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フィードバックループ 記憶からの成熟

FEEDBACK LOOPS:
Maturing from Memory

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2003, Issue 211, pp. tw462, 2 December 2003.
[DOI: 10.1126/stke.2112003tw462]

要約 : アフリカツメガエル(Xenopus)卵母細胞は、減数分裂期に停止し、プロゲステロンによる刺激に応じて成熟プロセスを完了する。成熟には、p42マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(p42 MAPK)、細胞分裂周期プロテインキナーゼCdc2という2種類のキナーゼの活性化を伴うが、これらの活性化には、自己および互いの活性を刺激するポジティブフィードバックループが関与している。XiongとFerrellは、プロゲステロンは成熟の開始には必要であるものの、卵核胞崩壊(GVBD)および2種類のキナーゼ(p42 MAPKおよびCdc2)の活性は、プロゲステロンが卵母細胞から洗い流された後も持続することを突き止めた。著者らは、Raf-エストロゲン受容体キメラを用いて、p42 MAPKをエストロゲンで(細胞表面プロゲステロン受容体の代わりとして)直接刺激し、プロゲステロンと同様に、卵母細胞がエストロゲンへの初期曝露によって一旦成熟へと決定付けられれば、エストロゲンはGVBDおよびCdc2活性やp42活性を維持する上で不要になることを示した。ポジティブフィードバックの阻害を、タンパク質合成の阻害、またはp42 MAPKの上流にある2種類のキナーゼMos、MEKのいずれかの阻害により行ったところ、エストロゲンへの初期曝露によるp42 MAPK活性およびCdc2活性の刺激は一過性であり、不可逆的ではなかった。以上の結果により、これまでシグナルを一過性から自己維持性に変換すると考えられてきたポジティブフィードバックが、過去の刺激の記憶として作用し、一過性の初期刺激を不可逆的な、系レベルの活性変化へと変換していることが示される。

W. Xiong, J. E. Ferrell Jr., A positive-feedback-based bistable "memory module" that governs a cell fate decision. Nature 426, 460-465 (2003).

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