞に発現する意外な受容体を同定し、その細胞でこの受容体が重要な調節的役割を担うらしいことを示すことで、少なくともこの機構におけるいくつかの不明点を明らかにした。著者らはラットモデルを用いて、神経障害性の疼痛を脊髄神経の損傷後に生じさせ、通常は無害である触覚に対する過敏性を測定した(この種の過敏性は異痛と呼ばれる)。著者らは、薬理学的阻害に対する異痛の感受性が、ATPの結合に応じて開く膜イオンチャネルである、P2X4Rというプリン受容体関与を示唆するパターンを示すことを見い出した。阻害剤の効果は異痛に特異的であり、動物における通常の急性疼痛反応に対する感受性には影響しない。P2X4受容体タンパク質の量は、神経損傷に応じて増加したが、免疫蛍光標識により、新たに合成された受容体はニューロンではなくミクログリア細胞において発現することが示された。受容体に対するアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドを潅流させることにより増加したP2X4Rの発現を減少させると、動物の異痛は減少した。さらに、動物の疼痛感受性が増加したことが、ラットに対し、培養した小グリア細胞をそのP2X4Rを介して活性化させ、注射した際に認められた。本研究により、P2X4Rの発現を抑制する、またはミクログリア細胞内でP2X4Rに対する受容体からのシグナルを阻害するという方法で、異痛に特異的な治療法を開発できる見込みがあることを示している。

M. Tsuda, Y. Shigemoto-Mogami, S. Koizumi, A. Mizokoshi, S. Kohsaka, M. W. Salter, K. Inoue, P2X4 receptors induced in spinal microglia gate tactile allodynia after nerve injury. Nature 424, 778-783 (2003).

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